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LNJ Logo 月刊東京 : 木下昌明さんの映画批評『わたしは、ダニエル・ブレイク』
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フクシマ陽太郎です。

 「ケン・ローチの真骨頂−『わたしは、ダニエル・ブレイク』」月刊東京5月号から。 今回もまた、木下昌明の映画評の連載を読むことができた。幸せな体験であった。 改めて言うまでもないが、雑誌やテレビ等の映画評は宣伝である。つまり配給会社 等が、多数の人に観てほしくてPRする。頼まれた批評家の多くは自分の主義主張と 無関係に、宣伝に一役買う。いずれも仕事である。あからさまに言えば、その動機に 商売がすなわち金が介在する。 月刊東京の木下昌明の映画評にはそうしたあれこれはない。その証拠に、観る映画 がいまいちで今号は休ませてくれと言ったことが書いてある。 木下が書きたい映画を自分で選択しているのだ。 だから映画評は思想の表現なのだ。 では、どんな思想か。それは次の言葉に通底する。 「強大な権力を持ったものに立ち向かう人々に代わって声をあげることだ。そしてこれ こそが、私の映画で守り続けたいものだ」。(映画の伝統に関するケン・ローチの言葉) まさしく、こうした姿勢こそが木下昌明の映画評の個性であり、得難い思想だと思う。 主人公の救いのない生きざま、これこそが現実なのだろう。 「福祉や医療や教育などの庶民の生活に直接かかわる分野に緊縮財政をとったこと によって起きている問題」 「就職の意志がなければ求職手当も支払われず、それを「自己責任」にさせられてしまう」 「この人間を人間として扱わない残酷な非人間的な緊縮システム」 この映画が映しだすものはイギリスの実情である。しかしながら、これはわが日本を席巻 し吹き荒れる、一般国民を放置して投げ捨てていく、政府の政策とそっくり同じものだ。 生活保護受給者の捕捉率がたったの2割に満たないというのに、不正受給ばかりが攻撃 去れる日本。おびただしい貧困層が増加していく美しい国日本。 アメリカでトランプを押し上げて当選させた声々、イギリスをEUから離脱へと向かわせた声。 これらはグローバル大資本の横暴に気づいた声なのだ。 国境を越えてこのダニエルのような人々は日々生み出されている。 そんなことをも考えさせる映画評であった。 「そのシーンが痛々しい」という言葉にみられるように人間的な痛みへの深い共感もまた、 木下昌明の真骨頂である。 福島市の映画館フォーラムでも4月29日から公開される予定だという。フクシマで観れる。

Created by staff01. Last modified on 2017-04-25 14:26:12 Copyright: Default

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