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毎木曜掲載・第77回(2018/10/4)

実体験を描いたノンフィクション漫画

●『家族がいなくなった日一ある犯罪被害者家族の記録』(今田たま 著、ぶんか社コミックス、1000円)/評者:大西赤人

 爐笋辰拭覆い犬瓩拭殴った)側は簡単に忘れるが、やられた(いじめられた、殴られた)側は決して忘れない瓩箸いΔ茲Δ文世なは、折々に見聞きするところである。これは敷衍《ふえん》すれば、牴坦下圓亘困譴襪、被害者は忘れない瓩箸いΔ海箸砲發覆襪世蹐Α実際、個人間の犯罪であっても、社会的な公害や薬害であっても、あるいは国際的な戦争であっても、苛まれた被害者は、その後の局面において、当事者性に基づく絶対の強い立場を持つことにもなる(もちろん、それと裏返しの誹謗中傷を受ける場合もあろう)。加害者が猖困譴覘瓩どうかはさておくにせよ、少なくとも猖困譴覆き疊鏗下圓料曚ぁ宗重椶蝓悲しみ、憎しみ、時には怨念や復讐心――は、時には他者の容喙《ようかい》しがたいものとして厳然と立ち現われる。

 不可逆的に命が奪われる殺人事件は端的な例であり、被害者(正確には、その遺族)が抱く想いは応分の処罰への願いに集約され、しばしば「死刑」を求めることとなる。そして、加害者のために働く弁護士、あるいは、なべて人権の擁護・尊重に努める人々が「死刑」に反対するならば、猗鏗下圓竜せちを判っていない甅狃蠢Г和梢融なんだろう甅犲分の大事な存在を殺されてみろ瓩箸いΔ茲Δ法宗修い辰輯駝にも第三者からの――罵倒を浴びかねない。

 本書は、実際に家族を殺害された経験を持つ作者によるノンフィクション漫画である。2007年6月19日夜、今田の父親は、店長をしていた茨城県つくば市のパチンコ店を閉店後に出てきたところで強盗に襲われ、胸などを刺されて死亡する(作中では仮名になっているが、インターネットで検索すると、当時の多くの記事が残っている)。姉、今田、弟にとって父親は実母(既に故人)の再婚相手ではあったが、特に今田にとっては実父以上に親愛を寄せる家族だった。全く想像もしなかった事態――その日の朝にはいつものように見送った父親が夜には亡くなっているという現実――を、彼女は受け止め得ない。警察、事情聴取、検死解剖、メディア取材、葬儀……。避けがたく訪れる様々な出来事に揺らぐ作者の様子が、緊張の際立たないシンプルな画面で淡々と描かれ、むしろしみじみと伝わってくる。 *漫画右=著者のブログ「強皮症と鬱と生活と。」より

 食欲もなく、「父の死を受け入れられないまま ただひたすら体を動かすことに没頭した」彼女は、しかし住宅広告の仕事でもミスをするようになり、ついに出勤することさえ出来なくなる。警察から紹介された「犯罪被害者対策室」のカウンセラーと話して救いを感じる一方、「時間がたつことでしか解決できないこともあるんですよ」「乗り越えられる時はきっときますから」と言われ、「父のこと忘れちゃうくらいなら 今のまま…苦しいままでいい…っ」「この悲しみが消えることはないのに……」「心から笑える日なんて もう二度とこない」とも考える。

 殺人事件に限らず、「遺族」への対応は非常に困難かつ微妙である。弔慰や慰藉《いしゃ》とは、その人の心の傷を癒やすことなのだが、同時にそれは、遺族の「忘れたくない」もっと言えば「忘れてはいけない」という感情と衝突してしまう。上記の場面でカウンセラーは、ある遺族の言葉として猖瓦なった人を大切に思う気持ちは、凝縮した結晶のように心の真ん中に留まる。それは「忘れる」とは違った感覚瓩箸いο辰鬚垢襦その時点では作者は素直にうなずくことが出来ないのだが、この言葉は印象に残る。

 事件から半年余りが過ぎた頃、38歳の元・パチンコ店従業員が逮捕され、犯行を自供する。検察官の聞き取りに対して今田は「死刑にしてほしいんです」「犯人がまた社会に出てくるのなら……私が殺してやります!」と言い募る。しかし、判決は無期懲役に留まる。事件後、大好きだった漫画を読むことも描くこともなくなっていた作者は、時間の経過につれて再び漫画に触れられるようになり、3年後に漫画家としてデビューし、2015年に至って本作を送り出している。本書収録のコラムにはなお「私は父を殺した男を許してはいない」「もし犯人が私が生きている間に再び世間に出てくる日がくるのなら、その時は殺しにいこうと」思っていると明言されているものの、他方、作品の最後は、「普通に笑えるようになった私の心には 穴だったり結晶だったりいろいろな形でいつも必ず父がいる」と幾分の和やかさで結ばれている。

*「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・佐藤灯・金塚荒夫ほかです。


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