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たんぽぽ舎です。【TMM:No2999】
2017年2月10日(金)その2 地震と原発事故情報−
                1つの情報をお知らせします
                         転送歓迎
〔事故情報編集部〕より
2月7日発信の【TMM:No2995】で紹介しました
「関西電力高浜原発でのクレーン倒壊事故についての分析」
渡辺悦司氏の論考を全文、掲載致します。
━━━━━━━

┏┓
┗■1.関西電力高浜原発でのクレーン倒壊事故が示すもの
 |  ―支配する安全無視の体質、
 |  その中で原発を再稼働する恐怖の危険性
 └──── 渡辺悦司(市民と科学者の内部被曝問題研究会会員)

 2017年1月20日21時50分頃、関西電力高浜原子力発電所において工事用
大型クレーンが倒壊する事故があった。クレーンは2号機の核燃料プール
建屋の上に倒れ、状況によっては大事故につながりかねない深刻なもので
あり、関電の安全管理体制の全般的な危機的状況、安全意識の欠如、安全
規律の紊乱(びんらん)を集中的に示す象徴的な出来事となった。
 以下、この事故を分析し、それが示す原発再稼働の危険性を再度検証し
よう。

目次
1.事故の経緯
2.関電の記者会見と労働安全衛生法クレーン等安全規則違反の疑い
3.関電によるクレーンマニュアル違反と虚偽主張が明らかに
4.事故に現れた関電の安全無視の体質こそが問題
5.クレーンの安全マニュアルさえ遵守しない会社が原発を
  再稼働する恐怖

1.事故の経緯

 関電は、翌1月21日、事故の事実関係の簡単な発表(プレスリリース
「高浜発電所構内でのクレーンブームの損傷について」)・注1を行った
だけで、事故の詳しい経緯や状況、原因などの発表はまだない(2月1日
現在)。各種報道など・注2をまとめると、事故の経緯は概ね以下の通り
と思われる。
 高浜原発1号機および2号機は、昨年(2016年)6月、原子力規制委員
会から40年を超える運転期間延長を認められ、関西電力は運転延長のため
の「安全」対策の一環として、格納容器の補強工事を行っていた。工事は、
大手ゼネコンの大成建設を元請けに、下請け業者が4台の移動式大型ク
レーンを使って行われていた。当該のクレーンは、長さが113メートル、
高さ105メートル、総重量270トンあった。
 1月20日午後、福井県地方には強風が吹いており、16時42分、福井地方
気象台は福井県下に暴風警報を発表した。警報は、福井県庁の危機対策・
防災課により、メールやツイッターその他で広く拡散された・注3。
 関電や工事業者も、暴風警報発令を同日の作業終了時以前に当然認識し
ていたはずである。関電発表も事故当時暴風警報が発表されていた事実を
認めている・注4。
 高浜原発構内に2箇所ある風力計でも秒速14〜15メートルの風を記録し
ていた。気象台の暴風警報・注5は、陸上での平均風速20メートル以上、
最大瞬間風速は35メートルと予測されていた。実際、高浜原発に近い小浜
市での観測では、事故発生とほぼ同じ時刻の21時50分、秒速25.8メートル
の最大瞬間風速を観測している。クレーンの高度(約100メートル)では、
さらに風速が大きかった可能性が高い。
 1月20日夕刻(時刻未公表)、作業終了時の処理として、「日中の作業
を終えたクレーンは通常、アーム先端から垂らしたワイヤに重りを付けて
接地させ安定した状態にする」ので、この日も、5トンのおもりを垂らし
た「通常」通りの処置を行って作業を終了した。「強風で倒れる恐れがあ
る場合や年末年始などの長期休業時は、アームを折りたたんだり一部解体
したりして、より安全な策を取る」が、このような強風時対応はとらな
かった(高島昌和・高浜発電所運営統括長らの記者会見報道、中日新聞)。
 1月20日21時49分、「構内で大きな音がしたため、現場を点検したとこ
ろ、1、2号機格納容器上部遮蔽設置工事用の大型クレーン4台のうち1
台のクレーンブームが2号機原子炉補助建屋ならびに燃料取扱建屋へもた
れかかっていることを確認した」(関電発表)。クレーンは、風に煽られ
る形で仰向けに倒れており、台車の一方が少し浮き上がっていた。
 関電によれば、原子炉補助建屋には原子炉の冷却装置が格納されており、
燃料取扱建屋には259体の核燃料がプールに保管されていた。「2号機原子
炉補助建屋ならびに燃料取扱建屋の屋根が一部変形していること」が確認
されたという。破損の詳細は未公表である。
 事故発生の後(時刻未公表)、「事故を受け、別の3台のクレーンは二
つ折りの状態に戻した。二つ折りにすると『先端が接地するのでより安
全』(関電担当者)なのだという」(中日新聞)。折りたたまれた残りの
3台のクレーンは倒壊を免れた。つまり、やろうと思えば、クレーンの倒
壊を予防する手段はあったし、容易に実行可能であった。中日新聞は「そ
れなら、なぜ最初からこの安全策を取らなかったのか」と問うているが、
全くその通りである。

