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辺野古「和解」の神髄・安倍政権の狙いは「第9項」

2016年03月05日 | 沖縄・翁長・辺野古

   

 4日安倍政権が同意した辺野古訴訟の「和解」なるものは、「和解」などではけっしてなく、一片の評価にも値しません。それどころか、1日のブログでも書いたように、きわめて重大な事態を招くものであり、絶対に容認できません。

 各種メディアも共通に指摘しているように、それが「選挙目当てのポーズ」(新藤宗幸千葉大名誉教授、5日付琉球新報)であることは明白です。
 「辺野古」を参院選や県議選の争点から外し、「普天間の危険性除去」だけを前面に押し出す戦術は、まさに先の宜野湾市長選の踏襲であり、2匹目のドジョウを狙うものです。
 また、重要な政治課題を前に「辺野古休戦期間」をつくることは、昨年夏、戦争法案強行の前に行った「集中協議期間」と同じ手法です。まさに「非常に姑息」(新藤氏)です。

 しかし、今回の「和解」の重要な問題点はそれだけではありません。いやむしろ、最大のポイントはほかの所にあります。
 それは、「和解条項」(10項目)の第9項です。

 「9 原告(国引用者)および利害関係人(沖縄防衛局)と被告(沖縄県)は、是正の指示の取り消し訴訟判決確定後は、直ちに、同判決に従い、同主文およびそれを導く理由の趣旨に沿った手続きを実施するとともに、その後も同趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約する」(5日付琉球新報より)

 これはいったい何を意味しているでしょうか。
  現在争われている3つの「辺野古訴訟」は、すべて、「埋め立て承認取り消し」をめぐるものです。「和解」後「協議」しても合意しない場合は、国から県に 「是正の指示」を出し、やがて新たな裁判(「是正の指示の取消訴訟」)まで行くのは折り込みずみ。その判決には国も県も従う、というのが第9項の前段で す。

 問題は後段です。「その後も同趣旨に従って互いに協力して誠実に対応することを相互に確約する」。
 これは即ち、今回の「取り消し」訴訟だけでなく、辺野古新基地建設をめぐって今後予想されるあらゆる「国と県の争い」は、今回の判決の「主文およびそれを導く理由の趣旨」に沿って処理するという約束です。

 ではその「主文およびそれを導く理由の趣旨」とは何か。それは多見谷寿郎裁判長が提示した「代執行訴訟和解勧告文」(1月29日提示、5日付琉球新報より)を見れば明白です。

 「現在は、沖縄対日本という対立の構図になっている。それは、原因についてどちらがいい悪いという問題以前に、そうなってはいけないという意味で双方ともに反省すべきである
 「今後も裁判で争うとすると、仮に本件訴訟で国が勝ったとしても、さらに今後、埋立承認の撤回がされたり、設計変更に伴う変更承認が必要となったりすることが予想され、延々と法廷闘争が続く可能性があり、それらでも勝ち続ける保証はない。むしろ、後者(「撤回」「設計変更」―引用者)については、知事の広範な裁量が認められて敗訴するリスクは高い

  つまり、「取り消し」訴訟のあと、翁長知事がほんとうに「あらゆる手法」を使う気があれば、「撤回」や「工事変更不承認」などが行われ、そのつど裁判にな る。それは国が負ける公算が大きい。だから、今回の判決で「訴訟合戦」は終わりにしよう―これこそが「和解」の神髄であり、それを明記したのが第9項なの です。

 だからこそ安倍首相は4日の記者会見で、「現状のように国と沖縄県双方が延々と訴訟合戦を繰り広げている・・・そんなことは誰も望んでいない、との裁判所の意向に沿って和解を決断した」(5日付琉球新報)と述べたのです。

  多見谷裁判長が、「承認取り消し」に否定的、つまり新たな裁判では「国勝訴」の判決を下すのはほとんど間違いありません。県側が要求した環境や軍事専門家 の証人申請を却下したのもその表れで、「翁長雄志知事の承認取り消しの適法性に対する関心の低さの表れとも見える。不適法との心証を抱いていたのかもしれ ない」(5日付琉球新報社説)といわれるゆえんです。

 そもそも多見谷裁判長がどのような判決を下そうが、最高裁までいけば「国勝訴」は間違いないというのが安倍政権の判断です。だからこそ、「辺野古が唯一」と公言してはばからないのです。

 「政府関係者は和解受け入れの意味をこう語る。『急がば回れ、ということだ』」(5日付朝日新聞)
 「自民党沖縄県連幹事長の具志孝助県議は『訴訟合戦が延々と続くよりは、結果として(移設への)早道かもしれない』と指摘」(同)

 こんなとんでもない「和解」を、翁長氏は唯々諾々と合意した、いいえ逆に自ら積極的に求めたのです。

 翁長氏は4日の会見で、「あらゆる手法で、基地を造らせないということはこれからも信念を持ってやっていきたい」と述べました。翁長氏は第9項の意味は分かっているはずです。水面下での政府との折衝でその点は十分意思疎通しているでしょう。
 今回の「和解」によって「あらゆる手法」が封印されることを承知のうえで、むしろそれを求めていながら、「これからも・・・」と言う。これほど県民・国民を欺くものはありません。

*ブログ「アリの一言」より


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