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生きているのに遺作展〜福島菊次郎写真展を観て

                   笠原眞弓

「殺すな!殺さるな! 福島菊次郎全写真展/講演会 93歳のラストメッセージ」。死んでいないのに「遺作展」へ行く。

《生きているのに遺作展》

多摩センターは、遠い。でも行かなくっちゃ。福島菊次郎さんにお会いしたい。13時からの講演会に、10時から整理券を配る。写真展を観たいし、10時で73番という人気に圧倒されながら、展覧会場に入る。最初のパネルに「遺作展」とあって、意表を突かれる。

93歳か、それもいいかと中に入ると、なんとご本人が今日の聞き手のアーサー ビナードさんに写真の説明をしている。彼は死にそうではなく、お元気だった。

原爆症に苦しむ中村杉松さんの写真の前で、ビナードさんは惨めさより力強さを感じる。戸惑う菊次郎さんに、「それは菊次郎さんのレンズを通して、人間の持つ生きるが引き出されたのではないか」と言葉を継ぐと、納得顔となる。苦しみでのたうちまわる中村さん の姿に、人間の究極の「生きる力」を感じ取る詩人に感服する。

自衛隊の写真の前では、たかが一介のフリーのカメラマンに騙される方が間抜けだと、菊次郎さんは持論を述べていた。

一連の学生運動の凄まじい写真。学生運動の、東大3代・8代総長の濱尾新像の下で、報道人に混じって腕組をしている大学職員たち。その前で彼は、この写真を撮りたかったと言う。「学生たちは、大学自治を求めて闘っているのに、当の大学側は、警察を導入して根底から自治を壊し、高見の見物をしている。

教授の中には、腕組みをしながら、爐笋辰氾曚蕕鯆匹そ个擦伸瓩噺世辰燭里發い拭廚函∪爾卜呂こもる。またこうも言う。「僕は権力とは、こうなのだということを撮っているんです。でも僕自身は、その権力に勝てない。国の持つ力は強すぎるから」。「報道写真」は、国家権力に勝てないのか……。そんなことは認めたくない。

瀬戸内の孤島では、様々な形での戦争被害があった。親をなくした子どもも多く、その写真の前で、こんな小さい子どもが、大人の言葉遣いで話す痛々しさを語る。「彼らは、大きくなると、自衛官になるんです。こうして、戦争が再生産される。それは、日本に限っ たことではないのです」と、悲しい事実を私たちに、気付かせる。

《伝えたいから被写体に迫る》

彼自身がどこにでも入り込んで、撮っていたからか、会場内の撮影は、全てOK。思わず何枚もシャッターを押している自分がいた。何をしているのか?と思いつつ。

2年前の横浜での展覧会では、原爆や三里塚に圧倒されて、ひっそり感のあった女性解放の写真が今回は、ガンガン主張してくる。ウーマンリブ、フリーセックをテーマにした写真の中でも、中絶がショクだった。よくここまで撮らせたとも思う。全部がモノクロの中で、その瞬間をカラーで表したのはなぜか。思いめぐらせながら最終章近くに飛び込んできた、上関祝島の髪が風に煽らたおばあさんの眼光にたじろぐ。

その隣では、鶴がくる村、山口県熊毛町八代村の写真にホッとする。しかしそれは、単なる自然の風景ではない。大気汚染であり、放射能、CO2、ダイオキシンであり、地球温暖化の問題提起である。何を撮っても、報道写真、社会問題なのである。

《93歳のラストメッセージ》

午後からの講演は、アーサー・ビナードさんが聞き手のはずなのに、補聴器をつけた彼は、聞こえているのかいないのか、はじめから終いまでマイペース。挙げ句の果てに、「あと2冊の本を書いて死にたい。来年もまた来る」と宣言。オッと、「遺作展」「ラストメッセージ」だったのでは?

主催者の女性は、「遺作展は2007年(?メモ取りそこねたので)から何回かしています。それで、今回は「93歳」とつけました。94歳の……と続けます」と。

ご本人は、至ってお元気で、写真の強さ、鋭さとは違う、なんとなくお茶目で、相手の気を許させる雰囲気がある。多分、それが観閲式や武器工場の写真の前で、語った「何しろこういう現実は伝えなければならない」という、信念を射抜き通す結果につながったのだ と思う。

写真展は混んではいたが、見られないというほどのこともなく、気持ちよく集中することができたが、2240点を越す点数に、いささか疲れた。なお、講演会には、たくさんのレイバーネットの会員のお顔が見えた。


Created by staff01. Last modified on 2014-12-28 11:09:15 Copyright: Default

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