本文の先頭へ
LNJ Logo 東京地裁の暴挙/裁判長が記者席悪用、傍聴妨害(山口正紀)
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 0706yamaguti
Status: published
View


●週刊金曜日「人権とメディア」2011年7月1日掲載記事(山口正紀)

東京地裁の暴挙/裁判長が記者席悪用、傍聴妨害


東京・霞ヶ関の裁判所合同庁舎に行かれた経験のある方は、正門前でマイクを持ち、痛烈な裁判批判を繰り広げる男性を見たことがあるのではないか。その様子は「レイバーネット」の三分間ビデオ「裁判所前の男」でも見ることが出来る。この男性・大高正二さんが今、「被告人」にされていることを、ビデオ製作者・松原明さんに教えられた。
大高さんは昨年一一月、警視庁に「公務執行妨害・傷害」容疑で逮捕された。経緯はこうだ。

大高さんは以前、裁判所庁舎内で携帯電話による撮影をしたとして携帯所持を禁じられた。昨年八月一〇日、大高さんは「携帯所持」を理由に、庁舎内から強制退去させられた。その際、「裁判所職員を殴り、ケガをさせた」というのが逮捕容疑だ。

大高さんは「携帯所持による退去は不当違法。暴力を振るったのは裁判所側」と抗議しているが、その公判が何とも異様な「警備法廷」になっているのだ。

五月一一日の初公判。松原さんらによると、東京地裁429号法廷の入口通路には鉄柵が置かれ、職員数十人が傍聴人の全身を金属探知機でチェック、荷物は強制預かり。傍聴希望者は約四〇人いたが、一〇人近くが「満席」として傍聴を断られた。

傍聴席は三三席中、五席が白いカバーをかけられ、空席のままだった。松原さんが「司法記者クラブ」に問い合わせると、クラブ側が申請したものではなく、裁判所が設けた「記者席」だった。傍聴人を少しでも減らすために記者席を悪用したのだ。

初公判冒頭、多和田隆史裁判長は「不規則発言したら直ちに退廷を命じます」と傍聴人を威嚇、その声が「聞えない」と訴えた人をいきなり退廷させた。裁判長はもう一人退廷させ、それに抗議した大高さんも退廷に。問答無用の「欠席裁判」だった。

六月八日午後の第二回公判。私も傍聴に行った。開廷約四五分前に法廷に着くと、通路入口の鉄柵に「本日は整理券がないと傍聴できません」の掲示。整理券がどこで交付されるかわからず、一階に戻って探すと、建物の外で交付していた。法廷で待っていたら傍聴できないところだ。整理券配付の職員に「法廷で整理券交付の案内をすべきだ」と抗議したが、馬耳東風。

抽選になり、一〇人が傍聴できなかった。ボディチェックされ、バッグを取り上げられて法廷に入ると、五席に白いカバー。その席に最初、女性が一人座っていたが、開廷一五分で消えた。

多和田裁判長の恫喝的な訴訟指揮は「聞きしに勝る」だった。開口一番、「不規則発言には退廷を命じます。拘束もあります」と傍聴人を脅した。大高さんは冒頭、裁判長に「あなたは、私を退廷させて裁判を続けた。私を有罪にするためだけの裁判など茶番。こんなおかしな裁判は認めません」と抗議した。この日、裁判長は何度も発言する大高さんを退廷させられなかった。

三人の証人尋問が行なわれた。傑作だったのは、大高さんに殴られたという裁判所職員の診断書を作った医師の証言。弁護人に「頭部打撲・頚椎損傷」の根拠を聞かれ、「触診ではコブがあるかどうかわからず、CTスキャンでも異常はなかった」と言いながら、「患者から痛みの訴えがあれば診断書を書きます」と、〈裁判所・警察合作のでっち上げ〉を裏付けてしまったのだ。

裁判所を批判するような奴も支援者もテロリストだ、と多和田裁判長は思っているらしい。だから、記者席を悪用してまで傍聴を妨害しているのだろう。せっかくの裁判長の「配慮」だ。司法記者にはぜひ記者席を活用し、異様な警備法廷とでっち上げ逮捕の実態を報道してほしい。

*大高裁判の第5回公判が、7月8日午後1時半、東京地裁429号法廷で行われる。内容は裁判所職員の証人尋問。午後1時から傍聴券抽選。

Created by staff01. Last modified on 2011-07-07 00:04:26 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について