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フランス事情   ロマ追放政策に欧州各国が批判 (小山帥人)

 この夏から秋にかけて、ロマの追放問題がフランスと欧州議会との間で激しい論争になった。

 ロマは、かつてジプシーと呼ばれ、欧州全体で800万人から1200万人いるといわれる。映画「ショ コラ」でジョニー・デップが演じた放浪の民を記憶している人も多いだろう。

 フランスではEUの拡大により、ここ数年、ルーマニアなどから移住してきたロマが増えた。歴史的 な差別感情は根強く、教育、住居、就職などの解決されていない問題が多い。学校に行かないと就職 ができず、犯罪に走る若者もいて、それが偏見を増すという悪循環になっている。

 夏、フランスではサルコジ大統領の指示により、不法居住者としてのロマ追放の動きが強まり、イ タリア、ギリシャなどもロマを排除する動きを見せている。テロ対策の強化もあり、人々の治安への 関心は高く、サルコジ大統領の支持率は少し上がった。社会党の幹部は「計算ずくの人気取り政策だ 」と批判している。

 これに対して、9月になって欧州議会は「追放の即時中止要求」を決議した。人権委員のビビアン ヌ・レディングは、フランス政府はEU内の往来の自由原則に違反している、さらに差別を禁じた欧州 基本権憲章にも違反していると厳しく批判した。彼女が第2次世界大戦のユダヤ人の集団追放との類 似を表明したため、サルコジ大統領も「我が国が侮辱されるのを見過ごすことはできない。歴史的短 絡だ」と反論。大統領は、8月以来撤去した住居地は335カ所、2万3000人、内ロマは5400人という数 字をあげて、ベトナム人なども追い出していて、ロマを対象にしたのではないと弁明した。しかし8 月の政府文書がロマを重点にしていることが暴露されて、文書を撤回せざるをえなくなった。

 フランス対EUの対立という構図になったが、10月、欧州議会はフランス政府の「往来の自由違反」 を認めたものの、差別問題については、なおフランス政府の政策を注視することにして、大国として のフランスの体面を重んじて、妥協した結果になった。

 欧州議会議員のコーンベンディットは「ロマへの迫害は我々の社会におけるもっとも嫌悪すべき感 情を煽るものである」と指摘、欧州委員会によるフランスとイタリアの政策への介入の強化を主張し ている。

 リヨン-パルデュ駅裏にはロマの人たちの住居地がある。空き地に寄せ集めの材木の上にブルーシ ートをかぶせた家が建てられている。下水道や電気がなく、子どもたちは夜はろうそくでしか勉強で きない。数日前のテレビで彼らの家が破壊される様子が報道されていた。日によっては氷点下にもな ってきたリヨンで、家をもたずに暮らすことは難しい。

 ロマの問題については、EUが全体として、本腰を入れてその生活権保障に取り組むべきだが、具体 的な動きはまだ鈍い。


なお、11月7日午後6時頃のNHKラジオ「地球ラジオ」でフランスの定年延長反対デモについて語 ります。 http://www.nhk.or.jp/gr/


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