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LNJ Logo きょうと通信27号〜京都郵政職場交流集会(準)発行
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きょうと通信
京都郵政職場交流集会(準)発行●07年04月01日 NO、27

【東京南部】ジャガーノート  第二十三回(〇七年早春) 
 
 二月十三日最高裁で、反マル生闘争に対する四・二八免職処分を、不当処分とする判決が確定した。すでに、〇四年六月に高裁において、「反マル生闘争は労働組合としての争議であり、被免職者らは本部の指導に従った末端の組合員にすぎず、懲戒免職は許されない。本件懲戒免職は、社会通念に照らして著しく不合理、裁量権の行使を誤った重大明白な瑕疵があり、取り消しを免れず、また、無効というべきだ」との、被免職者の全面勝訴の判決が出されていたが、それを不服とする郵政公社が最高裁に上告していたのである。その上告が十三日に棄却され、被免職者勝訴の判決が確定したのである。責任を取るべき全逓自身が、裁判闘争の放棄・免職者の組合権の剥奪の裏切りを行うといった困難な条件の中で、最後まで闘いぬき全面勝訴を勝ち取った、七名の被免職者の闘いに拍手を送りたい。また、彼らの闘いを支えた多くの支援者と共にその勝利を喜びたい。
 郵政公社は、判決後、被免職者の謝罪要求には応えないまま、事務作業を行い、三月中旬までに希望者全員の元の職場への職場復帰が実現した。郵政公社は、完全敗訴となった高裁判決を受け入れず、無謀な上告を行うことにより、被免職者の職場復帰を不必要に引き伸ばし、また、まったくな無駄な裁判費用の支出を郵政赤字に付け加えたのである。もう一方の当事者であったJPU(旧全逓)は、今日に至るまでノー・コメントを続けている。

 四・二八免職処分から実に二十七年十ヶ月後の職場復帰である。職場復帰者の中で最高齢は五十六歳である。二十八年間といえば、人生のすべてといっても過言ではない。職場復帰者は、その過程を、前向きに捉え返していてそれは喜ばしいことであるが、誤った判断によって不当な処分を発令し、前途有為な若者たちの人生を打ち砕いた郵政官僚たち、および闘争の指導責任を棚上げにし、被免職者の組織的排除を行ってきた組合指導部の責任は重いといわざるを得ない。


 ドイツをはじめ多くの国では、労働裁判に関しては一般の裁判所とは別に、労働裁判所が設置され、短期間で審査を行うことが義務付けられている。労働裁判の長期化は、それ自体人権侵害であり、労働者が裁判に訴える権利を事実上閉ざしている、との判断が広く確立されているからである。何の根拠もなく恣意的に出された不当処分の撤回のために、二十八年間の年月が必要であるという制度そのものが問い直されなければならない。この勝利が、今なお低賃金と劣悪な労働条件の下に放置されている多くの労働者の新たな闘いの中に継承されていくことを期待したい。
  
 郵政公社のホームページの片隅に、目立たない形で在職死亡者、自殺者、精神疾患による休職者数が発表されていた。紹介しておこう。
 <在職死亡者>
  平成十年度(三八二人) 十一年度(三七九) 十二年度(三六九) 十三年度(三一二) 十四年度(三二〇) 十五年度(二七一) 十六年度(二七八) 十七年度(二三四)
 <在職自殺者>
  平成十年度(四三人) 十一年度(五六) 十二年度(五四) 十三年度(四七) 十四年度(四七) 十五年度(三八) 十六年度(五八) 十七年度(三一)
 <精神疾患による休職者数 >
 平成十年度(二五八人) 十一年度(二九四) 十二年度(三五七) 十三年度
 (三九三) 十四年度(三八八) 十五年度(三九九) 十六年度(四九八) 十七年度(六二六) 十八年度(七一〇)
 
 在職死亡者、自殺者は減少しているかのように見えるが、公社化以後職員数自体が大幅に削減されているので、職員総数に対する比率としてはむしろ増加傾向になるといえる。民営化に向けて十六年度以降徹底した合理化が推し進められてきたのは本稿においても紹介してきたところであるが、それが現場の職員を如何に追い詰めていったかは、十六年度以降の「精神疾患による休職者数」の急激な増加に端的に表現されている。
 しかも、この数字は郵政公社が正式に認定したもので、退職・辞職直後の死亡者、また、精神疾患により退職を余儀なくされた人々の員数は含まれていない。それらを加味すれば、これらの数値はもっと増えるだろう。公社は、これらの数値は平均的なものであり、特に多いとはいえない、などと言い放っている。毎年、多数の職員が死亡し、精神疾患を患っている(直接的な因果関係はともかく、その多くは郵政公社員としての日々の労働に遠因を有していると見るのが自然だろう)現実を何とか改善しよう、

