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LNJ Logo 木下昌明の映画批評〜「カネミ油症事件」の被害者を追う『食卓の肖像』
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●金子サトシ監督『食卓の肖像』
「カネミ油症事件」被害者の人生を追う

忘れていた記憶がよみがえってくる。それは新聞だったか、男性の背中一面に広がった黒い吹き出物の写真だった。1968年に起きた「カネミ油症事件」とよばれた食品公害の被害者を写したものだ。

半世紀前のこの事件を10年費やして撮った金子サトシ監督のドキュメンタリー『食卓の肖像』が公開される。『キネマ旬報』2011年度の文化映画ベストテンの第10位。油症で苦しんだ被害者家族のインタビューを中心に構成した地味な作品である。事件の深層に迫った“告発もの”というより、当の事件を生きぬいた被害者が、いまなお病気に苦しみながらも「食」の安全を求め、自然と共生している前向きな姿勢に焦点をあてている。そこにひかれた。

事件は、福岡県にあるカネミ倉庫が「美容と健康にいい」というふれこみで販売したライスオイル(米ぬか)の食用油によって引き起こされた。製造過程で発生したダイオキシン類の猛毒が原因とされる。ダイオキシンといえば、当時、ベトナム戦争で米軍が撒いた枯れ葉剤で問題になったが、まさか同時代の日本でも起きていたなんて! 被害は福岡や長崎の五島列島などを中心に西日本一帯に広がり、被害者は1万4000人にも達したとされるが、いまだ認定患者は2000人足らずという。

実は、映画をみて知ったのだが、一枚の写真が象徴しているように、筆者などは、油症とは皮膚に吹き出物ができるだけと思い込んでいた。また患者自身も吹き出物以外は自分の体質のせいと思い込まされ、隠しつづけていた。新しい病症にたいする人々の無知が実態を浮かばせにくくさせていた。が、それはひどい全身病だったのだ。

とくに女性の場合、患者一人ひとりの口から、子宮発育不全、死産、「顔が半分破れた子が生まれた」など、生々しい体験が語られる。なかで、未認定患者の掘り起こしの運動を進めていた女性が、自らの病歴を刻んだ裸身をとらせた写真は目に焼きつく。(木下昌明/『サンデー毎日』 2013年4月7日号)

*4月6日より新宿K's cinemaにてモーニングショー


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