本文の先頭へ
LNJ Logo 立山学の渾身レポート〜今なぜ、国策「新幹線セールス」なのか?
Home 検索
 




User Guest
ログイン
情報提供
News Item 0716tate
Status: published
View


■立山学の渾身レポート 緊急連載・その3

今なぜ、国策「新幹線セールス」なのか?―「新経済成長戦略」を斬る

   (写真=立山学)

■次ぎの闘いの道筋

1047名問題が政治解決した。雇用は未解決だが、その解決のためにもJRをさらに追い詰める戦線の構築が必要だ。その課題と関連する最近の民営化情勢の特徴的問題点について、以下に私見を述べてみよう。

新自由主義は、リーマン不況などで、行きづまりが世界的にはっきりした。この情勢は日本にも反映し、昨年の総選挙では、民主党を中心とする鳩山三党連立政権が成立した。「新自由主義神話」が説得力を失い、政権が交代したことは、「郵政民営化の見直し」や、「1047」名のJR不採用問題の政治解決をうながす有利な条件として作用したが、しかし、鳩山政権は、沖縄基地問題や医療問題などで公約を守れず、支持率は急降下した。鳩山から菅へと首相を交代させて、参議院選に望んだが、結果は、民主は惨敗、・自民・みんなが議席をのばした。衆参ねじれ国会の再現である。

民営化災害の被害者である国民の反発に乗って政権をとった側が、政治災害の大元である民営化路線そのもの見直しには、踏み込めずに、もたついている間に、野に放たれた、民営化推進陣営は新しい装いをもつて、「巻き返し」にでてきている。財界・マスコミは、「衆参捩れ」となった政治状況を利用して、日米同盟・財界奉仕の「与野党大連合」の方向に、与野党を誘導しようとする動きを強めている。その現われの一つが「新経済成長戦略」だ、と私はみている。

■「新経済成長戦略」と新幹線ビジネスの国策化

参議院選公示の直前の6月18日に新経済成長戦略を菅直人内閣は閣議決定した。2020年までの10年間に、環境エネルギー、健康、観光、アジアなどの4分野で120兆円の新たな市場を発掘し、年間名目3%の経済成長率を維持し(過去10年は1%の低成長)、計500万人の雇用創出をめざすとしている。その目玉が、新幹線や原発などの日本の得意な高度技術とそのシステムの海外輸出であり、これを国策としてバックアップするとしている。

これは、菅直人首相が掲げる<「強い経済」・「強い財政」・「強い社会保障」を「強い政治のリーダーシップ」で実現する>とする政治理念の具体化だ。菅首相は、この新戦略は、市場原理優先の民営化路線とも、公共事業ばらまきによる成長路線とも異なる「第三の経済成長路線だ」と強調した。しかし、中身を点検してみると、民営化路線のより反動的、反国民的延長だ。

新幹線でも原発でも、日本は世界でもトップクラスの高い技術力をもっているから、そのアジア市場での売り込み合戦では、日本企業は楽勝だろうと、国民は思い込まされているが、実際は、日本企業は連敗中だ。たとえば、原発建設の受注競争では、アラブ首長国連邦の場合は韓国企業に、ベトナムの場合には、ロシア企業に、日本企業は負けている。

負けた理由は、いろいろだが、財界は、ライバルの他国企業が、それぞれ国家ぐるみで売り込みをかけており、大統領や首相が先頭にたって「トップ・セールス」をしているのに、日本は、政治のバックアップが不足しているからだ、として、「日本も国のバックアップを強化せよ」との要求を強めた。その財界の注文どうりに、菅民主党新政権はやっているわけだ。

JR東海のリニア新幹線の建設も、新幹線の売り込みも、「国策」とすることは、国が、JRのビジネスの連帯保証人になるようなものである。リスクは国が引き受け、回りまわって、国民におしつけられることになる。

前原国交相は、国交省には難問山積中であるにもかかわらず、新幹線の売り込みのために、4月、6月と2回も、わざわざアメリカに飛び、新幹線セールスのシンポでの説明役を買って出ている。爛肇奪廖Ε察璽襯広瓩箸いΔ函∧垢海┐良いが、やっていることは、民間企業のJR東海のセールスマン役を国交大臣がやっているようなものだ。大臣の格も落ちたものだ。さらに、米国のラフード運輸長官を日本に招いて、リニア実験車に試乗させた。

政府は日本の企業が、アジアの発展途上国のインフラ建設の仕事を受注した場合に、その企業を公的資金でバックアップする必要があるとして、政府系金融である国際協力銀行の投資融資を、原発だけではなく、鉄道にも使えるように変えた。ところが、実際には、米国の高速鉄道建設をJR東海が受注するのに使われるだろう。(JR東海は新幹線輸出の対象を米国にしぼっている)

