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LNJ Logo 根津公子の都教委傍聴記(10/22): 「あの学校の生徒は日ごろから素行がよくない」ならば、体罰は容認?!
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●根津公子の都教委傍聴記(2015/10/22)
 これまでの傍聴報告にはすべての議題、報告を載せてきたが、今回は一つに焦点を当てて報告したい。今後、このような報告も適宜入れていきたいと考えている。

「あの学校の生徒は日ごろから素行がよくない」ならば、体罰は容認?!

 報告3件のうちの1件、「都民の声(教育・文化)について〔平成27年度上半期(4〜9月)〕」について。

 寄せられた「都民からの声」〔苦情や意見〕は1276件。このうち最も多かったのが、今回も「体罰・不適切な指導等に関するもの」で217件。これに関して資料には、5月22日に起きた一つの「体罰・不適切な指導」に対して寄せられた苦情・意見の内容として、2つの相反する意見が紹介されている。

A「生徒たちを都庁前広場で正座させるという指導を、非常に残念に思う。口頭での注意など、他の指導はできなかったのか。公衆の面前で辱めるような、肉体的苦痛を伴うような指導は不適切である。」

B「集合時間に遅刻した生徒たちを都庁前広場で正座させた先生が、処分されるようだというニュースを見た。悪いのは遅刻してきた生徒たちで、先生は当然の指導をしただけだから処分しないでほしい。」

 この報告について遠藤教育委員は、「AとBの割合を教えてほしい。私はこの学校の近くに住んでいるので、『あの学校の生徒は日ごろから素行が悪い。この件でも悪いのは遅刻した生徒たちだ』と、地元住民は言っている。」〔要旨〕と、自身の意見は述べずに、それだけを発言した。同委員はいったい何を目的として、地元住民の声を紹介したのか。自分の意見の代替として紹介したのかと勘繰りたくもなった。もしも遠藤教育委員に、体罰容認のBの意見に異論があるのならば、いつものように持論を展開したであろうから。

 山口香教育委員も乙武教育委員も、そして先月就任した宮崎緑教育委員も、ほかのことでは相当数の発言をしているのに、遠藤教育委員のこの発言に対してコミットしなかった。それはなぜなのか、とも思った。

 私は体罰に対する教育委員の認識は甘いと感じてきた。それは、≪体罰についての実態把握≫を議題とした2013年4月11日の定例会での竹花〔先月退任〕発言をめぐってのことによる。竹花教育委員〔当時〕は、「(部活動での)死ね、殺す、出て行け、という強い発言、…今ぐらいのことは精査しなくていい。こんなのは指導の範疇だ」(趣旨)と発言した。体罰根絶に向けての議題にもかかわらず、体に染みついた体罰容認の無自覚過ぎる発言にあまりに驚き、閉会してすぐに、私は一緒に傍聴していた友人3人とその発言の事実を確認し、後日、教育長や教育委員、担当所管あてに質問書を提出した。しかし、無視され続けた。同席していたほかの教育委員がたしなめるとかフォローするとか、自身の意見を述べるとかのアクションも起こさなかったのは、竹花委員の発言を問題視しなかったということだろうと受け取り、体罰に対する教育委員の認識の甘さをと感じたのだ。私たちには聞こえた竹花発言は議事録にはなく、削除したとしか考えられない(議事録は、文字になった段階で、各教育委員が確認・承認する手続きを経て正式な議事録となる)。

 だから、今日の遠藤教育委員の発言と、それに対するほかの教育委員たちの無反応ぶりに、「教育委員の認識は、素行の悪い生徒の指導では体罰も容認?」との疑念を持たざるを得なかった。

 なお、寄せられた上記Aの意見は7件、Bの意見は100件だという。体罰必要なる意見が100件とは、どんな人たちが提出しているのだろう?正座させた教員は戒告処分とされたのだから、都教委はこの教員の行為を体罰、あるいは不適切な指導と認識したのだ。

 私たちが「君が代不起立処分をするな」と意見を出すと、都教委は「適切に対応しています」などという全く聞く耳を持たない「回答」を出してくる。さて、このBの意見100件の人たちに対し都教委は、なんと回答したのだろうか。体罰は暴力であって指導に非ず、としただろうか。

◇請願や陳情等で

 「都民の声」のほかに、請願が26件あった。「中学校歴史・公民教科書採択について」が25件、「高校日本史教科書採択について」が1件。いずれも、育鵬社版を採択するな、実教出版高校日本史の学校選定禁止をやめろという趣旨の請願である。都教委は請願を教育委員会定例会にかけることなく、請願者に対し、「都教委は都立中学校等で使用する教科書の採択に当たり……最も適切な教科書を採択しております。」などという通知(回答)を送ってことを済ませている。

 都教委は、一度検討したことのある請願については議題とせず、事務方で「回答」することにしている。「日の丸・君が代」や教科書採択についての請願は10数年間、出され続けているのに、2年目からは議題にされては来なかったということ。請願権を事実上否定していることに、現教育委員は黙っていていいのか。

 陳情等〔団体要請〕では、「国旗掲揚・国歌斉唱と教員の処分について」が52件。処分反対・撤回とともに、再発防止研修の即時中止を求めた内容。教科書採択については請願のほかに陳情に分類されたものも11件あった。陳情については、回答要旨は載せていない。

 陳情等では、「防災訓練について」も3件上がっていた。防災訓練についての陳情内容には、「『平成27年度立川市合同総合防災訓練』に対する協力内容を速やかに公表してください。また、米軍、自衛隊が参加する『平成27年度立川市合同総合防災訓練』への児童・生徒の参加を中止してください。」と記載されている。

 さて、請願・要請に対して教育委員一人ひとりの見解をぜひ、聞かせてほしかった。それは公開が原則の教育委員会定例会に出席する教育委員の責務だと思うのだが、今回も誰一人発言はしなかった。ほかの議題では全教育委員が多弁かつ能弁でありながら、「都教委の考えと異なる」内容については、まるでかん口令が敷かれているようだった。

 中学校歴史・公民教科書を採択した理由を都教委のホームページに掲載する際に、一部の教育委員から「社会的見解が分かれている教科書の採択には懸念がある」との反対意見があり、それを掲載させた教育委員が存在したことには多少の希望を感じた〔10月2日付け東京新聞〕が、その姿勢を公開の定例会の場で貫いてほしいものだ。

 教育委員会定例会は「都民に開かれた東京都教育委員会」のアリバイ作りと化しており、この数年ますますそれが進行している。良心を持った教育委員であるならば、傍聴者の前で意見を述べ、議論を展開してもらいたい。


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