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 第2回(2017/3/1)

人間のありようを考えさせる『AIの遺電子』

●『AI(あい)の遺電子』(山田胡瓜、秋田書店、既刊4巻、各429円)

 日本語の中にも完全に定着しているロボットという言葉――その語源は、1920年に発表されたチェコの小説家カレル・チャペックの戯曲であり、チェコ語の「賦役(robota)及びスロバキア語の「労働者(robotnik)」にちなむ造語という。この由来通り、そもそもロボットといえば、人間に代わって過酷な労働を担ってくれる従属的な犁ヽ瓩箸い性格が想定されていたと考えられる。しかし、コンピューターの飛躍的な発展により、ロボットは人工知能=AI(artificial intelligence)を持ち、人間と比肩、むしろ人間を凌駕する存在へと化しつつある。

 先頃、将棋の三浦弘行九段が対局中における将棋ソフト不正使用を疑われ、日本将棋連盟が出場停止処分を下したものの、第三者委員会の調査によって不正の証拠はないとされ、責任を取って同連盟会長らが辞任するという出来事が起きた。第一線の棋士でもソフトに敗れてしまう例が続出している昨今、連盟側に犂士の存在意義が揺らいでいる瓩箸両任蠅生じ、拙速な対応に走ったとの感は否みがたい。将棋に留まらず、囲碁、チェス、ポーカー、株取引などにおいて、AIは確実に人間を打ち破っている。

 『AIの遺電子』(「週刊少年チャンピオン」連載)は、近未来を舞台としたSF漫画短編集。タイトルは、『AI【エーアイ】の遺子』ではない。「あい」と読ませることで人間的な「愛」や「I(自我としての犹筬瓠法廚魎洌佞掘逆に「遺伝子」ではなく「遺電子」とすることにより、あくまでも犁ヽ瓩箸靴討琉銘屬鼎韻鯊任曾个靴討い襪茲Δ妨える。この世界では、人間、ヒューマノイド(人間の脳を忠実に真似たAIを持ち、頭部以外のボディは再生可能)、産業用AI(ロボット。道具として人間をサポート)が共存する。国民の一割を占めるヒューマノイドは「人権」を持っているが、その権利獲得までの険しい道のり、彼らに対する偏見・差別の残存も示唆される。

 主人公の須藤は、ヒューマノイドを診察する医師。極めて人間に近いヒューマノイドの治療は、単純な修理――部品の入れ替えやバージョン・アップなど――の域を超え、より心理的な側面に及ぶ。ヒューマノイドの特性として、特別な処置を行なわない限り、忘れることは出来ない、従って、感情や記憶にまつわる問題は、それが確実なプログラムに基づいて発生する事象であるがゆえに、一層困難な対処を必要とする(上記の出来事以前に描かれた第三巻収録の「ある棋士の悲劇」では、電脳にウイルスが感染してしまったヒューマノイド棋士を描いており、現実との対比が面白い)。

 ここで読者は、不可解を感じるかもしれない。プログラムに基づく感情とは何なのか、それならば、記憶によって感情が喚起されないように「プログラム」しておけばいいではないか、と。なぜヒューマノイドが感情を持つのか・持たねばならないのか、そのあたりが本作の今後の展開にも関わってくるのではないかと思う。同時に、そもそも人の感情とは何なのか。結局それも、成長の過程において「プログラム」されているのではないのか。その基盤となる「記憶」自体、何とも不正確な後天的「プログラム」なのではないか。ヒューマノイドという未だなお空想的な題材を描きながらも、人間自体のありようを考えさせる深い作品である。【大西赤人】

*連載「本の発見」は大西赤人(毎月1日)志真秀弘(毎月15日)で掲載します。(編集部)


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