2.関電の記者会見と労働安全衛生法クレーン等安全規則違反の疑い

 関電担当者は、事故翌日1月21日の記者会見で、強風対応をとらな
かった理由として「元請けの大成建設やクレーンメーカーの調査で、こ
の重り(5トン)で毎秒42メートルの風に耐えられると評価されていた」
からであると説明した。ここには少なくとも5つの問題がある。
 第1に、「(関電、元請けの大成建設、下請け業者などのうち)だれ
が、アームを折りたたむという転倒防止策を講じないという決定をしたの
か」という点である。記者会見で記者側がこの質問すると、関電担当者は
「分からない」として回答しなかった(中日新聞、福井新聞)。つまり、
関電は、この措置の決定者が関電自身であった可能性を否定しなかった。
工事を急ぐために、関電側が要請して、翌日の作業にすぐに取りかかれる
よう、本来は必要であった転倒防止策を取らないように促したのではない
かという記者側の疑念に対し、関電はこれを否定しなかったということに
なる。
 第2に、このような重り(アンカウェイト)をつるす措置は、あくまで
も、強風時にアームを「地上に降ろすころができないとき」の「応急処
置」(日本クレーン協会)である・注6。
 しかも、日本クレーン協会は、強風時の注意点として、「関係者は,こ
の位の風では大丈夫と安易に判断せず,強風が予想されたら早めの対策を
講じる必要がある」と強調している。中日新聞が示唆しているように、容
易にアームを「降ろすことができた」のにそれを行わなかったことは、職
務上の怠慢だと言わざるをえない。
 第3に、関電は、「詳しく解析しないと原因は特定できない」として、
クレーン倒壊の原因が強風ではなく、他にあったのではないかと示唆して
いる。だが、関電は他の原因とされるものを特定しておらす、無責任な対
応といわれても仕方がない。考えられるのは、台車の基礎部分の地盤沈下
であるが、公表された写真からは、不等沈下が起こっている事実は確認で
きない。もし、他に原因があったか、あるいは強風との複合原因であった
としても、それも含めて関電側の過失によるものであることは明らかで
ある。
 第4に、いま仮に関電の上の説明の通りだとしても、平均風速20メート
ル以上・瞬間最大風速35メートルを予測する暴風警報が発表されている状
況下で、瞬間最大風速で42メートル(平均風速に換算すれば25〜28メート
ル程度・注7)を超える風が吹く可能性が「ない」という判断を事前に一
方的に下すことは、非常識であるだけでなく、工事の安全性の完全な無視
以外の何物でもない。
 しかも、クレーンの高度は約100メートルもあり、そのような上空につい
てまで「ない」と予め断定することは、安全意識の完全な欠如であるとい
うほかない。付言すれば、通常大型クレーンの先端付近には風速計が装備
されているはずだが、関電はその事実も、そこでの測定データも公表して
いない。
 第5に、重要なことは、関電の対応が法令に違反する疑いが強いことで
ある。クレーンの「強風時における転倒防止」措置は、労働安全衛生法に
基づいて制定された厚生労働省令「クレーン等安全規則」において義務づ
けられている(74条の4)・注8。
 その際の「強風時」とは「10分間の平均風速が秒速10メートル以上の
風」である(日本クレーン協会ホームページ)注6。決して「42メート
ル」ではない。

