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LNJ Logo 〔週刊 本の発見〕『戦争・核に抗った忘れえぬ人たち』
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毎木曜掲載・第85回(2018/11/29)

先人達と平和の軌跡を辿る旅

●『戦争・核に抗った忘れえぬ人たち』(岩垂弘著、同時代社、1500円)/評者:杜 海樹

 本書の冒頭において、戦後日本の最大規模の社会運動は平和運動であり、反戦・反核の平和運動があったからこそ、日本は戦争に巻き込まれることもなく平和を続けてくることができたのであろうと筆者である岩垂氏は述べている。日本のメディアが伝えようとしない、反核運動・平和運動に尽力された方々を、この本は端的に且つ的確に紹介している。著者の岩垂氏は元新聞記者であり、自身のジャーナリストとしての関わり方からか、取材を通しての具体的記述も多く盛り込まれている。

 本の目次を見ると「平和に執念を燃やした前衛俳句の巨匠・金子兜太、『デモ屋』と呼ばれた数学者・福富節男、愛称は『革命の寅さん』・樋口篤三・・・」と多彩な30名が紹介されている。掲載されている人物はいずれも故人ではあるが、今まさに活躍中の人物かと思うほどのリアリティーを感じることができる。

 平和運動や労働運動といった分野で活躍する方々は、ともすると自身のテリトリーの範疇から出ないケースも珍しくなく、反核運動では有名でも労働運動では無名、労働運動で有名でも協同組合運動では無名といったケースが珍しくない。ましてや、一般の大学生や会社員までが皆知っているケースとなると極稀だ。この機会に故人の存在を少しでも多くの方々に知っていただけたらと思う。

 本の役割というものは、その時々でも様々だが、本に書かれている情報を単に得るだけではなく、読者が読者自身の視点で書かれている内容を把握し、疑問から仮説を導き出し、思考し、読者自身の考えに再編していく過程、つまりは書かれている内容との対話が大事であると私は考えている。今回お勧めする本は人物紹介の本であるので、先人との対話を是非とも楽しんでいただければと思う。

 私ごとで恐縮だが、本の中で紹介されているお一人の「革命の寅さん・樋口篤三(写真)」という方と、晩年、縁あって海外でご一緒させていただいているのだが、この本を読み返して、改めて先人の偉大さに思いを馳せる次第だ。あえて寅さんと呼ばせていただくが、寅さんは長年労働運動に尽力され、労働界では有名な「労働情報」の創刊メンバーであった方だ。寅さんはいつも唐突に発言し「よし、今からキューバに行くぞ!」などと言っては国会に出かけ、当時、衆議院議長だった土井氏に「カストロ議長と会いたいので宜しくたのむ」などと言い、あまりの唐突さに周辺から「また寅さんか〜」と揶揄もされていた。しかし、土井議長などは「あなたに言われたのでは敵ないませんねえ」などと言いながらもカストロ氏に宛てた書簡を作成、関係大使館をよく駆け回っていたものであった。一見唐突で無謀にも見えた寅さんの言動ではあったが、一つだけはっきりしていることは、寅さんは信じた未来に向かっては誰がなんと言おうと真っ直ぐに突き進んでいたということだ。

 現代社会ではともすると、歴史に貢献した人物というのはHNKの大河ドラマに出てくる人物くらいしかいないのか?と思いがちだが、この地球上には70億人もが暮らしているのであり、読者の皆さんの周りにも必ずいることと思う。縁あって「戦争・核に抗った忘れえぬ人たち」を目にされたなら、この機会に30名の中からのお気に入りの人物を見いだし、対話を楽しみ、裾野を広げ、平和の軌跡を辿る小さな旅にでも本を通して出かけていただければ幸いだ。

*「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・佐藤灯・金塚荒夫ほかです。


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