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〔週刊 本の発見〕『天皇陛下にささぐる言葉』 | ||||||
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パンフレットの精神『天皇陛下にささぐる言葉』(坂口安吾、景文館書店、200円、2019年3月刊)/評者:志真秀弘
敗戦後、発表されるや熱狂的に迎えられ、たちまち安吾を流行作家に押し上げたと言われるのが「堕落論」だが、それは「半年のうちに世相は変った」に始まる疾走感に溢れた、心をわしづかみにするような文章の連続であり、無駄がない。言わんとするところは、節婦は二夫に見えず風な戦前的・武士道的徳目にしばられて生きるのでなく、ひとりの人間としてこの世を生き抜くことこそ真の生だというにほかならない。人は「堕ちる道を堕ちきることによって、自分自身を発見し、救わなければならない」、日本もまたそうだ。 つまり日本もまた「堕ちる」べきというのがこの文章のもうひとつの主題である。昔から日本の政治的支配者たちは、自己の隆盛を約束する手段として天皇制つまり絶対君主の必要を本能的に嗅ぎつけていた、と安吾はいう。「天皇制は天皇によって生み出されたものではない。天皇は時に自ら陰謀を起こしたこともあるけれども、概して何もしておらず、その陰謀は常に成功のためしがなく、島流しとなったり、山奥へ逃げたり、そして結局常に政治的理由によってその存立を認められてきた。・・・その存立の政治的理由はいわば政治家たちの嗅覚によるもので、彼らは日本人の性癖を洞察し、その性癖の中に天皇制を発見していた」。(*写真=1946年 坂口安吾 撮影:林忠彦)
もうひとつ、「もう軍備はいらない」から紹介したい件がある。 「・・・現在どこかに本当に戦争したがっている総理大臣のような人物がいるとすれば、その存在は不気味というような感情を全く通り越している存在だ。同類の人間だとは思われない。理性も感情も手が届かない何かのような気がするだけだ」。 この文章がもし予言のように響くとすれば、それは安吾が「曠野の流浪」としての文学の道を歩きつづけたからに他ならない。人間の真実を明らかにしようとするかれの文学の力である。山椒は小粒でものことわざどおり、この小冊子は、天皇、戦争、そして文学を考えさせずにはおかない。 出版社のホームページを見れば、本冊子の取扱書店の一覧が載っている。また「青空文庫」のサイトにはこの4篇すべて掲載され、坂口安吾の大方の作品も読むことができる。 *「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美、ほかです。 Created by staff01. Last modified on 2019-05-16 11:52:14 Copyright: Default |