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私の人格、思想を裁いた不当判決

    根津公子

〔2009年「君が代」不起立河原井・根津停職6月処分取消訴訟東京地裁判決〜河原井さんの処分は取り消すが、根津の処分は適法とする 損害賠償は認めず〕


 すでに佐々木有美さんがレイバーネットに報告してくれたように実にひどい判決でした。

 1月10日に行われた尋問(吉原眞一郎都教委人事部服務担当副参事=処分案を作成、本人)が終わるや、裁判官3人は法廷を離れ15分後に戻ると春名茂裁判長が突如、判決日を言い渡した。抗議すると、「もう判断はできる」という趣旨のことを言って、退廷してしまった。尋問での証言をもとにした最終準備書面は必要ない、読まなくても判断できるというのだった。

 尋問のために吉原副参事が提出した陳述書の一部は前年度の担当者の陳述書のコピペであり、2009年にはなかったことをあったかのように書いたものだった。2008年の2~3月私はこのままクビにされるのはたまらないと思い、「私をクビにしないで」と都教委に日参した。それを吉原副参事は2009年も続けたと陳述し、尋問でも、そういう事実が「ありました」と嘘の証言をした。また、処分量定を決めるのに私の勤務状況や他県との違い等について何の検討もせず、機械的に停職6月処分を行ってきたことを証言した。しかし判決は、嘘の陳述には目をつぶり、他県との違いについては、「吉原証人は全く考慮していないという趣旨を述べるものではないから、都教委が・・・考慮事項を考慮していないと認めることはできない」と都教委を救済した。

 私の尋問では、都教委が校長に「根津は(10月に復帰して)11月にはいなくなる」(免職)と言ったことや私の業績評価を低く書き換えさせたことなど、都教委の支配介入がいかにひどかったかを、音声を添えた証拠を提出して証言した。音声が何よりの証拠であるのに、判決は、「人事評価の書き換え等に関する違法不当な指示命令をしていたことを認めるに足りる証拠はない。」という。これらは、停職6月処分が適法か否かの重要な判断材料となるはずであった。しかし、裁判長はそれらを取り上げずに判決を書いたのだ。もちろん、こちらは尋問から浮かび上がったことについて最終準備書面を出したが。

 したがって、根津敗訴判決は初めから分かっていた。結論ありきの判決だったのだ。

◇判決は、不起立行為ではなく、私の人格を裁いた

 判決を一読して、これは行為をではなく、私の人格を裁いたと思った。

 私の2008年停職6月処分を適法とした地裁判決(清水響裁判長 2017年5月)も「根津は、あえて勤務時間中に勤務場所における本件トレーナー着用行為を繰り返し」「校長らの警告も無視して本件職務命令が発せられるような状況を自ら作出し・・・着用を続けた。このような一連の根津の言動は、・・・やむをえず不作為を選択したというものではなく、自ら学校の規律や秩序を乱す行為を積極的に行った」と、私が極悪非道なことをしたかのように書き、このことと「過去の処分歴」の2つを、処分を加重してよい「具体的事情」とした。事実は、汚れてもいい作業着として着用しただけの不作為行為であるのに。この判決もひどいと思ったけれど、それに輪をかけたのが今回の判決だ。

 2008年事件は新たに都教委が作出したトレーナー問題があったが、今回はトレーナー着用禁止の職務命令もなく、処分を加重してよい「具体的事情」はなかった。だから、2012年最高裁判決に従えば、処分加重はできないはずだった(2012年最判は「同一の『過去の処分歴』を何度使っていいかについては触れていない」。また、2007年停職6月処分取消訴訟の2015年須藤高裁判決・2016年最高裁決定は、「過去に不起立行為以外の非違行為によって3回の懲戒処分と、不起立行為によって3回の懲戒処分とを受け、2回の文書訓告を設けているものの、これらの・・・根津の行為は、既に停職3月とする前回停職処分において考慮されていることや、本件不起立が卒業式での着席(不起立)行為であって、・・・処分を更に加重しなければならない個別具体的事情は見当たらない」として、「過去の処分歴」を「具体的事情」として使い回すことをしなかった。「過去の処分歴」の使い回しを禁じたと言っていい。これが最新の決定なのだから、今回の判決はこれを無視してはならないはずだ。

 しかし、2008年事件、2009年事件地裁判決ともに、2016年最高裁決定を無視し、「過去の処分歴」(資料1)を4度目、5度目の「具体的事情」とした。2009年事件判決が言う「過去の処分歴」は、2008年事件判決が「具体的事情」としたトレーナー問題も加えた。「自己の思想及び良心と社会一般の規範等により求められる行為が抵触する場面において、校長の職務命令に違反して、勤務時間中に、『強制反対 日の丸 君が代」または、『OBJECTION HINOMARU  KIMIGAYO』等と印刷された服を着用するという職務専念義務違反行為に及ぶなど、あえて学校の規律や秩序を乱すような行為を選択して実行したものも含まれており、規律や秩序を害した程度は相応に大きい」と。

 判決は続けて、「)楫鑄垉立自体は・・・着席したという消極的な行為・・・であること、∧神19年3月30日付停職6月の処分が取り消されていること等を考慮しても、2甬遒僚菠に係る非違行為の内容及び頻度、重要な学校行事等における教員の職務命令違反であるという・・・諸事情を綜合考慮すれば、・・・具体的事情があったものと認めることができる。」(〜は筆者)と。判決は´△髻屬塙洋犬靴拭彌颪が、考慮した形跡はないまま、の結論にいく。

