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WORLD PEACE NOWがシンポジウム

    板垣雄三さん「イランへの攻撃は近い」

 一月二十七日、文京区民センターで、WORLD PEACE NOW主催の「イラク・パレスチナ・中東間題を考えるシンポジウム〜世界はどう関わっているか!私たちに何ができるか!」が開かれた。  藤屋リカさん、(日本国際ボランティアセンター)、板垣雄三さん(東京大学名誉教授)、土井敏邦さん(ジヤーナリスト)が発言した。

 板垣雄三さんは「世界戦争がはじまろうとしている」と題して次のように講演。

 昨年の半ばころから、アメリカとイスラエルがすぐにイランを核攻撃するのではないかという論調が強まった。そのときには、事態をもう少し冷静に見るべきだと主張してきたが、ここに来て、きわめて危険な状況となってきた。今日の話のタイトルも「世界戦争がはじまろうとしている」としたのはそうしたことをあらわしたいからだ。

 一月十二日に、ブッシュは新イラク政策を発表したが、これは大変なものだ。イラクからの撤退ではなく、二万人の増兵ということだ。だが、これを日本のマスコミなどは、単にイラクだけのこととして報道した。だが、ブッシュはイラクでの「テロ」の激化の背後にはイランとシリアがいる、そしてこれらの支援を排除し、とくにイランの核保有を阻止するために行動するといっているのだ。ブッシュの新政策は単にイラクを対象にしているのではない。そこが日本では理解されていない。アメリカはもとよりヨーロッパでも事態を深刻に捉えるメディアが多い。

 すでにいろいろなことが起こっている。パレスチナからレバノンへと戦争を拡大するイスラエルとアメリカの関係の緊密化にくわえて、チェイニー米副大統領がサウジアラビアに飛んで何事か相談した。アメリカは国内での新たな戦争の準備を進めるとともに、大量のバンカーバスター爆弾をイスラエルに与え、NATOには核爆弾を供与した。イスラエルはレバノン攻撃ではクラスター爆弾をばら撒いた。

 こうしたことは、アメリカが対テロ戦争を第二段階に移行させようとしていることを物語っている。昨年、新たに二つの核保有国ができた。ひとつは北朝鮮だが、もうひとつはイスラエルだ。ラムズフェルドに変わって米国防長官になったゲイツは昨年十二月七日、イランの核保有の動きはイスラエルの核に対するものだ、ポロっと言った。それを受けて、イスラエルのオルメルト首相も平気で核保有を認める発言を行った。イスラエルの核については何十年も前からその疑惑が取りざたされてきたが、イスラエルは「持っているとも持っていない」とも言わない政策をとり続けてきた。それが、アメリカと口裏を合わせるようなこうした発言だ。これは、イランを核攻撃するという伏線にほかならない。増派された二万人がバグダッドではなくイランに攻め込むかもしれない。イスラエルの急襲なのかもしれない。すでにイスラエルの潜水艦がペルシャ湾に入った。奇襲は航空攻撃の可能性が高いが、海中からの核ミサイル攻撃になるかもしれない。問題はどう開戦の口実を作り出すかだ、アメリカはベトナム戦争のとき、ありもしないトンキン湾事件をでっちあげて北ベトナムを攻撃した。, また、米軍をカンボジアに侵攻させ戦争を拡大した過去を持っている。最近もイラク北部クルド人地域のアルビルのイラン領事館の五人が米兵に連れて行かれる事件が起こった。口実はイラクの「テロ」を支援しているということだ。かつて一九七九年のイラン革命のときテヘランの米大使館が占拠され館員が人質になったとき、アメリカはイランを外交的常識を破るものと非難したが、それをアメリカがやっている。

 ブッシュの新政策発表の直前にホワイトハウスの記者団への説明でも、中心のテーマはイラクではなくイランであると言っていた。すなわち、一月十二日のブッシュ発言は、公然たるイラン核攻撃宣言だったのである。問題は、いつなのか。ひとつには戦争をやるには気候条件・季節の問題がある。そして国連のイラン制裁決議の期限が二月下旬で切れる。そうすると、イラク開戦の時期と同じく、三月半ばというのがあぶない。

 米中間選挙で民主党が勝利したので、戦争拡大はないだろうという意見があるが、例えばヒラリー・クリントン上院議員などはイスラエルにべったりの姿勢だ。

 こうした戦争の拡大となれば、イランを支持するシーア派の反米攻撃は世界各地で起こるだろう。それだけではない。ホルムズ海峡は閉鎖され、湾岸石油の輸送はストップする。世界のエネルギー事情は大混乱に陥り、日本などはお手上げになる。アジア全体の情勢にも根本的な変化がおとづれる。なぜアメリカはこうしたことをやるのか。それはイスラエルが崩壊の危機に直面しているからだ。

 このような状況を見るのには、日本中心の視野では駄目だ。次の三つのものが必要なのではないだろうか。それは世界の連関構造を見抜く「勉強」、人間および森羅万象の尊厳を侵害する反倫理的行為を拒否する「覚悟」、世界に開いた市民自身の主体的インテリジェンスのための「ネットワーキング」だ。

*『人民新報』第1218号(統合311号)2007年2月5日号より
http://www.rousyadou.org/


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