松下電池は真相を明らかにせよ! 中国子会社のカドミウム被害で松下電池本社に申し入れ | |||||||
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9月10日、中国・無錫にある工場でカドミウム被害が発生した松下電池工業(大阪府守口市松下町)に対する申し入れが行われた。呼びかけはアジア太平洋労働者連帯会議(APWSL)日本委員会で、おおさかユニオンネットに結集する労働組合の仲間を中心に申し入れをおこなった。
申し入れの前日、松下電池の担当者から「申入書は以前からレイバーネットで読んでいる。内容は事実を歪曲しており、本件は解決済である。よって、来社されても面会も受取もお断りする」と、申し入れさえも受入れない、という無責任な連絡が来た。。
日本の松下電池本社がこのような理由で申し入れを「拒否」したことは、日本本社が現地の情報を把握していること、そして仮に「事実を歪曲して」おらず「問題が解決済み」でない場合には、申し入れを受け入れる責任があることを自ら認めたといえるだろう。
松下電池は、もし仮に「事実を歪曲して」いるのであれば、どこが違うのかを明らかにする必要がある。もし「問題が解決済み」であるのなら、おなじくどのように解決したのかを明らかにする必要がある。申し入れ書を読めば分かるが、事実を明らかにすることが、今回の申し入れの最大の要望であったのだ。松下電池はそれらの申し入れに真摯に答えなければならない。傲慢な態度は中国でも、日本でも許されるものではないのだ。
9月10日12時半、小雨がぱらつくなか、集合場所である最寄り駅の京阪土居駅には、APWSLやおおさかユニオンネットの仲間15名ほどが集まった。APWSLからの経過報告をおこない、徒歩約5分ほどのところにある松下電池へ向かう。
正門付近には事前に社員と思わしき人影があちこちに。申し入れ団の代表が守衛所に取次ぎを申し出ると、取り次げない、という返事が返ってきた。系列会社とはいえ別会社の警備会社に取り次ぐかどうかの権限はないはずだが、かたくなに取次ぎを拒否する。
申し入れ代表が受付で交渉を続ける間、他の参加者は準備してきた「致命電池」(死に至る電池)のボードを掲げて、敷地内の松下電池の労働者にアピールをおこない、中国で発生した事件の概要を訴えた。
松下電池は対応を警備会社に押し付け、遠くからこちらの様子をうかがうのみで、無責任な対応に終始した。しばらく後、制服警官が2名、私服警官が2名あらわれた。警官が警備員を押しのけて松下電池の入口を固める、という異様な光景になった。
態度の横柄な警官は「社長に呼ばれて来た」と資本の番犬ぶりを発揮。ここは中国か?と一瞬耳を疑ったが、その後、民事不介入でまずいとおもったのか、警官たちは松下電池の敷地内に下がり、ガードマンが再び立ちはだかった。
工場敷地の奥からは、社員なのか、警察なのか分からない人物が申し入れ団をビデオ撮影したりと、威圧的、人権無視、居直り、無責任な、松下電池の対応がますます明らかになった。結局、1時間ほど、粘り強く交渉したが、申し入れは実現せず。
その後、申し入れ団は守口駅頭で、事件の概要を記載したチラシを配布し、この問題への関心を市民に訴えた。
日系進出企業による現地労働者の健康と人権に対する侵害を追及する行動を粘り強く継続していかなければならない。とりわけ中国では組織された労働者の持続した抗議行動が難しい状況であり、日本の労働者が声をあげるつづけることは、異議申し立てを行っている中国の労働者への、国境を越えた力強い支援にもなる。「万国の労働者団結せよ」のスローガンは、古臭くなるどころか、新自由主義グローバリゼーションの時代にますます力強く響きわたる。
松下電池は真相を明らかにせよ!
