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ソウルのMです。

前青瓦台国民経済秘書官のチョン・テイン教授が韓国労総で講演した内容につい
ての記事です。前半の経済分析は難しくてよく理解できないのですが(^^;、李明
博政府に残された選択肢は公共企業体の民営化のみであり、それがFTAと絡まっ
て最悪の状況につながりかねないと労働界に警鐘を鳴らしている内容です。

人々の口を暴力的弾圧と損害賠償や名誉毀損などの訴訟である程度ふさぐことは
できても、それだけでは不足で、実際に国家運営はしなければなりません。そう
した面からの分析ですが、国民統合をかなり強調している李明博政権が、その政
策を人々に「納得させる」テコとして「民族主義的感情」を持ち出すというあた
りは妙にうなずけたりもします。

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原文:プレシアン
http://www.pressian.com/article/article.asp?article_num=60090817120137&section=02

李明博政府の残されたカードは公共企業体の民営化
チョン・テイン「韓米FTAと絡められたときは回復不可能」
(チョン・ホンギ記者    2009年8月18日 午前7:40:21)


昨年9月、米国の投資銀行リーマン・ブラザーズの破産を機に急速に進行した世
界経済危機が、1年目にいつのまにか悲観論者の予言が光を失っているようだ。
韓国も例外ではない。株価は1500の線を軽く越えて1600を突破するような勢いで
あり、不動産もソウル江南などでは以前の最高値だった2006年の水準をすでに回
復した。消費マインドを示す各種の指標も一貫して上昇しており、7月には製造
業生産も前期に比べて8%の増加を見せるなど実物経済も好転しているようだ。
それならば、政府が固く信じていた「V字型」の急な景気回復が現実となるのだ
ろうか。英国のサッチャー政権・米国のレーガン政権以降、勢いにのっていた新
自由主義が揺らいでいる今回の経済危機は「1〜2年程度」の危機に過ぎないのだ
ろうか。


<3重の危機>


チョン・テイン聖公会大学兼任教授(前青瓦台国民経済秘書官)は、依然として
「悲観論」を説く。現在の回復の勢いは、資本主義史上初めて各国中央銀行が同
時に流動性を供給する協調に成功し、1929年の大恐慌のような最悪の事態に進む
のを防いだものに過ぎない。チョン教授は「全世界が流動性の保護膜の中で息を
している情勢」だと表現した。

教授は17日、韓国労総の主催した「主要国の経済危機への対応と示唆点に関する
専門家討論会」で、現在の危機を「3重の危機」と規定した。10年ごとに巡って
くる産業循環上の危機、市場万能論というこの30年間の支配イデオロギーの危機、
そして100年に1回くる覇権国家の危機が重なり合ったものという説明だ。1年が
過ぎた現在、構造的次元の問題解決には大きな進展はなかった。

チョン教授は「もっとも簡単に見える10年目の危機からの脱出も容易ではないよ
うだ」と語った。危機の根源であり核心である米国経済の場合、「すでに経常収
支の赤字と財政赤字がどちらもGDPの6%に達した破産状態なので、こうした大規
模な支出にどこまで耐えられるかは疑問」だ。

教授は「すでに幾度も金融スキャンダルがあらわになった誤ったインセンティブ
構造と不適切な規制体系を、はたしてオバマ大統領が根本的に正すことができる
だろうか」と疑問を投げかけ、続いて「サブプライム住宅ローンよりもはるかに
大規模なクレジット・デフォルト・スワップCDS、会社債、自動車債権などでも
今後1〜2年以内に追加で問題が噴き出す可能性があるし、サブプライム住宅ロー
ンより規模の大きい商業用不動産の価値が下がるとなれば、こうした問題がすべ
て表面化する可能性が濃厚だが、はたして現在の金融対策だけで問題が解決でき
るだろうか」と強調した。

チョン教授は「さらに大きな長期的問題は、現在のグローバルな不均衡と国際通
貨体制」にあるとし、ドルの覇権が崩れていることを指摘した。「すべての基軸
通貨国家は強い通貨をもたなければならないので、国際秩序維持の費用を国際収
支の悪化という形で払わざるを得ない」、「問題は、米国の経常収支が赤字を超
えて80年代以来、徐々にもう持ちこたえられない状況に至っているところにあ
る」。教授はいわゆる「ポスト・ブレトン・ウッズ」体制について、「アイケン
グリーン(UCバークレー校教授)が予測しているように、ドルとユーロが事実上の
複数の基軸通貨になりうる。これにアジア通貨(中国元・日本円あるいはアジア
通貨単位ACU)が加わる程度が現実的な道」と予測する。