これらの数値をゼロにしようとする意欲は微塵もない。政府関係者は「命の尊さ」を繰り返し強調するがその足元では、「命」の使い捨て、たたき売りが日常化しているのだ。
  日本郵政公社は二月十三日、ライブドアによる有価証券報告書の虚偽記載などに伴い、郵便貯金と簡易生命保険の資金で運用していたライブドア株(約二九二万株)が下落して売却損が生じたとして、ライブドアを相手取り、総額約十億 四千万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしたと発表した。〇五年西武鉄道とコクドが上場廃止となったときにも、郵政公社は三六億円の損害賠償訴訟をおこなっている(ジャガーノート第十六回参照)。世間を騒がした大きな金融不祥事のたびに郵政公社が必ず顔を出すのは偶然ではないだろう。原資は、郵便貯金や簡易生命保険として集められた庶民のなけなしの金である。安定運用が第一義的に優先されるはずの資金が、まともな資金運用部なら見向きもしないリスク商品に膨大に注ぎこまれているのだ。これが、「資金自主運用」の 笑えない実態なのだ。もちろん、損害賠償が実現される可能性はほとんどなく、その穴埋めも、高額な訴訟費用もすべて郵便貯金・簡易保険の資金からなされるのであり、資金運用の失敗の責任を問われるものは誰もいない。一方では、八〇円で懲戒免職(部内通信用の封筒を勘違いして私用に使ってしまった)となる職員がいるのに、十億、三六億の損害を与えた者はお咎めなしである。
 十月の民営化に伴い、制服がまた変更となる。その費用が、百二〇億円である。公社化の際にも、140億円かけて制服が変更されたばかりである。報道された写真を見る限り、さほど代わり映えはしない。今までのでいいじゃないかと、誰もが言う。この費用はそのまま赤字に計上され、それが、現場での職員の尻叩きに使われることになる。幹部の見栄のために赤字の山が築かれながら、いつの間にか赤字の原因は人件費と現場の努力不足に転化され、乾いた雑巾からさらに水を搾り出そうとするような労務管理がまかり通ることになる。
 前回ジャガーノートで今年の年賀状の遅れを取り上げたが、「利用者の遅出し」が原因と、利用者に責任転嫁していた郵政公社は、「一部の郵便局で集配予測を見誤って人員配置をしたことも遅配につながった」と自らの責任を認めた報告書を、総務省に提出した。「一部の郵便局」としているところがミソで、結局現場管理者のミスに問題をすり返るようとしている姿勢が見え見えである。年賀における要員枠(何名非常勤を雇うか)は、局所段階で決まる問題ではない。超勤削減年賀の大号令を発して、業務運行無視した要員計画を立てたのは、公社本部であることは明らかである。民営化に向けて職員には「意識を変えろ」と怒号しているが、幹部たちの意識は、電力会社同様、ミスは隠せという旧態依然としたお役所仕事のままである。
 民営間に向けて慌しい。年明けに説明を受けた事業計画では、NHK料金等々の代行徴収や、不動産事業までが、民営化後の業務として提示されていた。郵便局創設以来の郵便外務と郵便内務の職種区別が取り払われ、郵便一般職として一本化され


た。「これで、君たちが、何らかの事情で集配業務ができなくなったとしても、簡単に郵便業務に移動できる」と管理者は説明するが、民営化後予定される大規模な職員の再配置に向けて、邪魔な壁は取り去っておこうというのが本音だろう。
 三月末には、ほぼ一万人の経験豊かな職員が職場を去る。定年退職者もいるが、勧奨退職対象者(五十歳以上)も多い。五十歳以上の職員六万四千名のうち一万人が、郵政の民営化の未来に希望が持てず、職場を去っていくのだ。郵政公社の計画では、職員が去った後は、低賃金のアルバイトで仕事をこなしていく予定であった。ところが、アルバイトが集まらない。そればかりか、半年ほど勤務し職員並みに仕事ができるようなったアルバイトが、次々と辞めていく。時代は一回りし、初任給の賃金水準は上昇傾向にあり、低賃金構造を固定化させてきた「格差社会」に対する批判もようやく上がり始めた。低賃金構造を当て込んで、アルバイト中心に業務を運営しようとした郵政公社の反社会的合理化計画はその屋台骨が揺らぎつつあるのだ。
 4月からは、腰に重いプリンターを下げての仕事となる。首からは、ずっしりとしたバーコード・リーダーを下げ、腰にはプリンターと書留鞄をぶら下げて、まるで重装備の兵士のようないでたちで、配達先を動き回ることになる。暑い夏になりそうだ。

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