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LNJ Logo 英国 : BA客室乗務員が13年ぶりにスト突入
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報告:ITFの浦田誠氏   *写真=スト決起集会

3月20日午前零時より、ユナイト労組の客室乗務員は3日間のストライキに突入した。前日に労使交渉が決裂したのである。未解決の場合はその後3月27、28、29、30日に再度決行する。

同労組のマクラスキー書記次長が述べているように、ブリティッシュエアウェイズ(BA)はいったん提示した条件を撤回している。これを受け、ユナイトは欧米豪の組合と接触し、ストに突入した際の支援を求めた。もちろん、法的に同情ストを打つことはどの国でもほぼ不可能であるが、創意工夫を凝らした行動は、一定の効果を生むことができる。例えば、オーストラリアの組合がテレビインタビューで言ったように、「未経験のスト破りが資格や適正を満たしているか確認する」ことは一案である。アメリカでも英国の組合員が空港でピケを張ったら、これを地元の組合が越えないことも合法的に可能らしい。また、こうした「直接行動」ではなくても、チームスターズは大手のリース航空会社のパイロットを組織しているとか。よって、同社がBAのスト破りをしないよう、圧力をかけることは可能だ。加えて、世界の組合が抗議の手紙をBAに出すだけでも、効果はある。クリーンなイメージが損なわれることを、旅客会社は嫌うのだ。だから、各国にあるBAのチケットオフィスに組合が抗議に訪れることもかなりインパクトがある。事実、BAはユナイトが国際的な連帯を模索したことにかなり神経を尖らせていた。こうして、組合は交渉を再開させることに成功したのだ。しかし相手も一筋縄では行かなかった。提示してきた内容は前回よりも劣り、交渉と同時進行で会社は従業員にスト参加をやめるよう強く迫っていた。会社は特にトップ交渉の内容を組合が組合員に図ることを嫌ったようである。

2009年11月よりBAは、客室乗務員数の削減、2010年からの賃金2年間凍結、新規採用者の賃金・労働条件の別設定などを柱とする再建計画を実行に移した。同案は2月に組合側に提示され、ユナイトは6月にこれを正式に否決していた。しかし、会社は一方的に実施できることと強調。ユナイトは差止請求を裁判所に出したが、退けられている。一方、組合独自のコスト削減案を出し、年間6300万ポンドの節約を提起したが、会社側は検討しなかった。こうした事態の背景には、低コスト会社(Low Cost Carriers, LCC)との熾烈な競争がある。2008年に黒字だった決算は、翌年赤字に転落している。会社はマスコミを通じて、「客室乗務員は高給取り」という宣伝をしているが、7割以上が年収2万ポンドという実態である。

組合、ユナイトはBAの客室乗務員の9割以上を組織する。組織は、運輸一般労組とアミカスが2007年に合併して生まれたもの。どちらも複数の産業で労働者を組織してきたが、BAの客室乗務員では、第一組合、第二組合の関係にあった。約1000人の従業員が運輸一般労組を脱退して新組合を結成し、アミカスに加入したのは1989年。これを指導した元客室乗務員のジャックリン・フォスターなどは、後に保守党の議員となっている。今回の争議で、会社が強硬姿勢を崩さないのは、組合が統一したことに対する強い警戒心があるからではないか。ユナイト側が、「組合潰しが真の意図」と訴えるのはこうした背景があるから。運輸一般労組とアミカスが合併してから、同労組の航空部会は運輸一般の出身者が占めているようだ。とりわけ、担当部長のSTは雄弁な戦略家で、闘うことを躊躇しない。以前、フォード社の自動車運送部門の争議では、私とタッグを組んで、同社のサプライチェインを調査し、関係する組合と連絡を取り、会社を震え上がらせた。この時も、こうした国際連帯行動の可能性を示唆することによって、会社を交渉のテーブルに引き戻している。

一方的な新労働条件に抗議するため、ユナイトはスト権投票を実施し、高率でスト権を確立。クリスマス休暇に12日間のストをぶつけてきたが、これはBAが裁判所に差し止めを訴え、認められた。会社を去る予定の従業員多数も加わっていたスト投票は無効という主張が通った形。ちなみに、この判断を下した裁判官は、スト期間中にBAを利用する予定だったと言われている。また、合併して日が浅いユナイトは、合同書記長制を取っているが、アミカス側の書記長が、このスト戦術を「行き過ぎ」とテレビで発言し、物議を醸した。ユナイトは、こうした逆境にめげず、態勢を立て直し、13年ぶりのストに至った。

初日の状況は、労使双方でかなり見解が異なる。組合側は、8割の客室乗務員がストに参加したと発表したが、BA側はガトウィック空港で9割、ヒースロー空港でも5割を超える従業員が出勤したと言う。また、組合は6割以上のフライトが欠航したと主張、会社は3割に留めたと述べている。相当数のウエットリースで欠航便の穴埋めしたのも事実である。BA専用のヒースロー第5ターミナルが「ゴーストタウンのようだった」という組合の意見は、BBCでも取り上げられ、スカイニュースも隠しカメラでその様子を伝えている。BAは空港内での取材を拒んだほか、そうとうの圧力を従業員にかけていた。このため、取材を受けて停職させられることを恐れるものが続出し、テレビは顔を隠した取材を報道したが、英国では異例のことだ。「ここはビルマじゃない」とも組合は抗議している。

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*今回は、国際運輸労連ITFの浦田誠さんの報告を許可を得て転送します(編集の上、雑誌「月刊労働組合」に掲載予定とのこと)。
なお、3月20日〜22日に引き続き、英国航空BAキャビンクルーのユナイト労組員は本日3月27日、第4日目のストに立ちました(29日までの予定)。by のぶ@英国


Created by staff01. Last modified on 2010-03-28 19:16:11 Copyright: Default

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