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沖縄〜パレスチナ〜東京大空襲を結ぶ
荒川国際平和展2009開催

3月7、8の両日、東京荒川区のムーブ町屋4階ギャラリーで、「荒川国際平和展2009」(主催・実行委)が開催され、約100人が訪れた。

一夜にして10万人以上の生命が奪われた1945年の東京大空襲から64年。今年も被害の大きかった東京下町をはじめ、各地で追悼行事が開かれている。

2000年、区民有志が集って始めた同企画展は9年・10回目を数える。大空襲の戦禍を語り継ぎ、平和を願う思いは変わらないが、地元東尾久地区への本土初空襲の実態調査や、世界の戦場を取材するジャーナリストらの写真、一般公募作品の展示など、多彩な内容が特徴だ。

■イスラエルのやり方は変わらない

初日7日のテーマはパレスチナ。午後2時から映画「レインボー/REINBOW」が2回上映され、5時からは藤田進さん(元東京外語大教員)とルティ・ジョスコビッツさん(「私の中の『ユダヤ人』」著者)の対談が行なわれた。(写真下)

司会の三井峰雄さん(山猫印刷所所長)があいさつ。「昨年末からのイスラエルによるガザ地区への一方的な空爆を見ていると、1982年のレバノンを思い出す。同年6月から始まったイスラエル軍によるベイルート包囲と大爆撃、大虐殺のことだ。彼らのやりかたはちっとも変わらないじゃないか。状況はまったく良くならないじゃないか。それでも、その頃から連帯運動で活躍されてきたお二人、みなさんがこうして集まり、議論を積み重ねていくことが大切だと思う」。

■ガザとつながる東京大空襲

ルティさんはまず、自身の生い立ちや経験から語った。「私はパリで育った。ユダヤ人の家で親の言うことをそのまま信じて過ごしてきた。ユダヤ人は世界一の民族であり、イスラエルは世界でもっともよい国だ、と。1968年に初めてイスラエルに行き、パレスチナの問題を知った。両親の話と全然違う現実に大きなショックを受けた」。

藤田さんは、「普通の市民が強大な軍事力でズタズタにされる。映画レインボーを見て、そこで監督も言うように、記録する意志をはるかに超える現実が繰り広げられ、進んでいく。これをどう受け止めたらいいのか。記録行為はほんの一部になってしまう」。

「ガザの被害と、かつての東京大空襲の惨劇とはつながっている。ジェノサイドだ。人間を殺す世界は、ちっとも変わっていないのだ」と指摘。参加者との議論では、イスラエルの国際的地位や、国内での平和勢力について。世界のユダヤ人とイスラエル国家について。マスコミの報道のあり方などが提起された。

翌8日は区民平和音楽祭。ハイビジョンルームで荒川少年少女合唱隊がレッスンを一般公開。練習曲は構成合唱「ぞうれっしゃがやってきた」。指揮者の厳しい指導に、懸命に応えようとする子どもたちの澄んだ歌声は、聞く人の琴線を振るわせ、涙腺を緩くする。

■戦後は終わらない――「東京大空襲訴訟」の意義

国の戦争責任を国民が初めて集団で問う裁判「東京大空襲訴訟」は、この5月の最終弁論を経て判決が予定されている。火炎地獄のなか、愛すべき家族が目の前で殺されていく惨劇。肉体と精神に負った深い、癒やされない傷は今も生存者を苦しめ続けている。 戦後64年、国家による調査も追悼も、謝罪も、補償もされない切り捨て状態に置かれた遺族らは、「私たちを人間として扱え」と怒りをこめて提訴した。10日には、浅草公会堂で大集会が予定されている。

■惨状を語り継ぐ責任

星野ひろしさん(訴訟原告団団長・空襲犠牲者遺族会会長/写真)は、合唱団の子どもたちを前に墨田、台東、江東地域の当時のようすを生々しく語った。父の戦死で途方にくれる家族。北十間川にかかる福神橋の土手に引き上げられ、累々と並ぶ無数の子どもたちの遺体。14歳の星野さんは親戚の安否をたずね、上野から高田の馬場まで歩いた。菊川周辺などあちこちで、死体が道をふさいでいた。 「あの惨状を語り継ぐことが私の責任です。それが私の戦後の原点です」――優しくも重い証言に、子どもたちは静かに聞き入っていた。東京朝鮮第一初中級学校舞踏部の生徒たちは、おなじみの民族舞踊を披露した。

フォトジャーナリスト・大島俊一さんのスライドトークが始まった。ハイビジョンルームのスクリーンに映し出されたパレスチナ、イラクの写真をもとに、現地情勢と世界の流れが報告、分析された。

大島さんは学生時代からドキュメンタリーに魅せられていた。東京・山谷地域では、日雇い労働者の姿を追い続けた。仲間と記録映画の制作も手がけたベテラン作家だ。

今年の常設展示として、「戦争を止める人びと」と題する48枚を選んだ。戦火と米軍基地に翻弄された沖縄の人々の素顔を追った作品だ。特種紙にプリントされたモノクロ写真は、独特の陰影で被写体の意思を伝えている。穏やかな語り口で、ギャラリーとスライドを解説した大島さんの人柄を示すような、印象的な作品群である。 参加者は今年も「グループ・風見鶏」の演奏で「イムジン河」「千の風になって」などを合唱し、「おいしい」と評判のすいとんを試食して、二日間の幕を閉じた。(写真と文・Y)


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