なお、当日の行動を遠藤礼子さん(ゼネラルユニオン)がショートビデオにして、ユニオン・チューブにアップしている。http://video.labornetjp.org/
上の写真もビデオより
2007/9/19
アジア太平洋労働者連帯会議(APWSL)日本委員会 apwsljp@jca.apc.org http://www.jca.apc.org/apwsljp/ 【賛同団体】 全港湾大阪支部/ 全港湾建設支部/ 全日建関西生コン支部/ 全日建近畿トラック支部/ 大阪教育合同労組/ 大阪電通合同労組/ 全石油ゼネラル石油労組堺支部/ 全石油昭和シェル労組大阪支部/ 全国金属港合同/ 郵政ユニオン近畿地本/ 自立労働組合連合/ なにわユニオン/ 管理職ユニオン・関西/ ゼネラルユニオン/ 大阪学校事務労組/ 南大阪労組連絡会/ 大阪京阪タクシー新労組/ 新相互タクシー労組/ 全労協護法労組/ ユニオンおおさか/ 自動車産別連絡会議/ フィリピントヨタ労組を支援する会/ 自治労・公共サービス清掃労働組合/ 全国労働安全衛生センター連絡会議/ 止めよう!ダイオキシン汚染・東日本ネットワーク/ アジア労働者情報交流センター・関西/ ビデオプレス/ ATTAC Japan(首都圏)/ 脱WTO/FTA草の根キャンペーン/ アジア太平洋労働者連帯会議(APWSL)日本委員会 ━━━━━━━━━━━━━━━━ 【無錫松下電池有限公司のカドミウム被害の経過】今回は、今年一月に中国・無錫にある無錫松下電池有限公司で発覚したカドミウム被害の実態解明と問題解決について、心ある日本の皆様にご支援を求める次第です。 2007年の正月休みが明けた一月四日、中国・無錫市にある松下電池の工場で、労働者たちがカドミウム汚染の恐れがある、ということで会社側に真相を求めて一週間に及ぶストライキを行いました。その後、会社側は再検査を行うことを約束し、現地報道でもこの問題が取り上げられることが少なくなり、事態は一時収束したかに思えました。 しかし、4月末に、年頭のストライキ当時に人事部副部長として労働者の対応に当たった中国人管理者が会社を辞めて当時の事件の経過を詳細に暴露したことで、現地では再び報道がこの問題を取り上げ始めました。 報道によると、ストライキに参加した労働者の多くは、カドミウム汚染などの拡大を恐れて職場を去っていきましたが、いまだに通院しながら正当な補償を求める労働者が、会社側と交渉を続けているとのことでした。報道からすると、会社側は労働者の要求に対してのらりくらりと時間の引き延ばしを行い、責任逃れに終始しているかのようです。 無錫松下電池有限公司は、松下電器産業(40%)と松下電池工業(60%)の出資による海外子会社であり、2001年7月に中国・無錫に進出、2002年1月から電動工具用のニカド電池の生産を開始しています。松下電池工業では1961年ナショナルタイ(株)の設立から2001年の無錫松下電池有限公司(パナソニックバッテリー無錫)の設立まで、全世界に22の海外拠点を展開しています。 とりわけ近年においては、1993年に上海、95年に安陽、珠海、そして01年の無錫と中国を中心とした生産体制を進めています。当然これらの海外進出の背景には進展する経済のグローバル化に対する松下電器産業をはじめとする松下グループの経営戦略があります。 今回、無錫松下電池で発生したカドミウム被害の責任は、現地法人のみに帰せられるわけにはいきません。日本本社はグローバル経営戦略における利潤だけでなく責任をも明確に引き受ける必要があると考えています。グローバル戦略の最先端で発生している日本資本による労災や労働者への抑圧は、そのもう一方の先端である日本国内における産業の空洞化や格差社会と一体のものです。 中国に進出する日本企業は約3万7000社を超え、投資実行額は約600億ドルに達しています。昨年、戦後初めて日米貿易額を超えて、日中貿易額が最大になりました。その70%は中国に進出した外資系企業との取引でした。日本資本にとっても、また中国政府にとっても、すでに両国の緊密な経済関係はその支配構造の中に組み込まれています。 同様に、松下電池の現地工場のある江蘇省無錫市は、中国の15の経済中心都市の一つであり、多くの日系企業が進出しています。日系企業は1081社、総投資額78.42億ドル、在留日本人は3000人、日本との貿易も05年に69.6億ドルにのぼり、同市最大の貿易パートナーになっています。 このような状況において、「良好な二国間関係」に水差し、日本企業の投資意欲を減退させるような中国労働者の要求は、中国現地の政府や公式の労働組合からも歓迎されないことは容易に想像ができます。日本資本の横暴に声を上げた現地の労働者たちを孤立無援のまま見過ごすことはできません。日本の中でしっかりと声をあげることが必要だと考えています。 中国に進出した日本企業が引き起こした問題に対するこのようなアプローチはおそらく今回が初めてのことになると思います。今後もみなさんのお力を借りながら、国境を越えた真の連帯にもとづく日中友好とアジア・太平洋地域の草の根労働者、市民による取組みを継続していきたいと思います。 