教授は、「いかなるケースであれ、米国ドルの覇権は潰える」、「現在の10年目
の危機が破局にまで至らないとしても、わたしたちは今後かなり長期間、はなは
だ不安定な世界で生き残らなければならない。これまでの覇権は崩れつつあるが、
新たな覇権はまだ確立していない状態だから」だと強調した。


<李明博政府の残されたカードは「民営化」>


問題は危機に対応する韓国の姿勢だ。李明博政府は米国式の新自由主義政策を基
調に、それに朴正煕式の土木建設政策を加えた「MBノミックス」をあいかわらず
固持している。

経済危機で税収が減り、財政支出は増加する状況にあっても、李明博政府はあい
かわらず法人税、所得税、不動産税などの減税を固持している。減税政策によっ
て任期中に96兆ウォンの税収不足が予想されるなど、財政の健全性に「赤信号」
がともった状況で、李明博政府は3年間に30兆ウォン程度が注ぎ込まれる「4大河
川整備事業」を推し進めている。大規模な土木事業を通じた景気浮揚効果を期待
するからだ。

世界経済の不況で輸出による景気回復が望めない状況は、李明博政府が「4大河
川整備事業」を手放せない背景となっている。チョン教授は、「2009年の輸出増
加率は昨年比で−20%水準にあり、世界経済が今後V字型に好転する展望はほと
んどないので、これからも数値が大きく改善される可能性は低い」、「これは雇
用が昨年比で10%減少したことを意味する」と指摘した。

このように内外に活路を見いだしがたい状況の中で増加する財政赤字を埋めるた
めには、「公共企業体の民営化」が不可避になるとチョン教授はみている。国債
の発行は政府が利子を追加負担しなければならないだけでなく、インフレを誘発
しかねないので限界があるということだ。

教授は、「ローソク・デモに押され、李明博大統領は国民に向けた謝罪を通じて、
電気・ガスの民営化はしない、医療の民営化はばかげた話しと発表したが、今年
の赤字規模だけでも50兆ウォンを超過する上に、毎年25兆ウォンの減税規模を維
持し、現在予定されている財政支出を執行するだけでも、とうてい持ちこたえら
れない財政赤字と国家の負債を抱え込むことになるので民営化は避けられない」
とみている。

教授は、「たばこ・酒に社会的コストの負担という名目を掲げても増税はしにく
いし、流動性の洪水の中でインフレ政策もとりにくいとなれば、政府が取り出す
カードは『公共企業の先進化』なる言葉で包装された民営化以外にはない」、
「資産が30〜40兆ウォンに達するネットワーク産業(電気・鉄道・水道・ガス・
郵便など)を民営化する場合、年に1件ずつ売っても年間の財政赤字分は埋め合わ
せることができる」と述べた。

教授は、「英国のサッチャー首相が公共企業の民営化を推し進めたのも、結局は
減税にともなう財政赤字を解消するためだった」、「李明博政府が来年から民営
化の速度を上げる可能性が高い」と強調した。


<民営化、公共性の破壊>


「親方日の丸」と表現されている公共企業体に対する国民の大きな不満も、公共
企業体を民営化に追いやるよい土壌となっている。

問題は、公共企業体の民営化は財閥の経済力集中と公共料金値上げなど、公共性
の破壊を呼び起こすという点にある。チョン教授は「公共企業体を買収できる能
力は財閥にしかないが、財閥の意のままの多角経営に対する拒否感は民族主義的
感情に訴えれば相当部分弱めることができる」と指摘した。

また、「いまや批准のみが残っているた韓米FTAは、いったん民営化されたり規
制緩和された分野においていかなる副作用が起ころうとも後戻りするすべは断ち
切られてしまう」、「ラチェット条項(後戻り不可能条項)や投資者国家提訴権
ISD(訳注:米国の投資者が韓国の法律・政策を理由に損失を被った場合、韓国政
府に損失分を請求できる条項)は、再国有化や公的な規制強化を事実上不可能に
させる」と強調した。李明博政府が推し進めている韓米FTA、韓国とEUのFTAなど
新自由主義の通商政策が危険であるもう一つの理由だ。

Created by staff01. Last modified on 2009-08-20 10:24:37 Copyright: Default

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