日本クレーン協会によるクレーン作業に関する規定(クレーン等安全
規則)
 風速10メートルの強風から転倒防止措置が義務づけられていることが
分かる  日本クレーン協会ホームページ
  http://www.cranenet.or.jp/susume/susume02_09.html

 以上で十分なとおり、「(強風時対応をとらなかったのは、通常対応で
も)風速42メートルの強風に耐えられるという評価基準」に従ったからで
あるという関電の主張は、何の正当な根拠もなく、まったく成り立たない。
 暴風警報が発令され、原発構内で秒速14〜15メートルの風が観測されて
いたにもかかわらず、本来平均10メートル以上の風の際に義務づけられた
転倒防止措置を怠ったことは、労働安全衛生法のクレーン等安全規則にた
いする公然たる違反行為である。労働基準監督局がすぐに調査に入ったこ
とは当然である。

3.関電によるクレーンマニュアル違反と虚偽主張が明らかに

 1月26日から27日に、状況は大きく変化した。関電は、1月21日の記者
会見では、関電および工事業者がクレーンマニュアルの「基準」を遵守し
て強風対応を取らなかったとを主張していた。だが、これが実際には露骨
な嘘であり虚偽主張であったことが朝日新聞や時事通信によって報道され
た・注9からである。
 朝日新聞によれば、「大型クレーンが倒壊して建屋2棟の一部が損壊し
た事故で、(関電側が)クレーンメーカーのマニュアルに従った対策を
取っていなかったことが(1月)26日わかった」「マニュアルには、風速
が30メートルを超えると予想される場合はアームを地上に下ろし、10メー
トル超ではバランスを取るため、重心があるクレーンの後部を風上に向け
ることが記載されている」が「いずれも怠っていた」という。
 時事通信は、朝日新聞の報道の翌日、「メーカーのマニュアルに記載さ
れた強風時の対策と、実際に関電側が取った措置が異なっていたことが
(1月)27日、関係者への取材で分かった」と、朝日新聞と同じ内容を伝
えた。
 当日、原発構内で現実に14〜15メートルの強風が記録され、気象台は瞬
間最大風速で35メートルを予測していたのであるから、クレーンメーカー
のマニュアルに従えば、アームを地上に降ろしておく措置が安全上必須で
あったということになる。
 関電は、1月21日の記者会見において、このマニュアルに言及し、それ
を根拠にして、強風対応をとらなくても「風速42メートルまでは耐えられ
る」と主張していたのである。関電がクレーンメーカのマニュアルの内容
を知らなかったはずはない。
 だから、関電は、クレーンメーカーのマニュアルに明記された指示―
イ.風速10メートル超[時事通信では10〜16メートル]の場合クレーン後
部を風上にする、ロ.風速30メートル超えると予想される場合事前にク
レーンアームを地上に降ろす―に、「意図的に」従わなかったというほか
ない。
 マニュアルは法令に規定された安全規則を叙述したものである。
つまり、上に検討したように、関電がクレーンの安全を定めた法令に「故
意に」違反し、業務上の義務であった強風対応を「意図的に」怠った事実
は、この報道からも裏付けられる。
 しかも、関電は、強風対応を取らなかったことがマニュアルに違反して
いる事実を知っていたのに、事故翌日1月21日の記者会見では、それがマ
ニュアルの「基準に従った」ためであると説明して、まったくの嘘である
虚偽の主張を報道機関に対して行い、公衆を欺こうとしていたことになる。
 このような関電の行為は、極めて悪質であり、犯罪的であるといって過
言ではない。

