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痛快、すっきり、眼からウロコ〜竹信三恵子さん 安倍「働き方改革」を斬る

 3月16日、スペースたんぽぽでレイバーネット2019総会が開かれた。二部の特別企画のテーマは「企業ファースト化する日本と私たち」。ジャーナリストの竹信三恵子さんが講演に立った(写真)。「過労死ラインの月100時間まで残業させていいというのは『働き方改革』ですか?」。竹信さんは、安倍政権の「働き方改革」はフェイクと呼ばざるを得なかった理由を説明した。「同一労働同一賃金」といいながら一番大事な基本給については「潜在能力、転勤、その他の条件」をつけて正社員と非正規の差別を是認している。それはメトロコマースの判決に見事に反映されていた。いたるところに長時間労働や転勤が無理な女性を排除する仕組みが張り巡らされている。

 政府のいう「女性が輝く(Shine)」政策=女性の生産性向上運動」のShineは「シャイン」ではなく「シネ」と読める。竹信さんは政府の労働政策の目的は「労働者の権利を守ることではなく国力を増強することにはっきり転換している」と指摘する。新刊タイトルは『企業ファースト化する日本−虚妄の「働き方改革」を問う』。「女性活躍など包装紙はりっぱだが中身は毒まんじゅう。だまされてはいけない」と切れ味のいいトークが続いた。

 では私たちはどうしたらいいのだろうか。竹信さんは、政府による上からの働き方改革を押し返す現場からの積み上げが大切とし、「働き手の拠りどころを立て直す=顔の見える関係による身近な情報拠点、そのシーズ(種)としての労組」の役割を強調した。この日の第一部では19年目を迎えた「はたらくものの情報ネットワーク」レイバーネットの活動について活発に話し合ったが、レイバーネットも竹信さんのいう「働き手の拠りどころ」のひとつになれればと思う。

 パワポを使った講演に、40人をこす聴衆は釘付けで「痛快、すっきり、眼からウロコ」の感想が聞かれた。そのあとの40分のディスカッションでも熱心な質問とやりとりが続いた。(M)

参加者の感想〜毒まんじゅうを食べたYouTuberのこと

   S・Iさん

 『#週刊金曜日』の案内を見て参加したのだが、行ってみたら「#レイバーネット」の総会だった(非会員でも参加できる)。話をものすごく縮めると「『働き方改革』は、美辞麗句を並べて労働者を過労死するまで働かせる『毒饅頭』だ」との趣旨。

 実は私がチェックしているYouTuber(男性)でこの「毒饅頭」を食べてしまった人がいる。その人、派遣で働いていたのだが、「今の日本は好景気だし、『働き方改革』で副業も可能になったから、正社員でもYouTuberが続けられるだろう」と考えた。そこでそれまでの仕事を辞め、転居し、正社員の仕事を探し始めた。しかし、まず、地方では(その人は地方在住)現実には副業を認める企業はなかった。そして、そもそも正社員の仕事がほとんどなかった。

 正社員の募集があるのはきつい仕事ばかりで、とてもYouTuberどころではない。仕事を探して一年以上になるが、結局、希望の条件を満たす仕事は見つからず、YouTubeの収益やFXトレードで生活をつないでいる。しかし、この人が正社員を目指した理由は「結婚がしたかったから。」10年ぶりに彼女ができたので、安定した収入のある正社員になって結婚しようと思ったのだった。私が竹信さんの講演を聞いた上で、このYouTuberの話から思うのは以下の三点である。

 第一に、「働き方改革」は「結婚して家庭を作る」という当たり前の権利さえ、労働者に保障しないということだ。時短など明るい面だけが強調されるが、そもそも正社員の仕事がなければ家庭を持つことが困難である。残業がなくなってもパートナーや子どもと共に過ごすことができない。

 第二に、安倍政権は労働者の「不安」に付け込むのが上手い、ということだ。私はこのYouTuberがライブ配信で「『働き方改革』で自分の希望がかないそう」という趣旨の発言をした時、「そんなに甘く考えない方がいい」という趣旨のコメントをした。しかし、一顧だにされなかった。元々、この人は結婚願望が強く、「独身のまま50歳になったら、自分は絶対に寂しい人生になる」と繰り返していた。「自分の人生が寂しいものになる」ということは「自分が営々と積み上げてきた一生が無価値なものになる」という意味にかなり近い。この「不安」がきわめて巨大なものであることは容易に想像がつく。「『働き方改革』でこの『不安』から解放される」と思えば、その「闇」など「OUT OF 眼中」になってしまうのだろう。しかし、「自分の人生の価値が奪われるかもしれない」という「不安」はこの人だけのものではあるまい。安倍政権はそこに巧みに、そして狡猾に付け込んでいるように思われる。

 第三に、大多数の人の「幸福」の具体的イメージはまだまだステレオタイプだ、ということだ。前述のようにこの人は「50代で独身だと寂しい人生になる」と繰り返していたのだが、50代独身男性の私は特に寂しくない。そこで、この人がこの種の発言をする度に「そんなに決めつけなくてもいいんじゃないの?」とコメントしていたのだが、特に返答がなかった。「50代独身男性=寂しい」という固定観念に支配されてしまって、それ以外の認識は受け入れられないのだろう。言い換えれば「結婚してパートナーと子どもの成長を見守る人生が幸せ」という認識が牢固として意識を支配し、それ以外の「幸福」が想像できないのだと思われる。

 とはいえ、このような認識も決してこの人だけのものではあるまい。実際、ネットではバレンタインにチョコをもらえなかった男性の「人生で負けた」という「自虐コメント」をよく見るし、経済的に男性より不利な条件にある女性の方が、こういう認識が強い側面は否定できないだろう。しかし、このような認識は前述の「不安」の基盤であり、安倍政権の横暴を許す条件にもなっているように思われる。
 竹信さんも述べていたのだが、労働は個人が幸福になるためにある。しかし、その「幸福」とは何なのか、何か特定の型にはまるようなものなのか、改めて考える必要があるように思った。


Created by staff01. Last modified on 2019-03-18 09:42:42 Copyright: Default

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