グローバル化にともなう海外展開は、企業だけの専売特許ではありません。労働者、市民団体、消費者団体、社会運動団体の国境を越えた連帯、そしてなにより生産拠点の労働者たちの団結をこそが、経済のグローバル化をすすめる多国籍企業によって引き起こされているさまざまな問題を解決する本当の力になるでしょう。 アジア太平洋労働者連帯会議(APWSL)日本委員会メール:apwsljp@jca.apc.org 【資料】 現地報道(日本語訳) 1月29日の報道 http://chinanow.blog28.fc2.com/blog-entry-30.html 5月31日の報道 http://chinanow.blog28.fc2.com/blog-entry-31.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【申し入れ書】松下電池工業株式会社 取締役社長 近藤 正嗣 様 わたしたちは無錫松下電池有限公司において発生したカドミウム問題に関心を寄せる日本の労働団体、市民団体です。■ カドミウム被害の実態の開示を求めます今年1月、日本のマスコミ報道で中国・無錫にある「無錫松下電池有限公司」でカドミウム被害を懸念する労働者1000人がストライキに突入し操業が1週間停止した、というニュースが流れました。日本側の報道では「誤解だ」という会社側の主張のみが一方的に取り上げられていましたが、現地メディアでは、会社側が「誤解」を招くような対応をとり続けてきたことなどが報道されていました。 4月末、無錫松下電池有限公司の元人事部副部長という人物が、1月のカドミウム事件の詳しい経過を自らのブログ上に掲載し、中国現地のメディアも再びこの問題をクローズアップしたことで、1月のカドミウム事件に至るまでの、そしてその後の労働者に対する会社側の不誠実な対応が明らかになってきました。 この元人事部副部長によると、カドミウムを取り扱うラインの労働者の定期健康診断の結果、10名の労働者がカドミウム含有量が基準を上回っていたにもかかわらず、全員合格として発表することを強要されたといいます。それまでに行われた定期健康診断においても、本当の診断結果を明らかせず、その結果、カドミウムに侵されていることを知らないまま職場を去ったり、結婚して子どもを出産した労働者もいたそうです。検査結果を歪めて伝えたという点だけをとっても中国の関連法規(職業病防止治療法32条)などに違反する重大な違法行為です。 無錫松下電池有限公司において、なぜカドミウム被害が広がったのかという理由と被害者数や被害の実態を明らかにすることを求めます。■ 労働者の要求と会社側の対応を明らかにすることを求めます5月に入り、現地メディアは、勇気を出して当時の実態を告発した元人事部長だけでなく、カドミウム基準オーバーと診断された労働者たちへの取材などを通じて、いまだ無錫松下電池有限公司が、被災した労働者に対して納得のいく補償や謝罪を行っていないことが明らかになりました。 現地報道によると、無錫松下電池有限公司は、被災労働者に対して、わずかばかりの手当てや形だけの慰問など以外の正式な補償には一切応じようとはしていません。いやなら辞めてしまえ、と言わんばかりの対応です。しかしカドミウムは永久に労働者の身体を蝕み続けます。いま日本でも問題になっているアスベスト問題と同様の問題が、将来の中国において発生しない保障はどこにもありません。 無錫松下電池有限公司が、カドミウム被害の拡大を防止するためにどのような対策を採られたのか明らかにすることを求めます。また、カドミウムの被害を受けた労働者およびその家族からどのような要求が出ているのか、そしてそれらの要求に対して同社がどのような対応をとられたのかを明らかにするように求めます。■ 日本本社の責任の明確化を求めます無錫松下電池有限公司は、松下電器産業(40%)と松下電池工業(60%)の出資による海外子会社であり、2001年7月に中国・無錫に進出、2002年1月から電動工具用のニカド電池の生産を開始しています。松下電池工業では1961年ナショナルタイ(株)の設立から2001年の無錫松下電池有限公司(パナソニックバッテリー無錫)の設立まで、全世界に22の海外拠点を展開しています。 グローバル経営戦略の最先端で発生したカドミウム被害について、親会社である御社の責任は重大です。今回のカドミウム被害の発覚を受けて、御社が無錫松下電池有限公司に対してどのような指導をなされたのかを明らかにすることを求めます。 また、無錫松下電池有限公司がカドミウム被害に遭ったすべての労働者に対して、被害を放置し、うその検査結果を報告してきたことについて謝罪し、被害者全員との誠実な話し合いの上で被害者自身が納得する補償を行い、今後の事故防止措置を徹底するよう、親会社である御社が指導することを強く求めます。 2007年9月10日Created by takaheims. Last modified on 2007-09-19 17:15:44 Copyright: Default |