4.事故に現れた関電の安全無視の体質こそが問題

 問題を各部署の特定の諸個人やその判断だけに矮小化してはならない。
問題は、労働安全や安全性一般について軽視・無視する関電の組織体質や
慣行、安全管理の体制にある。労基局や原子力規制委員会など規制当局に
は、客観的に以下のことが求められている。
 ア.関電に対して、今回違反が明らかになった労働安全衛生法に関する
コンプライアンス(法令遵守)体制の厳しい総点検を実施すること。
 イ.今回の事故の直接の責任は、もちろんクレーンを持ち込んで作業し
ていた大成建設と下請け業者にあり、これら原発関連工事の請負業者の安
全管理に対しても厳しい総点検を行うこと。
 ウ.今回の事故や違反行為は、原発の再稼働準備のための工事作業中に
起こったものであり、再稼働準備工事の安全性について緊急の総点検を行
うこと。
 エ.関電の行為は極めて悪質であり、刑事罰に処すること。
 オ.原子力規制委員会は、もんじゅの運転主体として日本原子力研究開
発機構を不適格としたが、関電も、同じように、原発を再稼働し運転する
ための組織的な適合性を持たないものとして不適格と決定すること。
 だが、原子力規制委員会は、田中委員長が関電を「口頭注意」としただ
けで、それ以上の追及を行わない姿勢を示している・注10。今までに承認
した再稼働の許認可を見直すなど実質的な処分は、提起も検討もされてい
ない。厳格に検査をするならば、すべての電力会社が不適格とされるであ
ろうし、再稼働などできないからだろうが、これでは規制当局が自ら進ん
で安全規範への違反を容認し、結果として、事態が第2第3の福島原発事
故に向かって進むのを促しているようなものである。
 もちろん、今回の事故など福島原発事故とは比較にならないほど「小さ
な」ものであると感じられるであろう。そのような事故をどうして大きく
取り上げるのかと疑問に思うかもしれない。だが、一つ一つは「小さな」
ように見えるトラブルや事故が積み重なって、その中から重大事故が生じ
るのであり、しかも「小さな」事故はそれ自体が電力会社の安全に対する
姿勢や慣行や体質を端的に示すのである。
 「小さな」事故やトラブルの段階でどう対応するかが、重大事故を防ぐ
上で決定的に重要なのである。
 しかも、原発の場合には、いったん重大事故が起これば、原爆の数百・
数千発分の大量の放射能が環境中に放出され、周辺の地域住民のみならず
国民全体の生活や健康や生命が脅かされ、取り返しがつかない被害が引き
起こされる。
 そもそも当事者にまともな安全意識や責任感があるなら、本質的に自滅
的な危険性を持つ危険な原発は最初から稼働できないはずである。そのよ
うな原発を住民や国民の犠牲を承知で大規模に再稼働しようとしていると
ころに、政府や電力会社、原発関連企業の罪深さがある。

5.クレーンの安全マニュアルさえ遵守しない会社が原発を
  再稼働する恐怖

 われわれは、高浜での事例をはじめ原発再稼働時に全国の原発で多発す
るトラブルや事故(付表)の危険性を一貫して強調してきた・注11。
 安全管理体制の全般的危機と安全意識の退廃や安全規律の紊乱は、何も
関電に限ったことではない。
 だが同時に、今回の事故が再度示したのは、この危機と腐敗の程度が関
電においていかに特別に深刻かという点であり、一般公衆に恐怖を引き起
こさずにはおかないほどのレベルに進んでいるという事実である。
 関電は、再稼働作業時の安全に関するトラブル・レコードで最悪である。
今回のクレーン倒壊事故もそうだが、再稼働時のトラブルによって原子炉
が緊急停止に追い込まれたのは、今までに関電だけである。
 また、歴史的に見ても、11人もの作業員の死者を出した原発事故を起こ
したのは、関電だけである(2004年8月9日美浜原発3号機事故)。
 政府や関電は、裁判所に対して影響力を行使し、運転停止の仮処分を撤
回させて、何としても高浜原発を再稼働しようと策動している。われわれ
は何度でも警告するが、関電による原発再稼働は、上に見たような労働現
場での恐るべき安全無視体制の下で強行されようとしているのである。
 クレーン作業で安全マニュアルをまったく無視して作業することが常態
化している会社、経営トップから作業現場まで安全無視がいわば体質とし
て染みついている組織が、原発でも同じことを行っており今後も行うであ
ろうことは、容易に予想される。それがいかに危険な結果に導くか、火を
見るより明らかである。

