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「旗は人の心をそそのかす」〜元軍国少女・北村小夜さんが渾身の訴え

 2月5日、東京・しごとセンターで、「日の丸・君が代」強制・処分反対総決起集会が開かれた。2003年に東京都の学校で「君が代」強制が始まってから14年。今回で13回目の集会には、120名が参加した。この間、強制と足並みをそろえるように、日本は戦争の準備を着々と進めてきた。講演の北村小夜さん(91歳・元教員/写真下)は、戦争に向かった自分の子供時代と現在を重ね合わせ、深い危機感を語った。

 北村さんは、日本が「15年戦争」と呼ばれる戦争に突入した翌年、1932年に小学校に入学した。小学校に上がる直前、第一次上海事件の「爆弾三勇士」を称える旗行列があり、それに感動した彼女は、すっかり「日の丸」が好きになってしまった。「旗は人の心をそそのかす」と北村さん。そして、「戦争には嘘がつきもの、嘘にのりやすいのも子どもだ」と言う。大正デモクラシーの余韻が残っていたその頃、大人たちは国家の嘘や扇動に慎重だったが、子どもは、そうした親や教師をまどろっこしく感じていた言う。

 1937年の「少年倶楽部」5月号には、「日本もし戦はば」という挿し絵が載っている(写真下)。正義の旗を掲げる日本兵に、ロシア・中国・アメリカの兵隊が武器を持ち立ち向かおうとしている絵だ。この絵を見て北村さんは、正義の日本が狙われていると思った。まるで現在の日本にも通用するようなこの絵、もし今の子どもたち(多分大人も)が見たら同じような反応をするに違いない。

 「戦争するには、国民の逆らわない心と丈夫な体が必要」と北村さんは言う。女学校入試は、試験がなくなり面接と体力テストだけだった。ラジオ体操は、昭和天皇の即位式(1928年)を機に始まり、1930年からは、健康優良児日本一の制度が始まった。今の学校でも、体力テストは学力テストと並んで、子どもたちを競争にまきこんでいる。

 女学校の4年間、北村さんは、スカートをほとんど穿かずもんぺ姿だった。あこがれのスカートだったが穿きたいとは思わなかった。もんぺを穿いていると自分が強くなった気がした。「誰に強制されたわけでもないが、強制されていた」。

 1932年は、東北の飢饉、満州国の建国宣言、第一次上海事件、5・15事件などで日本が大きく揺れていた。この年のロサンゼルスオリンピックを、国やメディアは国威高揚・愛国心作りに最大限に利用した。「少年倶楽部」は特集を組み、たくさんの写真を載せた。選手団の入場シーンには、「皆さん、この写真をじっと見つめていると、瞼が熱くなってきますね。」といった文章が添えられた。

 この号には、詩人のサトウ・ハチローの詩も掲載されていた。小学校1年の北村さんはお兄さんの朗読する詩に感動し、みんなと一緒に「君が代」を歌った。

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1937年7月、ロサンゼルスオリンピック陸上三段跳びの場面の放送を聞きながら(『』内は現地からのアナウンス)
「『一等南部忠平君(日本)記録は15メートル72、オリンピック並びに世界記録。二等スヴェンソン・・・・』
 もうどうでもいい、スヴェンソンも何もあるものか、南部が勝ったのだ、勝ったのだ。
『いま、するするとマスト高く日章旗があがりました』
バンザイ、僕だって唄うぞ君が代を、君が代を。
・・・
      「南部の優勝を聞く」サトウ・ハチロー より
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 昨年のリオ五輪の熱狂を、思わず彷彿とさせられた。昔も今も、メディアと国家が一体となったとき、民衆は簡単に国威発揚、愛国心へと駆り立てられる。

 北村さんは、最後に「子どもたちは、『君が代』を、入学式・卒業式、音楽の時間に歌いそれが当たり前になっている。大人たちは、この嘘の蔓延するする世の中で、何倍も本当のことを言い続けなければならない」と力強く結んだ。

 現場からは、高校の「不起立」処分、河原井・根津裁判最高裁勝利判決、オリンピック教育反対のチラシまき、大阪の裁判闘争について報告があった。また、学校現場と自衛隊、共謀罪、東京オリンピック反対など様々な闘いの報告もされた。【報告 佐々木有美 /写真 佐藤茂美】


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