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産別最低賃金の回答拒否はおかしい!〜48時間ストライキで港湾労組が会見

    杜 海樹

 港湾運送や関連職種の労働者で組織する全国港湾労働組合連合会(略称・全国港湾、中央執行委員長・糸谷欽一郎、組合員16000名)及び全日本港湾運輸労働組合同盟(略称・港運同盟、会長・新屋義信、組合員1200名)が、4月14日から16日にかけて全国の港で48時間のストライキをおこなった。今、港湾労使の団体交渉の場において、産別最低賃金に回答することが独占禁止法に抵触する恐れがあるという理由から賃金回答が行われないという異例の事態が続いているという。そのため、やむにやまれずストライキを実施せざるを得なかったとし、労働組合側が4月16日、国土交通省内にて記者会見を開催し広く窮状を訴えた。


*TVニュースでも大きく報道された

 港湾においては、他の労働組合組織同様に毎年春闘がおこなわれている。全国の港湾労働者を組織している全国港湾は、1972年以来、港湾の業界団体である日本港運協会と団体交渉をおこない労働協約を積み重ねてきている。そして、協約において産別最低賃金等を定め2015年まで改定を続けて来たという経緯を持っているという。

 ところが、2016年以降、業界団体の対応は徐々に硬化し、産別最低賃金の回答は独占禁止法に觝触の恐れがあるため回答できないとうい立場に変わったというのだ。これに対し組合側より産別最低賃金の回答が競争法である独占禁止法に抵触する話など聞いたことがないと関係各所に確認を求めたが、どこからも法に觝触するなどという話は確認できなかったという。それでも業界団体が産別最低賃金の回答はできないとの立場に固執したため、組合側より中央労働委員会にあっせん申請を行い判断を仰ぐに至ったという。あっせんの結果は、当然のことながら「独占禁止法上の問題とはならないと解されるため、労使双方は、産業別最低賃金について、真摯に協議を行い、その解決に努めること」というものであったとのこと。しかし、それでも業界側は産別最低賃金の回答はできないとしたため、やむなく4月14日、15日に組合で組織する全港において48時間のストライキを決行するに至ったとしている。

 全国港湾の糸谷委員長(写真中央)は「中央労働委員会のあっせんにも従おうとしない業界側の態度の理解に苦しむ。なぜ、2015年以前まで回答してきた港湾産別最低賃金の回答を行わないのか理解できない。私たちはストライキを回避したいし、ゴールデンウィーク中も物流が滞らないように協力をしていきたいが、解決しなければストに入らざるを得ない。港湾の賃金の底支えをし、日本の物流が守れるよう、安心して働けるようご理解をお願いしたいと」と訴え呼びかけていた。

 近年の港湾は、数十年前と比べれば安全対策が進み、労働災害防止の取り組みにも力が入れられてきているという。しかし、2019年の新年早々には20歳代の若者3名が仕事中に事故で亡くなるという痛ましい事件も起きている。いくら安全対策がとられても港湾の職場は重機を扱い危険を伴いう職場であることに代わりはなく、だからこそ労働環境を整え、雇用と職域の問題には神経をとがらせる必要があり、港湾は労使協定の遵守に力を入れてきたのだという。そのためにも賃金の下支えは不可欠だという。

 最低賃金の引き上げは、港湾に限らず、あらゆる職種で喫緊の課題とされている。2019年3月には国側が最低賃金の業種別全国一律化を検討すると述べるに至るなど、最低賃金の改善が各界からも求められる時代となってきている。トラック業界にあっては、2018年12月、貨物自動車運送事業法改正案が与党も賛成する中で可決され、2023年までの時限措置としながらもトラックの標準的運賃を告示することが決定されている。そうした時代の流れの中で、最低賃金に回答できないとする業界団体の態度は、日本国内の問題に留まらず、労働改善全般の流れにも逆行するものと言わざるを得ないのではないだろうか。

 最低賃金の回答拒否の問題は、本来の労使交渉、労働協約の意義やあり方、働く者への向き合い方を根本的なところから問い掛けている。

★記者会見全部の映像
https://www.youtube.com/watch?v=o11QAFP7lOo

★NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190416/k10011886251000.html

★全港湾のサイト
https://zenkowan.org/?p=4471


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