謝辞

 本論考をまとめるにあたり、遠藤順子氏、山田耕作氏、田中一郎氏をは
じめ内部被曝問題研究会の皆さま、滝本健氏をはじめ京都市民放射能測定
所の皆さま、小森己智子氏、山田洋一氏そのほか多くの皆さまに、情報提
供やご意見、アドバイスや励ましその他いろいろなご協力を頂きました。
ここに深く謝意を表したいと思います。ありがとうございました。当然な
がら文責はすべて筆者渡辺にあることは言うまでもありません。

注記

注1 関西電力株式会社「高浜発電所構内でのクレーンブームの
   損傷について」2017年1月21日
http://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2017/0121_1j.html

注2 事故に関する報道は多いが、とくに以下の記事を参照した。
NHKニュース「高浜原発で大型クレーンが倒れる 建物の屋根が変形」
2017年1月21日 6時23分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170121/k10010847641000.html
同「高浜原発で大型クレーン倒れる 強風が原因か」2017年1月21日
12時14分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170121/k10010847841000.html
朝日新聞「高浜原発、建屋にクレーンもたれかかる 屋根が変形」
2017年1月21日
http://www.asahi.com/sp/articles/ASK1P135GK1NPTIL03L.html
東京新聞「高浜原発でクレーン倒れる 原子炉補助建屋の一部などを破損」2017年1月21
日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201701/CK2017012102000245.html
福井新聞「関電、クレーン倒壊原因特定できず 高浜原発、強風では?」
2017年1月22日
http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/society/113570.html
中日新聞「関電、暴風警報対策せず 高浜クレーン転倒」2017年1月22日
http://www.chunichi.co.jp/article/fukui/20170122/CK2017012202000016.html

注3 福井県庁危機対策・防災課のツイッターページ
https://twitter.com/kikitaisaku

注4 前掲関電プレスリリースは「クレーンブームの損傷時、暴風警報が
出ており、強風が吹いていた」と書いている。

注5 福井地方気象台の暴風警報発表基準は以下のサイトを参照のこと。
http://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/kijun/fukui/0_fukui.pdf
それによれば、福井県嶺南地方の暴風警報発令基準は、
平均風速20メートル(秒速)である

注6 日本クレーン協会「建設工事用クレーンの強風対策」
http://www.cranenet.or.jp/susume/susume02_09.html
関電がいかにクレーンの安全対策を守っていなかったかを示すために、
この日本クレーン協会の勧告の該当部分を多少長くなるが以下に引用し
ておこう。
 「… 強風による事故を防止するため,移動式クレーンの『強風時の作
 業中止』(クレーン則74条の3)及び「強風時における転倒の防止」
 (クレーン則74条の4)が規定されていますが、この作業中止の強風時
 とは10分間の平均風速が10m/s以上の風をいい、転倒の防止措置を講じる
 強風時には何m以上の風とはいわずに,作業を中止することです。
 移動式クレーンが転倒するおそれのある時は、移動式クレーンの転倒に
よる労働者の危険を防止する措置を講じなければなりません。
 市街地で大型移動式クレーンが転倒すると労働者ばかりか、通行人を始
めとする第三者への危険が予想されるので、転倒の防止措置は時期を逸せ
ず確実に行わなければなりません。
 移動式クレーンの転倒防止措置を講じないで単に作業を中止しても、待
機中に強風にあおられ転倒した例や、台風などの影響を受けることが予想
されたにも係らず適確な転倒防止措置をせずに、休止中に大型移動式ク
レーンが転倒した例もあります。
 移動式クレーンの運転者を始めとする関係者は,この位の風では大丈夫
と安易に判断せず、強風が予想されたら以下のような早めの対策を講じる
必要があります。」
 この後さらに各種の対策が紹介されているが省略する。対策の中で、
重り(アンカウェイト)をつるす措置は、あくまでも「フロントアタッ
チメントを地上に降ろすころができないとき」の「応急処置」と規定さ
れている。今回の場合のように地上に降ろすことが可能であり、他のク
レーンについては事故後に実際に地上に降ろす対応が取られたような場
合には、当てはまらない。これを行わなかったことは職務上の怠慢とい
うほかない。

