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論理破綻の「戦争法案」国会審議〜安保法制「地方参考人会」で一層明らかに

                  西中誠一郎

 安保法制関連法案の衆議院採決や、維新や民主党の「対案」提出が取りざたされる中、7月6日、衆議院「安保法制」特別委員会の「地方参考人会」が沖縄と埼玉で開催された。

 埼玉会場の最寄り駅の大宮駅前には雨の中、「戦争法案」の廃案と安倍政権の退陣を求める市民が集まった。厳重な警備体制が敷かれた会場のホテルの中で公聴会が開始された。

 衆院特別委員会の派遣議員団は自民5人、民主2人、維新1人、公明1人、共産1人の計10人。与野党の推薦を受けた5人の参考人が各15分意見陳述を行った。

◆埼玉県弁護士会会長の石河秀夫氏は「明白に憲法違反で直ちに廃案にすべき」。

 同弁護士会は5月に、集団的自衛権行使容認の違憲な閣議決定の撤回を求め、安全保障法制の制定に反対する総会決議を採択している。全国52箇所全ての弁護士会が、同様の意見表明を行っている。埼玉県内では5月に一万人を越える反対集会が行われ、同弁護士会も後援した。

 「自衛隊が海外に武器を携帯し、そこで戦闘行為に加担することは、憲法が根本的に排除している武力行使そのもの」「歴代内閣が否定してきた集団的自衛権の行使容認は、憲法解釈の限界を越える。明らかに憲法違反で立憲主義に反する」「今後、違憲訴訟が全国各地で起こされることは必至。違憲無効な法律で、海外に派遣された自衛隊員が民間人を殺傷した場合に、どのような法律関係になるのかも、未だ検討されていない」。

 石河氏は最後に「国民の理解がえられないまま強行採決された場合、全国の弁護士は民主主義と立憲主義を守るために徹底的に闘う」と締め括った。

◆続いて、弁護士で東海大学法科大学院特任教授の落合洋司氏。 「憲法は国民の最高法規。安易に解釈を変えることは問題が極めて大きい。集団的自衛権の行使という解釈をするのであれば、憲法改正を行わなければならない」。

 落合氏は、「存立危機事態」の大半が従来の個別的自衛権で対応できることや、「重要影響事態」という地理的制約を排した新しい概念や、多国籍軍による武力行使との一体化を意味する「後方支援活動」の恒久法制定についても、根本的な疑問を呈した。

◆「明日の自由を守る若手弁護士会」の倉持麟太郎氏は、国会審議を継続的にウオッチしてきた。審議内容を精査するだけでなく、町中で市民が憲法論議する「憲法カフェ」なども開催している。

 「本案は切れ目のない違憲法案。今回の安保法制審議での政府の説明、答弁があまりに不合理、不誠実、不十分で、民主的正当性が欠如している。我が国の自衛がどうあるべきかという価値判断以前に、政府の説明は論理的に破綻している」とし、具体的に審議内容の問題点を列挙した。「国民はすでに権力者のパントマイムに気づいている。為政者は『日本を取り戻す』前に、自律した政治を取り戻すべき。現政権にもまだ人間の尊厳への敬意と、知性への良心が残っていることを願う」と訴えた。

◆続いて与党推薦の参考人。

 埼玉県商工会議所連合会会長で、埼玉県防衛協会会長の佐伯鋼兵氏。氏は、中国の海洋進出や尖閣諸島問題、北朝鮮の核兵器開発やミサイル配備など、周辺国の軍事情勢に懸念を示した上で「今後日本が平和国家であるためにも集団的自衛権が軍事攻撃の抑止力として必要だと思う」と述べた。しかし「国民が知らないうちに、集団的自衛権が暴走するという不安があることも事実。与野党の国会審議が非常に分かりづらいという感じがする。埼玉県上尾市議会でも、国会審議について、謙虚で丁寧な説明を求めるという意見書を全会一致で採択した」と同法案の慎重審議を求めた。

