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〔レイバーネット国際部〕

全人代開催で緊張中の中国ですが、なんかすごい数なので翻訳してみました。壮
大な規模の官製ワーキングプアの誕生です。彼ら彼女らが世界の資本主義を支え
ています。

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派遣労働者は6000万人に
国有企業と政府機関で被害が深刻

原文
http://money.163.com/11/0226/00/6TPG0F4H00253B0H.html

網易サイト 2011年2月26日
(元記事 「経済観察報」紙)

「労働契約法」実施から3年。初めての改定となるか。

先週、中華全国総工会〔中国唯一のナショナルセンター〕が完成した「国内派遣
労働リサーチ報告書」を全人代常務委員会法制工作委員会に上程し、「労働契約
法」の「派遣労働」に関連する内容の改定を提言した。

この報告書によると、全国の派遣労働者数は6000万人を超えている。これま
での人力資源・社会保障部〔日本の厚生労働省にあたる〕が発表していた270
0万人余りの倍以上の人数になるもので、主要には公有制企業、行政機関、公営
事業体などに集中している。一部の中央政府直轄の大型国有企業では三分の二以
上の従業員が派遣労働者だという。

(略)

情報筋によると、すでに2009年上半期において人力資源・社会保障部は「派
遣労働条例」(以下、「条例」)の制定に着手し、「労働契約法」における「不
足」部分を補おうとした。しかし多くの利害関係者、とくに大型国有企業の圧力
によって、これまで何度かの改定と意見聴取を重ねてつくられた「条例」案は、
昨年末に事実上の「たな晒し」にされたという。

「条例」制定の展望がなくったことで、全国総工会は全人代法常務委員会制工作
委員会に前述の報告書を上程し、「労働契約法」の改定を進言した。これまでに
、同委員会は人力資源・社会保障部と全国総工会と何度かの意見交換を行ったが
、改定にむけたタイムスケジュールは未定だ。

◎制定されなかった「派遣労働条例」

2008年1月1日、「労働契約法」が実施された。その後の短期間の間に労使
関係は空前の緊張をみせた。

当時、多くの企業などで違法なリストラが行われた。労働者は解雇された後、派
遣会社に雇用され、以前と同じ職場に派遣され同じ仕事に従事させられた。賃金
、社会保障などの条件が切り下げられた。

このような事態に対して2008年10月、全人代常務委員会は、山東省、福建
省、陝西省、広東省、遼寧省、江蘇省で大規模な労働検査を実施した。

情報筋によると、その労働検査の結果、多くの国有企業、行政機関、公営事業体
、ひどいケースでは業績優良の中央政府直轄国有企業や有名大学などで、多数の
派遣労働者が雇用されていることがわかった。これらの国有機関では、さまざま
な方法で派遣労働者の賃金を低く抑え、社会保険の加入や退職に伴う補償の義務
を回避する行為がみられた。

この検査結果を受けて、全時代常務委員会法律執行検査チームは提言を行った。
その中でも重要な提言は「派遣労働条例」を緊急に制定して「労働契約法」の確
実な実施を確保することであった。

この提言に基づいて、2009年上半期から、人力資源・社会保障部は「条例」
制定に着手し始めた。

公式データでは、国内の派遣労働者は2009年までに2700万人に達してい
た。労働契約法が実施された2008年1月1日までは2000万人であった。

2010年末、全国総工会による広範な調査によって得られた統計では、国内の
派遣労働者は6000万人に達した。国内の労働者総数は約3億人とすると、派
遣労働者の割合は20%に達している。

しかし人力資源・社会保障部は総工会の統計を認めていない。同部調停仲裁管理
司の王振麟・副司長は去年10月に開かれた「労働契約法国際セミナー」の席上
、現在の国内の派遣労働者は7〜8%、海外への派遣労働は2〜3%だと述べた


王副司長によると2700万人でも多すぎるので「さらに検討したほうがいい」
と述べた。彼によると、同部では「条例」を制定中で、すでに多くの意見を集め
たので、「近いうちに完成するだろう」とも語っていた。

しかし現在までに「条例」は公表されていない。情報筋が本紙に明らかにしたと
ころによると、人力資源・社会保障部が意見を募集している過程で、大型国有企
業を中心として反対の声が大きくなったという。また無数の派遣会社も圧力の要
素となった。「ほとんどの派遣会社は地方政府の労働保障部門の役人の家族や知
人が経営している。スポーツにたとえると、地方政府の労働部門は、選手でもあ
り審判でもあるという状況だ。」