注7 関電のいう「毎秒42メートル」とは、明らかに瞬間最大風速である
と考えられるが、上記日本クレーン協会によれば、瞬間最大風速は平均風
速のおよそ1.5〜1.7倍程度とされており、平均風速に換算すれば毎秒25〜
28メートル程度である。

注8 同法令は以下のサイトで読むことができる。
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S47/S47F04101000034.html

注9 朝日新聞「高浜原発クレーン倒壊、強風対策怠る 
   当日は暴風警報」2017年1月26日
http://www.asahi.com/articles/ASK1V3FXLK1VPGJB007.html
「関西電力高浜原発(福井県高浜町)で(1月)20日夜、大型クレーンが
倒壊して建屋2棟の一部が損壊した事故で、クレーンメーカーのマニュア
ルに従った対策を取っていなかったことが26日わかった。暴風時にはアー
ムを下ろしたり、重いクレーンの後部を風上に向けたりしなければならな
いが、いずれも怠っていた。
 クレーンは当時、アームを高さ約105メートルまで伸ばし、風上にあ
たる北西方向に前部を向けていた。転倒防止のため、地面の重り(5ト
ン)とアームの先端をワイヤでつないで固定していたが、南東方向にあっ
た2機の原子炉補助建屋と核燃料を保管する燃料取り扱い建屋の屋根の上
にアームが倒れた。
 マニュアルには、風速が30メートルを超えると予想される場合はアーム
を地上に下ろし、10メートル超ではバランスを取るため、重心があるク
レーンの後部を風上に向けることが記載されているという。
 福井地方気象台は事故当日、『20日夜遅くから急速に北の風が強まる』
として高浜原発周辺に暴風警報を発令し、最大瞬間風速35メートルと予想
していた。」
時事通信「マニュアルと異なる対応=関電、クレーン倒壊で−高浜原発」
2017年1月27日
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017012700350&g=eqa
「関西電力高浜原発(福井県高浜町)で工事用の大型クレーンが倒れ、2
号機の燃料取り扱い建屋などの一部が損傷した事故で、メーカーのマニュ
アルに記載された強風時の対策と、実際に関電側が取った措置が異なって
いたことが27日、関係者への取材で分かった。
 事故は20日午後9時50分ごろ発生した。福井県内には同日夕から暴風警
報が出ており、関電は転倒防止のためクレーンのアーム(全長約113メート
ル)先端から伸ばしたワイヤと、地面に置いた約5トンの重りをつないで
いた。倒壊時、風は北西から吹き、クレーンの前部は風上を向いていた。
 一方、クレーンのマニュアルでは瞬間風速が毎秒10〜16メートルの場
合、カウンターウエートと呼ばれる重りが付いたクレーン後部を風上にす
るよう明記。同30メートルを超えることが予想される場合は、事前にク
レーンアームを地上に下ろしておくよう定めている。
 関電が高浜原発の構内2カ所で計測した当時の瞬間風速は毎秒約14メー
トルと同約15メートル。福井地方気象台は20日夜について陸上の最大風速
を毎秒20メートル、最大瞬間風速を同35メートルと予想していた。」

注10 日本経済新聞「高浜原発クレーン転倒、規制委が関電に口頭注意」
    2017年1月25日
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG25H6U_V20C17A1CR8000/

注11 筆者は、これらのトラブルや高浜原発の再稼働時のトラブルの分析
を、逐次、市民と科学者の内部被曝問題研究会や京都市民放射能測定所の
メーリング・リストに公表し、それらはその都度議論されてきたが、その
内容は以下の論考にまとめている。
渡辺悦司「相次ぐ再稼働作業時のトラブル―原発再稼働の
     恐ろしい危険性」
http://www.torikaesu.net/data/20160812_watanabe_saikado.pdf

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