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LNJ Logo 木下昌明の映画批評「犬と猫と人間と」
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●映画「犬と猫と人間と」
「忠犬ハチ公」では分からない
「ペット大国」に生きる日本人

 日本で飼育されている犬猫は何匹いるかご存じだろうか? 昨年は犬が約1310万匹、猫が約1374万匹で、世は挙げてペットブームだ。それは平和の証しかもしれない。映画でも忠犬ハチ公がモデルのハリウッド版「HACHI」が評判を呼んでいる。

 しかし、「ペット大国」必ずしも「天国」ではないと、その実態にメスを入れた映画が飯田基晴の「犬と猫と人間と」だ。飼育数もこの映画で知ったが、失業や離婚などで捨てられ、殺処分される犬猫も1日1000匹というから驚く。

 映画は、犬猫を抱いて「家族の一員よ」と散歩する日常をとらえつつ、それと裏腹の知られざるペットの行く末を4年間追いかけた貴重なドキュメント。犬猫嫌いの筆者も思わず身を乗り出す奥行きの深さ。というのも、犬猫を介して逆に人間がどんな動物であるかが見えてくるからだ。

 飯田には、かつて「あしがらさん」という、誰も見むきもしない(したがらない)路上生活の老人にカメラを向けた作品がある。それもただ老人を「観察」するのではなく、彼に寄りそい、病院に入れ、施設に入れ、彼が人間らしい心のゆとりを取り戻していくさまを撮ったもので、見捨てられた人々を思いやる飯田の優しさが伝わってきた。

 実は「犬と猫……」を作ったのは、この前作を見た猫好きのおばあさんが、劇場ロビーで飯田に「生命保険がおりるから、動物の命の大切さを伝える映画を作って」と話しかけてきたのがきっかけという。映画も二人が話し合うシーンから始まるが、そこから動物に関心のなかった飯田の悪戦苦闘も始まり、いろんな展開があって興趣つきない。戦争中、犬まで「特別攻撃隊」に仕立てられたんだって!

 久しぶりにいい映画を見た。特に、人々を翻弄させながら成長していく犬の「しろえもん」の場面がいい。(木下昌明/「サンデー毎日」09年10月4日号)

*映画「犬と猫と人間と」は東京・渋谷のユーロスペースで10月10日からロードショーほか全国順次公開


Created by staff01. Last modified on 2009-09-29 20:14:58 Copyright: Default

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