「毎日新聞」の潮田道夫編集委員は、この新戦略は、「国家資本主義の堂々の復活であるとして、こう指摘している。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「成長戦略」の背景にあるのが「これから日本は、何で食っていったら良いかわからなくなった」という危機感である。ある政府高官は、語った。経営者が全然リスクをとらなくなった。放っておくと、日本経済は、地盤沈下する一方だ。仕方なく官が損失保証して投資させる。絶滅したはずの産業政策を復活させた『毎日』(6月23日号)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

「新幹線ビジネスの国策」化を推進するシナリオを書き、陣頭指揮しているのが葛西敬之JR東海会長だ。1047名問題の政治解決がまとまる見通しがほぼついた今年の4月20日付けで、葛西敬之著『明日のリーダーのために』(文春新書・760円 写真)が、出版された。その表紙には、本書は「国鉄分割民営化を成し遂げ、リニア開業、新幹線輸出に挑む『戦う経営者』が明かす体験的リーダー論」だと大書されている。また、『文藝春秋』7月号にも彼は「何故、海外にうってでるのか・東海道新幹線を世界に売り込む」と題する論文を発表している。

■JR東海の新幹線対米売り込みのコンサルはペンタゴン人脈

この「新幹線対外売り込み作戦」は日米同盟強化・改憲路線と不可分に結びついている。

JR東海の新幹線対米売り込みを仕切っているコンサルタント会社が二社あるが、驚くべきことに、一つが、リチャード・ローレス(元国防次官補)が作った会社、もう一つが、軍需企業として悪名高いレイセオンの副社長であった、トーケル・パターソン(元国家安全保障会議日韓部長)の会社なのである。この両人は、アジアの米軍事利権システム維持・拡大に執着するペンタゴン人脈のボスである。

葛西敬之は、今年の一月のJR東海が、米国に新幹線を売り込む方針だと発表する記者会見をしたが、上記二人が葛西と並んで会見している。沖縄・リニア・新幹線・武器輸出・改憲は連動しているというのは、私の推測ではない。葛西敬之自身が、『文藝春秋』7月号の葛西敬之論文「東海道新幹線を世界に売り込む」で次ぎのように公言しているのだ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
不動の日米同盟が、確固たる抑止力を示した時にのみ中国は周辺諸国にとって良き隣人となり、アジア地域の平和と安定が約束される…今や、日米同盟はアジア地域の平和と安全に必須のインフラとなった。鳩山内閣が沖縄の米基地問題で迷走したことは、皮肉にも、この日米同盟の掛け替えのなさを、周辺アジア諸国にも、さらには、米国自身にも再認識させるという怪我の功名をもたらした。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

と、明記している。沖縄県民の「基地撤去」の要求に逆らう「新幹線輸出戦略」なのだ。

 その米国のワシントンDC−ニューヨーク間と、東京―名古屋間をJR東海のマグレブで建設することは「米国民の心をとらえ、不動の日米同盟関係のシンボルになるのではないか」として、「技術は既に完成し、すべて当社の手の内にある。当社は、不動の日米同盟のシンボル、時代をリードする挑戦に、この技術をもって、寄与できることを喜びとするものである」と締めくくっている。   葛西敬之が強調する「国益」とは、常識的なナショナル・インタレストですらない。日米同盟最優先である。そのことを、彼は、日本の国家存立の四つの条件として明示している。(1)大陸国(中国)の脅威に海洋国同盟(日米)で対峙する(2)価値観(民心主義)を共有する者同志の同盟(3)同盟国の核抑止力で脅威を防ぐ(4)同盟関係を産業面でも補完する

彼のこの犢餘彜儉瓩らすると、沖縄米基地撤去を強く要求している、沖縄県民は、「国益」に逆らう「非国民」ということになる。 また、「(4)同盟関係を産業面でも補完する」というのは、アメリカの高速鉄道網建設、運用を、日本もできるだけ資金負担するべきだ、ということだ。「日本が大きな資金負担をする」という条件を提示できれば、JR東海は確実に、アメリカ政府から、その仕事を受注できるという計算が働いているだろう。その根回し役として、前記の米産軍複合体関連のコンサル2社の活躍をJR東海は期待していると公言している。

