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LNJ Logo 権力の落としどころと狙い〜最高裁判決について(根津公子)
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News Item 0116nezu
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根津公子です。

16日の最高裁判決法廷の傍聴に駆けつけてくださった皆様、あるいは、気に留めて
いてくださった皆様、ありがとうございます。以下、
06年「君が代」不起立処分(河原井:停職1月 根津:停職3月)最高裁判決の要
旨と若干の感想を記します。

 判決は、河原井さんの「処分は取り消す」河原井さんの「損害賠償請求部分は東京
高裁に差し戻す」、しかし、「根津公子の上告を棄却する」という分断判決でした。
11月28日の弁論は、河原井さんに対してだけ開かれたものだったということで
す。弁論の通知が来た9月15日以来、この怖れは何度となく頭を持ち上げてはきま
したが、停職期間を比べれば、停職3月の根津だけ処分妥当とする根拠はないないは
ずだから二人とも処分取消になるだろうとの期待をかなりの率で持ってしまっていま
した。
 法廷で官吏の「上告人根津公子以下、ほか一名」「開廷」の発声に続き金築裁判長
が読み上げたことばは「主文 河原井純子…」。この一言で私は敗訴?!と気が動
転。考えを巡らす余裕を一切失ったまま法廷から放り出されました。判決文に目を通
し、時間の経過とともに、現実をはっきり確認したという次第です。
期待してしまった分、落胆が大きかったですが、「日の丸・君が代」問題を終結させ
たい権力の落としどころと、しかし止めは刺すのだということをしっかり見せつけら
れた感じです。
 この日はアイム‘89の2人(戒告)、都立学校167名(減給1月の渡辺厚子さ
ん、ほかは戒告)の判決もあり、戒告は処分やむなし、しかし、減給は処分取消とな
りました。


 今回の判決は、憲法判断ではなく、「裁量権の濫用があるか」についての判断でし
た。判決は、
 嵒垉立行為に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択す
ることについては、慎重な考慮が必要となる」

◆崢篆Δ僚菠を選択することが許容されるのは、過去の非違行為による懲戒処分の
処分歴や不起立行為の前後における態度等に鑑み、学校の規律や秩序の保持等の必要
性と処分による不利益の内容との権衡の観点から、停職処分を選択することの相当性
を基礎付ける具体的な事情が認められる場合。」すなわち、「過去の処分歴に係る非
違行為がその内容や頻度において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものである
場合。」
という2つの基準を示し、その観点から判断して、

2聾彊罎気鵑砲弔い討蓮◆峅甬遒猟┣処分の対象は、いずれも不起立行為であって
積極的に式典の進行を妨害する内容の非違行為は含まれておらず、停職処分を選択し
た都教委の判断は、停職期間の長短にかかわらず、処分の選択が重きに失するものと
して社会通念上著しく妥当を欠き、…違法。」

ず津については、「卒業式における国旗の掲揚の妨
害と引き降ろし及び服務事故再発防止研修における国旗や国歌の問題に係るゼッケン
着用をめぐる抗議による進行妨害といった積極的に式典や研修の進行を妨害する行為
に係るものであるうえ、更に国旗や国歌に係る対応につき校長を批判する内容の文書
の生徒への配布等により2回の文書訓告を受けており、このような過去の処分歴に係
る一連の非違行為の内容や頻度等に鑑みると、…停職期間(3月)の点を含めて停職
処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的事情があったと認められるから違法
であるとはいえない」
としました。

 5裁判官のうちただ一人、2人の処分取り消しを主張した宮川光治裁判官の反対意
見を紹介します。
ア.「上告人らが職務命令に従わなかったのはその行為が上告人らの思想及び良心の
核心の表出であるか少なくともこれと密接に関連している。国旗及び国歌に関する法
律と学習指導要領が教職員に起立斉唱行為等を職務命令として強制することの根拠と
なるものではない。通達は価値中立的な意図で発せられたものではなく、不利益処分
をもってその歴史観等に反する行為を強制することにある。」

イ.「上告人らは地方公務員ではあるが、教育公務員であり、一般行政とは異なり、
教育の目標に照らし、特別の自由が保障されている。…公権力によって特別の意見の
みを教授することを強制されることがあってはならないのであり、他方、教授の具体
的内容及び方法についてある程度自由な裁量が認められることについては自明のこと
である。
…式典において、教育の一環として、国旗掲揚、国歌斉唱が準備され、推敲される場
合に、これを妨害する行為は許されない。しかし、そこまでであって、それ以上に生
徒に対し直接に教育するという場を離れた場面においては、自らの思想及び良心の核
心に反する行為を求められることはないというべきである。」

ウ.上告人らの不起立行為は、…人権の尊重や自主的に思考することの大切さを強調
する教育実践を続けてきた教育者としての信念に起因するものであり、その動機は真
摯であり、いわゆる非行・非違行為とは次元を異にする。」

エ.「上告人らの不起立行為は消極的不作為に過ぎないのであって、式典を妨害する
等の積極的行為を含まず、…法益の侵害はほとんどない」

オ.戒告処分がひとたびなされると、累積処分が機械的にスタートする。戒告処分で
あっても過剰に過ぎ、比例原則に反する。

カ.根津の処分歴に係る一連の非違行為の内容や態度には一部許されないものがある
が、本件は単なる不起立行為にすぎないのであるから、停職処分(3月)は是認でき
ない。


判決を読んで思ったこと―
積極的な妨害とはいえない不起立については救済の対象=減給以上の処分は違法、し
かし、根津のように積極的に妨害、批判する者は許さない=停職処分は違法ではない
とした判決でした。一方に救済する者を作り、そこを落としどころとして、しかも根
津には止めを刺し、それを以って今後不起立をしようと思う教員に対する見せしめと
する。裁判所はこうして、「君が代」裁判に幕を閉じようとしているように思う。終
わった問題とすることで現場の教員たちの「君が代」強制に対する疑問や抵抗感を一
掃し、闘いを潰す狙いがあったのではないか、と思います。

そうではあっても、判決が、戒告を超えた処分、すなわち、減給以上は原則違法とし
た点は特筆すべきことだと思います。これにより、累積加重処分は違法となり、実質
東京の10・23通達は半分以上崩れたと見ていいでしょう。大阪の教育基本条例も
見直しを迫られています。

しかし素直に喜ぶことはできません。大阪では職務命令に2度違反した教員を自動的
に停職にできる条項を見直し、停職の前に指導研修の機会を設ける考えを示したとの
こと。そして、橋下市長は「違反状態が改善されるまで現場復帰は認めない」と言っ
たとか。「積極的な妨害、批判等」よろしく、「積極的な非転向。研修の成果なし。
免職妥当」としてくるのではないかと危惧します。

根津の処分も取り消すべしと言った宮川裁判官は、教育公務員は教育の目標に照ら
し、特別の自由が保障されることを指摘するなど、教育の自由の観点を大事にした判
断をしています。でも、その宮川裁判官でさえ、「根津の処分歴に係る一連の非違行
為の内容や態度には一部許されないものもあるが」と言います。「積極的な妨害」が
許されないというのでしょう。
報道の多くが「処分取り消し」ばかりを大きく映し出したことには、どういう意図が
あったのだろうと疑念を持ちました。
とりあえず、ここまで。

Created by staff01. Last modified on 2012-01-18 09:47:53 Copyright: Default

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