全労連談話 : 環太平洋戦略的経済連携協定への参加決定に反対する | |||||||
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「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」への参加決定に反対する(談話)
政府は、11月5日に閣議決定をめざしている「経済連携協定基本方針」とあわせ、「環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)」交渉への参加を決定しようとしている。その目的は、今月13日から開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で、経済統合に取り組む菅内閣の姿勢をアピールすることにあると言われている。 TPPは、自由貿易協定(FTA)の要素(物品およびサービス貿易の自由化)に加え、貿易以外の分野(人の移動や投資、政府調達など)も含めた包括的な「貿易障壁」撤廃を、多国間で協定しようとするものである。 そのようなTPPへの参加は、国内の農林業などの第1次産業への影響はもとより、経済危機の原因ともなった「ハゲタカファンド」の投資行動や、産業構造への影響、産業構造変化にも起因する雇用への影響、移民労働問題など、労働者にも直接的で広範な影響が生ずることが懸念される。にもかかわらず、菅首相が10月1日の所信表明で「参加検討」にふれ、そらからわずか1月で交渉参加を決定するという経緯はあまりに拙速である。 アメリカとのFTA協定やオーストラリアとのEPA協定に前向きな姿勢を示す民主党政権が、日本でのAPEC首脳会議開催の機会を捉え、2国間のFTA締結に反対する国民世論を無視し、一部輸出企業に効果が集中する「貿易障壁」撤廃効果のみを強調して、参加を決定しようとしていることは問題である。 08年経済危機でも明らかになった「行き過ぎた外需依存」の一方での脆弱な内需、というゆがんだ日本経済の現状をさらに深刻化させかねない。TPPの負の側面、国内経済への悪影響への検討も対応もなしの政治的パフォーマンスは無謀と言わざるを得ない。 1995年のWTO発足以降、「自由貿易」のもとで激化した国際競争に一部企業が勝ち残ることを最優先する政策が取られた。その結果、非正規労働者の増加と賃金低下がすべての職場に広がり、「派遣切り」や外国人研修生問題に象徴される人権侵害が横行し、労働者使い捨ての企業経営が横行した。「年越し派遣村」に象徴される労働者の貧困も、自由貿易の拡大によって生じた社会問題である。 09年8月の政権交代は、そのような労働者のくらし軽視の政治への怒りに根ざしたものであった。雇用の安定や労働者・国民の所得増や地域経済活性化になどを優先し、内需中心の経済への転換をめざすことが、総選挙での民主党政権への国民の負託である。 TPPへの全面参加によって、340万人の雇用が失われることを農林水産省が試算し、北海道だけでも2兆1千億円も経済規模が縮小すると試算されている。これらは、TPPへの参加が、民主党政権への国民の負託に背を向けたものであることを明らかにしている。WTO協定の実行で、もっとも被害を受けた労働者や、地域に、TPPでさらに追い打ちをかけることは許されない。 菅政権は、TPP参加を求める一部大企業・財界の要望ではなく、悪影響を懸念する労働者、国民の声にこそ耳を傾けるべきである。農林漁業や地域経済の存在を危機に追いやり、地域での雇用喪失をより深刻化させるTPPへの交渉参加を断念するよう強く求める。 2010年11月2日 全国労働組合総連合 事務局長 小田川 義和 Created by staff01. Last modified on 2010-11-02 17:17:25 Copyright: Default |