◎氾濫する派遣労働

前述の「労働契約法国際セミナー」の席上、多くの専門家や弁護士などは次のよ
うに指摘した。「労働契約法」が実施されて以降、派遣労働が「非正常な繁栄」
を見せた重要な理由は、派遣労働を対象とした条文があまりに「原則」すぎたこ
とから、派遣労働の激増をもたらし、違法脱法行為もますます過熱している。

現在の典型的な派遣労働は、企業が労働者を募集した後、労働者を派遣会社と契
約させる方法であり「派遣労働の意味が完全に変わってしまった」と全国総工会
の担当者は語る。

「労働契約法」が公布されるまでは、派遣会社は基本敵意労働保障部門が所管し
てきた。地方政府の労働保障部門は派遣企業の認可と「職業紹介許可書」を発行
する権限があった。企業の設立には3万元〔50万円程度〕あれば十分だった。

許認可部門への権限の集中、設立資金の安さなどによって、2005年末の時点
で、派遣会社は26158社もあった。そのうち労働保障部門が経営または許可
した会社は18010社、70%近くにも達していた。

安徽大学の法律専門の教授は、かつて南方の地方政府の人事局に属する派遣会社
に対して、一年間の利潤を聞いたことがある。「一年で2億元以上の利益がある
」と回答があった。この教授は「公権力が派遣事業に介入して営利を図っている
」と直截に語った。

このような状況があったことなどから、「労働契約法」では「派遣労働」の条項
を特別につくった。その条項のはじめには明確に次のように定められている。「
労務派遣機関の登録資本は50万元を下回ってはならない。」また「労務派遣は
一般に臨時的、補助的もしくは代替的な業務の職場で実施されるべきである。」
とも規定された。

政府がこの法律を制定した狙いは、派遣会社の設置基準を厳しくし、派遣労働者
の導入基準を限定することで、派遣会社を規範化し、派遣労働の総量を制限し、
派遣元と派遣先による脱法行為を防止し、最終的に「同一労働同一賃金」を実現
しようというものであった。

しかし残念なことに「労働契約法」の実施以降、派遣労働の数は「非正常な繁栄
」をみせたのである。

全国総工会のある担当者によると、登録資本の条件は引き上げられたが、多くの
派遣会社が登記の際に、金融機関から融資を受けて、許認可されたら資金を返済
するという方法で条文を骨抜きにしているという。地方政府の会社登記部門は登
記した後の経営についてはほとんど関心を示さないという。利害関係があること
から地方政府の労働部門もおざなりな管理しかしていない。

◎国有企業で被害が深刻

(略)

全国総工会の担当者は、派遣労働が全国の公有制企業、公的事業体、政府機関な
どに集中し、長期にわたって現場の第一線で中核的な労働に従事しているのが派
遣労働者の多数になっていると指摘する。例えば清華大学、北京大学、北京師範
大学などの一流大学の事務職などは基本的に派遣労働者によって担われている。

派遣先企業は、労働者と直接契約を交わしていないので「労働契約法」にある義
務を回避している。自由に賃金や福利厚生を引き下げたり、ひどいときには自由
に解雇したり雇い止めをする。その一方で、企業に対する派遣労働者の貢献は一
切ないものにされている。就業年数は永遠にゼロ年のままだ。

報告書によると、派遣労働は、石油、化学工業、電信、金融、銀行、航空、鉄道
などでもっとも深刻で、一部の中央政府直轄の大型国有企業では三分の二以上の
従業員が派遣労働者である。

〔大型国有企業を所管する〕国務院国有資産管理監督委員会のデータでは、20
05年から2010年にかけて、中央政府直轄企業のGDPは、10兆5000
億元から24兆3000億元に増加し、年平均成長率は18.2%にのぼった。
純利益も4647億7000万元から8489億8000億元、年平均成長率は
12.8%に達している。この第十一次五カ年計画の期間中、中央政府直轄の大
型国有企業の利潤と規模の拡大はすさまじいものがあった。

「これらのデータから、中央直轄の大型国有企業は羽振りがいいという印象を受
けるが、次のことが忘れられている。つまり、無権状態に置かれている派遣労働
者たちという存在の上に巨額の利益が実現されたということだ。」こう清華大学
のある労働法専門家は指摘する。

この人物によると、このような発展の結果として、一方で、多くの企業、とりわ
け大型の独占国有企業における安い労働力を通じた巨額の利益の実現、一方で、
農村出身労働者、国有企業をレイオフされた労働者など、底辺の民衆がますます
困難な状況に置かれ、貧富の格差が拡大しているという事実がある。それは最終
的に社会の調和ある発展にとって隠れたわざわいになる」。



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