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毎木曜掲載・第46回(2018/3/1)

マンガで振りかえる3・11

●『僕と日本が震えた日』(鈴木みそ 著、徳間書店、620円)/評者:大西赤人

 東日本大震災、併せて福島第1原発における大事故の発生から、間もなく丸七年の時間が過ぎようとしている。言うまでもなく被災地・被災者の十分な復興は為されていないし、原発の処理に至っては、犲束瓩いつの事になるのか、予測さえ立たない。いや、本当のところ、完全な犲束瓩呂修發修睇垈椎修覆里もしれない、とはいえ、様々な他の出来事と同様に、2011年3月11日に発生した想像を絶する光景もまた、次第次第に――筆者自身をも含めた――多くの人々の記憶から薄れ、遠い彼方のものとなりつつあるのであろう。あの時、政治の中枢にあって爐燭世舛坊鮃への影響はない瓩箸いΩ斥佞魴り返しながら人心の宥和に勤しんでいた人物が、今では所を替え、政権批判の先頭に立って旗を振ることが出来ているように……。

 今回は、久々に漫画を採り上げる。ルポルタージュコミック『僕と日本が震えた日』には、震災直後の2011年4月から同年11月までの取材に基づいて描かれた八本の短篇が収められている。単行本発売は2012年3月(2013年1月電子版発売)、巻頭の「都市被災編 僕と日本が震えた日」は、「2011年3月11日 あの日以来あらゆることが変わった」と始まる。震災の一ヵ月後、編集担当者から「3・11をマンガにしませんか」と打診された鈴木は、「震災後しばらくの間 何描いていいのかわからなくなって さっぱり仕事にならなかったくらいで」「どんなマンガを描けばいいのか マンガなど描いている場合なのか」と躊躇する。この鈴木の想いは、大西にも良く判る。当時、あの地震や津波がもたらした災禍に対して、狃颪瓩箸い自分の行為がどれほどの意味を持ち得るのかに根底的な懐疑と無力感とを抱かされたものである(責任編集として手がける雑誌で原発問題などを扱うことなどにより、幾らかでも責を果たそうと努めた)。

 鈴木の場合は、担当者から「みそさん自身の震災体験を描いてもらうというのは」「大きいだけが震災じゃないですよね」「細部に大事なものがいるんじゃないですか?」と促され、「自分にできることはマンガを描くこと」なので、原稿料を義援金としつつ「等身大の被災」を描こうと決める。こうして鈴木は、ちょうど震災当日に娘が出かけていたディズニーシーがあり「東京から一番近い被災地」といわれた浦安に出かけた巻頭作から、出版業界の被害を探った「僕と出版が震えた日」、重要な研究施設が影響を受けた「僕と加速器が震えた日」と筆を進め、併せて、あの頃、人々の関心と不安とを身近にかきたてた環境や食品における放射能汚染についても、「僕と放射能が震えた日」や「正しい放射線の測り方1、2」として、繰り返し描いて行く。

 シーベルト、マイクロシーベルト、セシウム、暫定基準値……メディアを席巻していたこれらの言葉が話題に上る機会は――先に述べた通り、僅か七年しか経っておらず、しかも、事態の根源は真の犲束瓩砲呂曚姫鵑い砲盍悗錣蕕此宗什や極めて乏しい(もちろん、福島の子供たちを筆頭とする甲状腺がんの問題などを追う動きは根強い)。そして、あの頃、牴疊召瞭本は、もはや人の住むべき場所ではない瓩噺る人々まで少なからず存在していた危機感は妥当で正しかったのか、それとも過剰で誤っていたのかは、未だ判らない。

 少なくとも、マンガという形式でリアリティーにワン・クッションを挟み、とりわけ数年の経過の後に振り返ってみると、自分自身も含め、幾分の――それは当然であり間違いとは言い切れない種類の――昂揚の中で事態を見ていたという印象はある。人にとって重大な何事かが起きた時、それを狢臺僂澄 危険だ! エラい事だ!瓩半霆鐡・観念的・直感的に騒ぐ見解が現われ、一方、爐修譴曚匹任發覆ぁB腓靴浸はない。許容し得る範囲瓩箸いΔ茲Δ鵬奮愿(?)・数学的(?)・理性的(?)に捉える見解も現われ、後者は、心ある(と自認する)人々からは非難を浴びせられがちである。本書に登場する専門家たちの言葉も、「正しい数値を知ることが大切です」「その数値をどう怖がるかはまた別の問題 国民的な合意になります」「最後は個人の価値観の問題です」「安全か危険かという結論を示すよりも 判断の土台となるデータを出すことが大事だと思いますよ」というように、冷静と言えば冷静だが、詰まるところ個々人の「自己責任」という一種の大義名分に収斂《しゅうれん》してしまいそうな面もある。

 想定外の事態が発生した時、人はそれにどう対処することが可能なのか、対処すべきなのか、このマンガを読みながら、そんな事を改めて考えてみても良さそうに思う。

*「週刊 本の発見」は毎週木曜日に掲載します。筆者は、大西赤人・渡辺照子・志真秀弘・菊池恵介・佐々木有美・佐藤灯・金塚荒夫ほかです。


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