■「国民負担ゼロ」宣伝の大嘘

「新幹線ビジネス」は民間鉄道会社であるJR東海の「看板ビジネス」としてやられてきたものであって、それを、葛西敬之が「国家事業化」せよといいだしたのは、リニア中央新幹線建設にしろ、新幹線の海外輸出にしろ、JRが独力では突破できない壁につきあたっているからだ。

リニアで中央新幹線を東海道新幹線のバイバスとして、名古屋―東京間の建設費を5.1兆円と試算して、これをJR東海が自己負担で建設すると07年に発表したのは、早期着工がねらいだ。JR東海は社運をかけてリニア開発に取り組んできたが、実用化は、国の財政が破綻状態のなかではとうてい無理であり、「実験だけで終りだ」、という空気がひろがった。実用化されず、となったら、葛西自身の権威失墜だ。

そこで、JR東海が自己負担で、国にも、国民にも、負担なしで、建設するとうちあげたわけだ。世論は、国民負担なしで、リニア新幹線ができるなら結構だという受け止め方になっているが、むしろ、これは「第二の国鉄」化だ。将来、大きな国民負担をおしつけられることになるだろう。

実際には、建設費は数倍かかり、営業が採算がとれる可能性は低いと指摘する専門家は多い。だからこそ、「全幹法」の適用をうけて、国家事業としての体裁をととのえ、いざとなったら、公的資金の保証をもとめる仕組みにするのである。「国家御用達」のお墨付きをとることで、「JRの新幹線ビジネス」事業というリスクの高い仕事に、公的資金の保証をつけようというのである。

しかし、冒頭に指摘したように、「1047名和解」の雇用を受け入れないような違法の不当労働行為常習型労務管理企業には、公的支援を受ける資格なしだ

また、葛西敬之独裁のJR東海の閉鎖体質の抜本的転換なしに、その「新幹線ビジネス」の国策化などはありえない。「新幹線ビジネス」計画の一切は、JR東海のドン葛西敬之によって、独断的に決定され、社会の側には、結論が、おしつけられているだけである。全ては、葛西敬之が決めて、既成事実化し、国があとから追認している。国家の上に、葛西敬之JR会長が座って、采配をふるっている。

もともと、利権の整備新幹線建設は、国鉄改革当時に,第二臨調ですら「工事中止」を勧告したように、やめるべきだった。それを、利権のために、無理に、建設続行とした。リニア新幹線の山梨実験線建設も、政治利権がらみでの着工だった。

 スピードを競う高速鉄道優先から、地域再生のための人と生活にやさしい公共交通重視への転換を選択すべきだったのである。葛西敬之は、国鉄改革を大成功させた「先見の明あるリーダー」として、自らをアピールしているが、先見の明も、決断力も無かったから「時代遅れのスピード」のための鉄道開発に過剰投資をしつづけて、今になって、壁にぶつかって、ドタバタしているのだ。

 今必要なことは、「スピード優先、効率と儲け優先」の交通運輸政策から、「環境と人と地域にやさしい運輸政策」への見直しであり、総合交通政策の確立である。(この問題は別の機会に取上げたい)

■国鉄時代とJR時代の新幹線の違い

世界の高速鉄道は「東海道新幹線の息子」といわれるほど国鉄時代の東海道新幹線は世界のトップランナーであったことは間違いない。

前原誠司国土交通相も葛西敬之も、「日本の新幹線は、44年間乗客を死亡させる事故を起こしていない」ということを強調し「安全性」を最大のセールスポイントにしている。安全性こそは「新幹線ビジネス」の生命線である。それだけに、もし、死亡事故を起したら、一挙に信用を失うことになる。新幹線の安全性ははたして、本当に確立しているのか、予断ぬきに検証されなければならない。

国鉄時代の国鉄のリーダーの安全観とJRの経営者の安全観は全く異質だ。東海道新幹線の産みの親といわれた島秀雄技師長の「安全第一」は徹底していた。鉄道は危険だ、ということを前提にした安全対策である。氏は、国鉄を辞めてからも「プラットホームに安全柵を」という提言をしつづけている。島はこう指摘している。

〈私にはプラットホームは「荒波逆巻く岸辺に突き出した桟橋」のように、「急流に渡した一本橋」のように、イヤそれ以上に危ない場所に見える〉

JRでは、乗客の安全を守る駅員すらホームから間引きしてしまい、ホームから転落した乗客を、乗客が命がけで救助するしかない状況にした。その反省もなく、「乗客による「転落乗客救助」を「美談」として扱っている。このJRやマスコミの安全観と、島の安全観は全く異質だということは明らかだろう。技術的にも、島は東海道新幹線建設には原則として、既成の鉄道技術を使い、新しい独創は取り入れても、未経験の新技術は使っていない。安全性への配慮からである。

