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木下昌明の映画批評 : アンジェイ・ワイダ監督大往生 | ||||||
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『灰とダイヤモンド』など34作品―アンジェイ・ワイダ監督大往生ポーランドの映画監督アンジェイ・ワイダが10月9日、死去した。享年90。大往生といえる。久しぶりに『灰とダイヤモンド』(1958年)のビデオを見た。戦後の映画黄金時代、日本でも当時の政治状況と重ねてさまざまな人がこの映画を論じた。 ワイダは生涯34本の長編映画をつくり、その多くは自国の複雑な歴史や政治に深く根ざしたものだった。初期の“抵抗3部作”といわれた『世代』(55年)、『地下水道』(57年)、『灰とダイヤモンド』をはじめ『約束の土地』(75年)、『大理石の男』(77年)、『鉄の男』(81年)など、変転するポーランドの国情と不可分の関係にあった。“抵抗3部作”いっても、内実は反ナチ抵抗一辺倒ではなく、作品によって抵抗の主体が微妙にずれていった。 『世代』の主人公は共産党の青年だったが、『地下水道』では非共産の国内軍の青年たち、『灰とダイヤモンド』ではロンドン亡命派のテロリスト青年といった具合に。そこには自国とソ連との尋常ならざる歴史があり、ワイダの人生ともからみ合っていた。 大戦中、彼の父は大尉で、スターリンの秘密警察によって2万人の将校らとともにカティンの森で虐殺された。そのことを彼は『地下水道』の受賞でカンヌ映画祭に参加した折に知らされ、以来、社会主義を否定する方向に舵を切る。それを暗示的に表現したのが『灰とダイヤモンド』(写真)だ。 この映画のマチェク青年は、一夜の恋をし、苦悩しながら、共産党書記を暗殺する。その果てに自らもゴミ捨て場で悶えながら死んでいく。この死は、当時、日本の青年の共感を呼んだ。が、テロリストの当然の末路とみるか、生き場所を失った者の悲しみとみるかに見方はわかれた。どちらともとれるところに、虐殺された父への思いと、社会主義をめざす社会を描かねばならなかったワイダの内心の葛藤があった。それが優れた芸術作品となって結晶した。(木下昌明・『サンデー毎日』2016年11月6日号) 〔追 記〕『灰とダイヤモンド』の舞台はポーランドの地方都市で、そこのホテルを中心に繰りひろげる24時間の群像劇です。その群像の対立や争いをとおして、当時のポーランド社会の縮図が鮮やかに浮かび上がってきます。また、主人公に扮したチブルスキーが素晴らしかった。わたしの青春時代の傑作でした。なお、ワイダに関心のある方は、拙著『映画は自転車にのって』(績文堂)の「アンジェイ・ワイダがみたポーランド史」にくわしくふれているので、よんでみて下さい。 Created by staff01. Last modified on 2016-10-31 15:59:34 Copyright: Default |