「過去の処分」を「具体的事情」にすることは二重処分だとこちらが主張してきたことについて判決は、「前回の平成20年3月の停職6月の処分を更に加重するものではなく、前回と同じ量定の懲戒処分を科すものであるところ、一般的に、同じ態様の非違行為を繰り返している場合、前回の処分よりも軽い処分とせず、同一の量定の処分を行うことは、公務秩序を乱した職員に対する責任を問うことで、公務秩序を維持するという懲戒処分の意義や効果に照らし不合理であるということはできない。」と、加重処分ではないと開き直る。原告は、複数回体罰をした教員の体罰事案では、前回処分よりも次の処分が軽い事例を列挙して主張したが、判決はこれについても全く無視した(2007年事件須藤高裁判決は、これについても認めた)。

 また、「平成19年3月30日付停職6月の処分が取り消されていること等を考慮しても」と言いながら、「同判決は本件とは事案を異にする高裁判決であって」と言い、考慮の跡はない。更には、「同判決も、前回と同一の停職3月の処分を科すことについてはこれを許容する余地があることを前提としているものと解される」と、加重処分ではないことの弁解に都合よく須藤判決を援用する(須藤判決は、前年の停職3月処分が2012年最判で適法と判断されたことを、最判が判断基準とされることの性質上、否定できなかった・しなかっただけのことなのだが)。

 こうして判決を見ていくと、2009年の私の不起立行為を裁いたのではなく、「過去の処分歴」を使いまわして、私の人格、思想を裁き私を全否定したことがわかる。

◇2008年事件控訴審で都教委の嘘を暴く

 2008年事件は現在控訴審に係属している。この件の処分理由は「君が代」不起立の他に、校長が着用を禁止した、「日の丸 君が代 強制反対」「OBJECTION HNOMARU KIMIGAYO」のロゴが書かれたトレーナーを着続けたことが職務命令違反・職務専念義務違反だというもの。

「私はこのトレーナーをずっと着用してきたが、着用禁止の職務命令を出したのは南大沢学園養護学校の尾崎校長だけ」と私が事実を主張してきたことに対し、2004年、2005年度に私が在職した立川二中の福田校長が「根津は一度着てきたが、脱ぐように言ったら脱ぎ、その後、着用することはなかったので職務命令を出さなかった」という主旨の陳述書を提出し、7月12日(予定)に証言台に立つという。在職当時、私にひどい対応をした人ではないのに、そうした普通の人が嘘の証言をする。アベ政治の官僚の小型版を見ているような感覚に陥る。当時の生徒たちが、着用する根津を見たという事実を書いてくれた陳述書や、同一の図柄のTシャツを着用していた高校教員の証言で被控訴人・都教委の主張の嘘を明らかにし、着用禁止を命じたのは尾崎校長だけであったことを立証し、何としても勝訴したい。でなければ、2009年事件も勝訴にもっていけないから。

◇おわりに

「自己の歴史観や世界観を含む思想等により忠実であろうとする教員にとっては、自らの思想や信条を捨てるか、それとも教職員としての身分を捨てるかの二者択一の選択を迫られることとなり、…日本国憲法が保障している個人としての思想及び良心の自由に対する実質的な侵害につながる」と判示し、私の停職6月処分を取り消した2007年事件須藤高裁判決・最高裁決定が出たことの意味は大きい。この事実は消えはしない。最悪判決を前に一層そう思う。

(資料1)根津の「過去の処分歴」

1994年3月(処分発令は4月) 
 卒業式の日の朝、校長が職員会議の決定を破り揚げた「日の丸」を、生徒の「下ろそう」と叫ぶ声に押され、また、石川中の民主主義を護るために下ろし(2回)、減給1月処分。

1995年3月(11月)
 職員会議の決定を踏みにじり、「日の丸」を揚げた校長の昨年の行為について記した学級通信が「不適切な内容」だとして訓告処分。

1999年3月(8月)  
 地下鉄サリン実行犯の証言「指示を実行することで頭がいっぱい」を題材に、「自分の頭で考えよう」という趣旨の、3年生最後の授業で使った自作プリントが「不適切な内容」だとして、訓告処分。

2001年2月から2002年にかけて(2002年3月)
 「従軍慰安婦」「同性愛者」を取り上げた家庭科の授業への攻撃に始まり、指導力不足等教員として申請された。指導力不足等教員には認定されず。しかし、この期間中に発せられた職務命令に従わなかったとして減給3月処分。

2005年3月(3月) 卒業式の「君が代」不起立が「職務命令違反」だとして、減給6月。

2005年4月(5月) 入学式の「君が代」不起立で停職1月 

2005年7月(12月)思想転向を迫る「再発防止研修」(7.21)の際、ゼッケンを着けたことと質問をし続けたことが「職務専念義務違反」だとして、減給1月処分。

2006年3月(3月) 卒業式の「君が代」不起立で停職3月処分。

2007年3月(3月) 卒業式の「君が代」不起立で停職6月処分。

2008年3月(3月) 卒業式の「君が代」不起立で停職6月処分。

2009年3月(3月) 卒業式の「君が代」不起立で停職6月処分。

判決は、とりわけ´Г積極的妨害行為だと言う。

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