◆参考人の最後に、慶応大学法学部教授で外交史が専門の細谷雄一氏。同氏は第一次安倍内閣で2007年に設置された首相の私的諮問機関「安保法制懇談会」のメンバー。同懇談会は昨年5月に「集団的自衛権は認められるべき」という報告書を内閣に提出し、それに基づき安倍政権は昨年7月1日に「集団的自衛権容認」の閣議決定を行った。

 細谷氏は「国際政治、外交史の専門家として残念なのは、国会審議の多くは技術的な法律論が中心で、『平和安全保障法制』がもつ意味と効果について、全体像の検討が、今までほとんど行われていない」と国会審議の内容に注文を付けた。その上で「国会周辺で多くの市民が『日本を再び戦争する国にするな』『平和を守れ』と声を上げていますが、私も同じ意見」と付け加えた。「しかし、他国に日本を侵略させないために、国際社会で戦争が起きないようにするためには、国連憲章で軍事的な制裁措置があるように、集団防衛や集団安全保障が重要。かつての冷戦時代とは異なり、大規模な侵略ではなく、むしろ戦時と平時の区別がつかないような曖昧な状況が起きている」とし、そのような状況に対処するために集団的自衛権容認の立場を示した。

 しかし「従来の憲法解釈や内閣法制局の見解の枠組みから考えると、わかりにくい法案なので、より丁寧な国会審議が必要」と注文をつけた。

 続いて5人の参考人に対して衆院特別委員会の派遣議員団から質疑が行われた。結局公聴会で明らかになったのは、集団的自衛権の必要性の前提がバラバラか、そもそも安保法制を全面的に見直す必然性が存在しないことや、国会審議が極めて分かり難いので、丁寧に審議して、分かりやすく国民に説明すべきということだけだった。終了後の国会議員団による記者会見でも、野党の対案提出や、採決ありきの与党の審議日程に関する質問ばかりだった。

 公聴会の傍聴者に感想を聞いた。

「国会審議が深まっていないことを改めて実感しました。公聴会が採決のアリバイ作りになってしまっては意味がない。自分は民主党の関係で傍聴しましたが、政党と関係がない市民ももっと広く傍聴できたほうがよかった。さいたま市議会は、慎重審議という意見書を全会一致で出しています。憲法との関係や、法律の中味自身も議論されていないことが多い。集団的自衛権が必要だという人からも、もっと幅の広い議論が必要だと思います」(さいたま市議会議員•高柳俊哉さん)

「法律の必要性を、今までの報道以上に感じることはできませんでした。5人の参考人に共通していたのは、賛否を問わず、国民ひとりひとりの理解をもっと深める必要性があるということ。もっと慎重に審議した上で、どうしてもこの法案が必要ならば、国民が納得する説明を安倍首相自身からして頂きたい。法案の前提条件が良く分からないし、『こういう事態が起こりうる』という説明をしても現実味のない内容ばかり。今日の参考人には安保法制懇のメンバーもいたが、『先に集団的自衛権の必要性ありき』で法案審議が始まっていることははっきりしました。しかし、だから必要とは感じられなかった。中国や北朝鮮のことも例に出たが、この数年の間に、安保体制をめぐる危機感が、特段増えたという説明は納得できません」(「埼玉県平和運動センター」議長:持田明彦さん)

 「5人の意見が一致していたのは、国民の意見を聞けということにつきます。来週の中央公聴会と衆議院採決というスケジュールありきの報道がされていますが、私たちは、廃案になるまで国会審議を引き延ばしていく。将来の子どもたちに明るい未来と平和を残すために、戦争法案を廃案にし、安倍政権を退陣させる闘いを続けましょう」。持田さんは会場の外で待っていた約130人の市民に訴えた。

 公聴会後、数日間色々な動きがあった。維新と民主党が共同で対案を提出した。一方安倍首相は、自民党のインターネット放送で「友人のスガ君の家に強盗が入った」とか「安倍君と麻生君が不良に襲われた」などという意味不明の説明をし、与党は国会で追求された。「国民への理解を深めるために」と称して、全く誠実さを欠いたこのなめ切った態度は、それだけでも首相辞任に値する。「戦争法案」の廃案と安倍政権退陣へのカウントダウンが始まった。


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