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LNJ Logo 松本昌次のいま、言わねばならないこと〜「護憲と反原発」未来に進む両輪
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第19回 2014.10.1 松本昌次(編集者・影書房)

「護憲と反原発」未来に進む両輪
 〜ある日の「朝日」の紙面から〜

 ある日とは、拙稿にとりかかった9月29日である。27日におこった御嶽山の噴火の記事が、つづいて第1面トップを写真とともに大きく占めるのは当然で、火山ガスなどに阻まれ救助が難航するなか、「死亡4人心肺停止27人」と白ヌキの見出しがある。まだ救助されない人もあり、楽しかりし登山が一瞬にして大災害に転じたのである。傷ましい思いである。

 その記事の隣りには、土井たか子さんが、20日に肺炎のため85歳で死去していたことが8段ヌキで報じられていた。ほかに早野透氏の評伝、社会面では半ページをさいて「歩く憲法9条」と呼ばれた土井さんの政治活動の歩みが辿られ、「天声人語」子も、護憲の原点としての土井さんの徹底した反戦・厭戦の立場を讃えた。1970年代前半、土井さんの秘書というより最も信頼する友人として30年余寄り添い、身内だけの葬儀にもただ一人出席した五島昌子さんや、富山妙子さん、そして今は亡き松井やよりさんたちが立ち上げた「アジアの女たちの会」に、わたしは男だったが編集者として協力し、当時編集をしていた雑誌「未来」に書いてもらったりした。それらの打合わせのため、土井さんの衆議院議員会館の一室に自由に出入りしていたが、時折現われる土井さんが、「やあ、やってますね」と、はじけるような笑顔とともに激励してくれたひと齣などを忘れることができない。

 その土井さんの死を悼み、遺志をつぐかのように、「憲法9条にノーベル平和賞を」の全5段の意見広告が掲載されている。これは神奈川県の主婦・鷹巣直美さんが、「憲法9条を保持し続けた『日本国民』を受賞者に」と、ノーベル賞選考委員会に提案したことに端を発するもので、主として全国の弁護士会などを中心にした署名運動の呼びかけである。どう考えても平和と相反する佐藤栄作元首相や、オバマ大統領に平和賞を贈るようなトンチンカンな選考もあるが、それはさておき、憲法9条こそが人類が到達した最高の規範であることを、何とかして世界に知らしめたいものだ。

 護憲と反原発、これこそ、わたしたちが未来に進むための両輪だが、反原発を主軸とする「プロメテウスの罠」の長期連載は、なお続いている。9月26日からはじまった「妻よ」(本田雅和執筆)は、福島第一原発事故で避難を強制され、うつ状態になり、2011年7月1日、焼身自殺した渡辺はま子さんをめぐる記録である。夫の幹夫さんは、妻の死と原発事故との因果関係を提訴、東電はそれを認めなかったが、先月の8月26日、福島地裁は、自殺の原因は原発事故であると判決、原告は全面勝訴したのである。しかしもはや命はかえらない。かつて東電側が、はま子さんの死に対し、「個体側のぜい弱性」にあると主張したことを知って愕然としたことがある。3.11以後、福島での自殺者は56人、退避生活を強いられている人は13万人にのぼるという。

 社会面には、原発のない町に戻そうと奮闘する宮城県女川町議の阿部美紀子さんが、半ページほどの紙面で紹介されている。水俣病問題でチッソ本社前で座りこんだこともある阿部さんは、経済優先で人間が軽んじられているのは原発も同じと語る。そして原発のお金なしで生きられる町にするためには、原発が止まっている今こそ好機と考えているという。彼女は回船問屋や酒店を両親と営みながら、一男四女の母でもある。国会議員たちよ、この一人の女性町議に、政治とは何かを学べといいたい。「声」欄の投書(牧師・後平一氏)で、小学校6年生の社会科教科書に9条の文字と条文が見あたらないことが、危機感とともに訴えられていることも付記しよう。暗然たる思いとともに。


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