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<木下昌明の映画の部屋 第235回>

女性を描いた2本のドキュメンタリー映画『ソニータ』『夜間もやってる保育園』

●アフガニスタンの難民少女ソニータの夢

 何年か前、地下鉄で、インドの少女の写真とともに「13歳で結婚。14歳で出産。恋は、まだ知らない。」という車内広告をよくみた覚えがある。イランの女性監督ロクサレ・ガエム・マガミの『ソニータ』を観て、それを思い出した。

 映画は、戦火のアフガニスタンからイラクに逃れ、清掃の仕事をしながらテヘラン郊外の児童保護センターに通っている16歳の難民ソニータの成長を追いかけたドキュメンタリー。

 ソニータの夢は、ラップ歌手としてライブで観客を熱狂させること。監督が「恋したことないの?」と彼女に尋ねると、そっけなく「ないわ」。

 ところがある日、母親がアフガニスタンからやってきて、彼女を連れ戻そうとする。無理やり結婚させ、その結納金を兄の結婚資金にあてるためだ。母親は「家族のために娘を倏笋衒″にするのが国のしきたり」と平然と言う。それに抗(あらが)う娘に「80歳の男だって16歳の娘と結婚できる」とうそぶく。母親を保護センターの先生に説得してもらうが、がんとして受けつけない。

 一方、ソニータは歌手になるべく音楽事務所を訪ね歩く。その彼女が自分の不条理な境遇を歌った歌がいい。倏笋蕕譴寝峅如蹐箸靴謄Ε┘妊ングドレスで、ラップにのせて訴えるのだ。胸に迫る。

 しかし、イランでは女性が歌うことを禁じている。ついにソニータは「私を買って!」と監督に懇願する。が、それはドキュメンタリー映画にとっての禁じ手となる。さあ、監督はどうするか? ソニータにカネを貸さなければ母親に連れ戻されてしまう。

 興味深かった場面は、いまだに戦争が終わらないアフガニスタンのカブール。バザールでにぎわう大通りもあるが、裏腹の爆弾テロがあり、軍用機が飛び交い、ホテルでは兵士が警戒している。「何一つ変わっていない」とソニータがつぶやく。映画は、サンダンス映画祭2016でグランプリ―を受賞。(『サンデー毎日』2017年10月22日号)

※10月21日より東京・アップリング渋谷他で公開

●歌舞伎町猝覺嵎欅蕷燹輅欅藥里燭舛諒各

 『ただいま、それぞれの居場所』など、老人介護問題に焦点を当ててきた大宮浩一監督は、今度は一転して0歳から就学前の子の保育園問題に光りを当てた。『夜間もやってる保育園』を作った。このドキュメンタリーを見て、わが子の送り迎えに明け暮れていた頃を思い起こした。

 映画の舞台は、東京・新宿歌舞伎町に程近い住宅街にある「エイビイシイ保育園」。そこで24時間態勢で90人の保育をする「肝っ玉母さん」の園長と保育士たちの奮闘ぶりが描かれている。園の特徴は、2度給食が必要な子もいて、アレルギー症状が起きないように有機野菜の農園と契約して健康に気をつけていること。保育園に隣接した学童保育の「風の子クラブ」で卒園後の児童の面倒もみたり、「ひまわり教室」を設け、落ちつきのない子らの精神面に気を配っていることなど。

 これまでは保育園に子を預ける両親の側からしか見てこなかったが、映画が園の内側をとらえることによって「リスク」覚悟の取り組みの様子が窺(うかが)い知れた。

 また、繁華街を控えているこの園は、夜働く両親にとってのかけがえのない「場所」だと分かる。深夜、自転車で迎えにくる父や母の姿と彼らの働いている様子なども追いかけていて興趣がつきない。

 日本では、約2万カ所の保育園があるが、夜間もやっているのは80カ所と少ない。映画はそれらのうちから沖縄や北海道の保育園などを訪れ、それぞれの特徴にも光を当てている。それらの園長の苦労話にひかれる。

 特に「エイビイシイ」の場合、「わたしは悪い女よ」と、若い頃、3人の子どもを捨てて駆け落ちした体験をさらりと言ってのける園長にはあぜん。しかし、こういう彼女だからこそ「肝っ玉」とよばれるのだとしみじみ。

 若い女性保育士のいう「ここは人間関係がいっぱい生まれる場所なんです」の言葉にも納得した。(『サンデー毎日』2017年10月8号)

※9月30日から東京・ポレポレ東中野にて公開中


Created by staff01. Last modified on 2017-10-23 19:28:12 Copyright: Default

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