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LNJ Logo 「裁判所前の男」大高正二さん第1回控訴審〜人権無視・裁判所とのたたかい
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「裁判所前の男」こと大高正二さん(写真)の第1回控訴審が、5月15日午後、東京高裁429号法廷(警備法廷)で行われた。昨年2012年9月19日の一審で有罪判決(1年2ヶ月の実刑)以来8ヶ月ぶりの法廷だった。その間、大高さんは東京拘置所に勾留されている。弁護側は勾留取り消しを請求をしているが認められず、このままでは実刑の刑期を越す事態も考えられる。

 この事件は、大高さんがカメラ付きケータイを持っているのを理由に裁判所の
建物から強制退去させられた時に、門扉のところで大高さんが守衛をなぐってケ
ガをさせたという「公務執行・傷害罪」。しかし、目撃証人は裁判所職員のみ。
ケガをした守衛も「こぶができたがすぐ引いた」というもので、医者のカルテも
残っていない杜撰なものだった。大高さんは「殴っていない。やられたのはこち
らのほう」と主張してきた。しかし有罪になり、もう1年以上も「牢屋」に入れ
られているのだ。

 控訴審の裁判官は、井上弘道(裁判長)・山田敏彦・中川卓久の三人。弁護側
は、長谷川・萩尾・大口・武村の強力弁護団、検察側は一人だけ来ていた。あと
手錠をつけられて入ってきた被告・大高正二さん。ちょっとやせた気もしたが元
気そうだった。

 この日は控訴趣意書の朗読で、弁護側が一審のデタラメと裁判所の「ねつ造」
ぶりを、あますところなく暴露した。「ねつ造」の事実は多々あるが、一番象徴
的なのは、起訴時点では守衛が「強く殴られて5センチのこぶ(皮下血腫)がで
きた」と言っていたのが、これが、弁護側の反論で大きく崩れてしまったことで
ある。つまり、守衛を診察した医者も一審の証人尋問で「X線でもCTスキャンで
も触診でも“こぶ(皮下血腫)”を確認できなかったが、本人が痛いというので、頸椎損傷・外傷性頭部打撲の診断書を書いた」といういいかげんなものであることが判明している。

 そこで困ったのが裁判所(一審・多和田裁判長)だったに違いない。「こぶ」
の証拠が確定できないので、一審判決ではケガの内容を「こぶ(皮下血腫)」の
認定ではなく、より軽微な「発赤腫脹」(赤いはれ)にすり替えて判決を下した
のだ。なんとしても有罪にしたい裁判所の意思が感じられる。

 控訴審では、この問題をはじめ、事件の発端となった裁判所の異常な管理態勢
など、多岐にわたって裁判所の「犯罪」を追及するものになるだろう。この日、
弁護側は、カルテなど4点の証拠申請、監視ビデオ映像の鑑定、現場検証などを
要求した。検察側は「不同意」を連発したが、井上裁判長は、一人の証人申請は
認めた。これは、多数の傍聴支援と弁護団の頑張りの成果だった。証人は、刑事
訴訟法学者の新屋達之教授で、カメラ付きケータイを禁止した庁舎管理規則と憲
法の問題が、第2回裁判で審理されることになる。期日は、5月31日(金)午後1
時半開廷(1時10分抽選)で、多くの傍聴を呼びかけたい。(松原明)

●追記「裁判所の非常識」

 この日もイヤというほど、裁判所の非常識・人権無視の実態を見た。いくつか
列挙しておこう。

1,警備法廷ということで、法廷の入り口で手荷物取り上げ、ボディチェックが
ある。ある中年の男性が小さなお茶のペットボトルをもっていた。そのまま入ろ
うとしたらストップがかかった。男性は徹底して抗議。最後は、「ポケットに入
れた状態ならいいだろう」とペットボトルをズボンのポケットにしまったが、そ
れでもだめで、入口で長い間もめていた。結局、男性は傍聴できなかったよう
だった。

2,この日は約40の傍聴席で、うまったのは35席くらいだった。長い裁判だった
ので途中で帰る人もいた。ところが途中で傍聴に駆けつけた人がいたが、中に入
れてくれなかった。警備法廷はいったん始まると途中からの傍聴はできないこと
になっている、とのこと。席が空いていても入れない。明らかな傍聴権の侵害で
ある。

3,今回は初めての控訴審だから、ふつうの常識では名前を名乗ってから始まる
のが当然だと思うが、裁判長はただ事務的に始める。ところで驚いたのは、大口
弁護士が陳述を始めようとしたとき、井上裁判長が「名前を名乗ってください」
と言ったのだ。自分は名乗らないのに、弁護士に名前を名乗らせる、ほんと非常
識そのものだ。

4,控訴理由書は、被告(大高正二)と弁護団の名前で作成されている。最初の
書類は大高さんが書いたものだ。そこで、大高さんが自分で読みたい、と言っ
た。そうしたら井上裁判長は「控訴審ではしゃべってはいけません。代理人が読
んでください」とのこと。刑事訴訟法に関連規程があるらしいで、とにかくおか
しい。本人の裁判なのに本人がしゃべれないのか。

5,今回は傍聴人の退廷はなかったが、危ないシーンがあった。ある傍聴人が疲
れたのか、前のいすの背に両手をかけていた。すると監視人(法廷に6人の警備
員が常駐して傍聴人を見張っている)の2名が寄ってきて、手をふりほどこうと
する。その人は抵抗していたので、もう一歩で退廷させられるところだった(一
審の多和田裁判長だったら間違いなくやっていただろう)。それからまもなくし
て、丸の内署の警察官が法廷内に入り、傍聴席に後ろで監視を始めた。強制退去
のときは、警察官が立ち会うのが習わしのようで、「退去の準備に入った」と私
は見た。

 (付記 : 大高さんの事件もじつは強制退去に起きた事件だった。退去のとき
は必ず丸の内署の警察官が立ち会うようになっている。とすれば、守衛を殴った
という時にも近くに警察官がいたはす。捕まえるならその時現行犯で捕まえられ
たはず。ところが大高さんが捕まったのは、事件から3ヶ月後である。これだけ
でも???である。)

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大高さんについては、3分ビデオ「裁判所前の男」があります。→http://www.youtube.com/watch?v=9Hdi4nIB78s


Created by staff01. Last modified on 2013-05-18 00:05:30 Copyright: Default

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