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木下昌明の新刊『ペンとカメラ』を読んで深く生きよう!

     フクシマ陽太郎
 前作『<いのち>を食う』は重苦しい深刻な主題が中心だった。被曝地となったフクシマが冷酷に見捨てられいく不条理と理不尽を噛みしめている時、その現実を探求し暴こうとする映像を正面から論じていた。その視線と姿勢に深く共感し、やっと木下昌明という人物に出会った。

 もともとガリ版という文字から活字へと、主に文学の世界からスタートした。その長い人生の歴史は、この本の「厳歃儕親亜柔莇郤圓燭舛了纏」に詳しい。この文章自体は木下昌明の体験の深い層を理解するのに大いに役立つ。今やビデオカメラという表現手段を我が物にして、デモや運動の現場を歩いて記録し発表する表現者として変身したのだ。年齢という決まりきった固定的な観念からすると、劇的といっても良い変容である。

 その根底は「時代と生きる」と言ってもいいかもしれない。権力と手を結び、権威にひれ伏すことでは生きるとはいえない。社会の底辺に生きざるを得ない人々へのあふれんばかりのあたたかな眼差し。矛盾に満ちた煉獄とも言うべきこの世への鋭く突き刺さる眼。映画は一貫してこうした視点で鍛えた眼力によって選択されている。そして、総合芸術たる映画を多面的に伝える優れた文章技術によって、是非観ようという気に必ずさせる。遠くて観に行けなくても、例えば「月刊東京」の連載を読むだけで見た気にさせる。そんな意味で、この本を読むと本当に映画と言う芸術のすばらしさ、その価値が良くわかる。

 感動はどんな人間がどんな事態に対してするのかが最も大切だろう。このことをある程度わかったうえで、あえて言いたい。私は、『サルガド』、『大地を受け継ぐ』、『無頼無法の徒 さぶ』の3つの文章に何と言っても深い感銘を受けた。人世と現世との深淵を、深くて重い重量級の筆致で、描いているのは圧巻である。この仕事こそが前作とともに賞讃さるべきだろう。いつか映画も是非とも観てみたい。

 どうか手この本を手に取って、この3作についてだけでも、いやそのひとつだけでも読んでほしい。粛然としてそこで姿勢を正して、明日からきちんと生きようと思うはずだ。かといって他の映画を論じた文章の質がおちるわけでもない。私の好み、私のツボにはまったというのが本当のところだろう。

 『ペンとカメラ』を読んで、生きることにとって映画がこれほど重要なものだと認識が必ずや深まるとつくづく考えた。『がんを育てた男』の主人公として生きることは大層難儀なことと推察される。「ちょっとだけ無理をする」生き方を今後も貫いてほしい。

→『ペンとカメラ』績文堂出版 1800円+税
本書は7月22日のレイバー映画祭2017でも販売します。


Created by staff01. Last modified on 2017-07-06 21:05:18 Copyright: Default

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