JR東海のリニア新幹線は100%未経験の新技術の塊である。それで、500キロの超高速で地下40メートルの長大トンネルのなかを走らせのである。その安全性を保証できる者は誰もいない。  

■「葛西敬之の独善」が、国家100年の大計を誤る

葛西敬之はすでに紹介した、葛西敬之著『明日のリーダーのために』(新書)の冒頭を「先のみえない時代です」と書きだし、最後は「救国のリーダーよ、出でよ」と題する最終章で締めくくっている。先が見えない時代だから、先が見える有能なリーダーの後を「凡なる民衆」は黙ってついてこい、という論である。

では、先見の明ある「救国のリーダー」はいるのか?、「いる。それは、おれだ 葛西敬之だ」と、明言してはいないが、中身は、そのように公言しているに等しい。国鉄分割民営化での不当労働行為やり放題の労務管理政策、JR東海での独断専行のリニア新幹線開発を、いずれも、大成功と描き出し、「成功」させたのは、葛西敬之のリーダーシップであり、成功の秘訣は、リーダーが大戦略をもち、必要なら、即決、即断したことだとアピールしている。

ここに、葛西敬之の国家主義的民営化論の特質が現れている。徹頭徹尾、民主主義と国民の利益=公益に敵対する立場だ。彼は、典型的な、出世欲旺盛なエリート官僚気質の塊であり、犖廚琉劼鮗擇蠅觚儉疂式で、出世階段をかけあがって、JR東海の独裁者として君臨するにいたった。「一将功なりて万骨枯る」というが、彼が出世の踏み台とした「国鉄改革」とは、200名を越える国鉄労働者を自殺に追い込み、国鉄労働者1047名を不当解雇しその家族を含めて23年にわって、「路頭に迷わせた」のだ−それは、国鉄改革犯罪の犠牲者のごく一部にすぎない−ということを見落とすことはできない。

さらに、彼は、上をめざし、国家的指導者として登場したいという野心を燃やしている。彼は、資本主義体制と民営化戦略の危機の深さを、彼なりに感知したのだろう。体制の危機は、彼の野心達成のチャンスでもあり、ピンチでもある。

支配の危機がふかまって、階級対立が、激化すると、「強い指導者」待望論が登場することは、歴史経験が示している。葛西敬之は、この情勢に乗じて、ファッショ的な「強いリーダーシップ論」をあえて前面におしだしてきた。しかし、時代遅れとなった体制を打破して、歴史を前に進める、「真の強いリーターシップ」と変革力は、民衆の利益を表現する、民衆自身の運動と闘争の中にしかない。右でも左でも、「強い指導者」を待望し、強い指導者に「おまかせ」した結果が、巨大な犠牲と破壊を社会にもたらした事例は多い。

ファッショも日本軍国主義も、国家主義、強い指導者論を柱としていた。その犯罪性に対する批判は根強い。そこで、葛西敬之は次ぎのように詭弁を弄して、かつての軍部が、日本をミスリードしたことを免罪し「おろかな国民」に戦争責任ありと責任転嫁している。

「ドイツはヒットラーの強力なリーダーシップに引きずられて戦争に突入したが、日本の場合は、大衆の声にながされ、大衆に迎合した結果、次ぎづぎに誤った一歩を踏み出し、大戦略なき戦争に突入していったのです」(236P)

下手なすり替えであり、彼の知的水準の程度がわかるのだが、ここで、彼が臆面もなく、国民狃斡鯱性瓩魏,圭个靴討い襪里蓮彼らが、「民衆の力」を恐れていることの現れである。「労務屋」エリート出身の彼は、鉄道を日々に動かしているのは、現場の労働者であり、その力なしには、鉄道はまともに動かないし、他方では、利用者あっての鉄道だということは、知っていよう。であるが故に、労働者・国民は、常に、上から、鉄の規律で、厳しく統制・管理し、分断支配していないと、専制支配秩序をゆるがす、脅威となると恐れるのである。

東京駅の東海道新幹線中央乗換口には東海道新幹線開業を記念して設置されたブロンズ製の記念碑がある。そこには「この鉄道は日本国民の叡智と努力によって完成された」と刻まれている。

全世界から評価されている東海道新幹線の「功」の部分は、ほとんど国鉄時代の成果である。それを食いつぶしてきたのがJR時代の東海道新幹線である。東海道新幹線の将来をどうするかの選択についても、国民と労働者の叡智が結集されて結論がだされるべきだ。(7月15日)


Created by staff01. Last modified on 2010-07-16 12:12:28 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について