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沈黙と祈りと労働〜奈良原一蘯命薪検峅国」を観て

                  佐々木有美

 奈良原一高(ならはらいっこう)の写真展「王国」が国立近代美術館(東京・竹橋)で開かれている。奈良原についてまったく知らなかったが、偶然ネットで見つけた情報をたよりに写真展に足を運んだ。ネットに掲載されていた、両眼を指で閉じた修道僧の写真がひどく印象的だったからだ(左の写真)。奈良原は、1931年生まれで東松照明ら戦後世代と呼ばれる写真家の一人だ。1956年に個展「人間の土地」で鮮烈なデビューを飾り、1958年の「王国」で写真家としての評価を確立したといわれる。

 「王国」は、北海道のトラピスト男子修道院と和歌山の女性刑務所を撮影している。修道僧と囚人、隔離された空間の中で生きる人間の姿が見るものにさまざまな思いを抱かせる。特にわたしは修道院を対象にした「沈黙の園」に心惹かれた。この修道院は特に戒律が厳しく、室内ではフードをかぶり、祈りや勉学のときは、左右にしきりのある椅子に座る。他者とは言葉をかわさないのが原則だ。壁にかけられた額には「人に棄てらるヽを厭はされ 神汝を受け容け入れ給はん」の文字が。神と生きる生活に、ふとよぎる孤独の影もカメラは見逃さない。

 沈黙と祈りと労働に象徴される修道院の生活は、厳しさと共にどこか安らぎを感じさせる。自給自足で、彼らの履く木靴も修道院内で作られている。ゆったりと木靴の採寸をする僧の姿が窓越しに見える。牧場には牛や羊が放たれ、修道僧は草刈に励んでいる。必要とされるものを作るのが労働だということに、あらためて気づかされる。

 ここには、消費社会とはまったく逆の世界がよこたわっている。ことば(情報)もモノもあふれかえるが、満たされることのないわたしたち。果てしない欲望の喚起。たえず消費を強制され、それにふりまわされる毎日。心のやすらぎなどどうして得られるだろう。ことばの無い世界、モノのない世界の豊かさ、すがすがしさを奈良原一高の世界が伝える。

 *写真は「王国」の“沈黙の園”より。奈良原一高展は3月1日(日)まで、東京竹橋・国立近代美術館で開催中  


Created by staff01. Last modified on 2015-02-16 14:31:15 Copyright: Default

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