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LNJ Logo 根津公子「停職出勤日記・4」
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以下、4週目の私の停職「出勤」日記です。

(4)4週間が過ぎた。4月も終わり。

4月24日(月)立川二中

今日は穏やかな天候だった。何人もの訪問者あり。

まだ一人でいる時、自転車で通り過ぎた青年が戻ってきてプラカードを読む。二中の卒業生で弟さんが在籍していると言う。簡単に処分の事情を話すと、彼は言う。「何のことでもだけれど、自分を守るために、従ってしまう大人ばかり。それがいやだ。その人が、それが正しいと本心から思ってやっているならいいけれど」と。「まったくそう思うよ、私も」と意気投合する。

彼は「はだしのゲン」を読んだのがきっかけで戦争中のことを知りたくなって本を読んだのだそうだ。学校の勉強は大嫌いだったというが、戦争中の歴史の知識が豊富でよく物事の本質を見ている。しっかり考えている。毎日通った学校がではなく、一シリーズの漫画本が彼に知識欲を呼び起こし、物事の見方を示した(時代は違うが、私も物事の見方を知ったのは学校ではなく、一冊の本からだった)。彼のような人に接すると、学校を変えなくちゃ、と強く思う。

 話し込んでいるところへ車を止めて中年の男性がやってきた。プラカードを読んで、「そうだ、ちゃんと君が代の意味を教えなきゃいけない」「君が代とは、国民皆のことだよ」と言って去ろうとする。「いつから君が代とは国民皆のことになったのですか」と訊いたが、言いたいことだけ言って車に乗り込んで去ってしまった。

 プラカードには今日は次のように書いた。「抗議します。「君が代」不起立で停職3ヶ月処分/生徒に「君が代」の意味は知らせずに起立斉唱だけを求める。/こうしたやり方は教育がしてはいけないことだと思います。だから私は起立しなかったのです。/なぜ、「君が代」の意味も歴史も、議論があることも生徒に知らせないのでしょう?」。

 今日も下校時間帯は3年生の生徒たちと色々話し、戯れた。それを傍で見ていた友人は、「子どもとの語らいが根津さんのエネルギーになっているのね」。そのとおりです。



4月25日(火)鶴川二中

 8時頃校門前に立つ。8時10分、パトカーがこちらを覗き込むようにしながらゆっくりと通り過ぎた。8時15分には副校長と校長が登校指導にやってきた。私の「出勤」日だけ校門前に立つ副校長と校長は、生徒たちの目には何と映るんだろう。副校長は「プラカードの文字が新しくなりましたね」と気づき、登校指導の後、カメラを持ち出し、私に断って写真を撮った。「毎回都教委に送るの?」と訊くと副校長は今日も否定したが、でなければ何に使うのか?

 休み時間に「ねづきみこ!」と叫ぶ女の子たちの声が聞こえてきた。試してみたのかな?手を振ってそれに答えた。

 今日はひょうと雷に見舞われた。雨の中でのお弁当。


4月27日(木)都庁

4月26日は八王子時代の仲間たちと石和の温泉でゆっくり。今年初めての休日を満喫した。

27日は都庁前で出勤する職員にチラシまき。その後、定例の都教育委員会を傍聴した。


議題は、

?日本の伝統文化に関する教育推進会議報告書について――この会議は、中高一貫校である都立白鴎高校付属中の校長への提言機関。「日本文化概論」という授業を始めるに当たり、はじめに「将棋」の学習内容とその展開例を作ったという。この学校だけでなく、行く行くは全学校に伝統文化に関する教育を普及させていくと言う。

 
?懲戒処分の見直し(案)について――翌28日の新聞報道のとおり、体罰、性的行為、公金横領などの厳罰化、免職。私たちに関係する「勤務態度不良・職務命令違反」が加重処分でどこまでやるかについては、明らかにしなかった。高坂委員の発言では、この定例会に議題として出る前に、27日付け産経新聞に掲載されているという。これについての答弁はなかった。
 

?第1回東京都教科用図書選定審議会の答申について 

?部活動振興専門委員会報告書について。――「部活動指導は職務であることを周知徹底する」「顧問は教諭から学校職員に拡大する」など。

 これらの議題が、結論先にありきで、論議せずに通過して行く。提案部署の職員はそれぞれ10数人が担当の議題の時だけ会場にいて、それが終わると退室する。議題ごとに入れ替わるのだ。どのような流れの中に自分たちの提案があり、それによって学校が、子どもたちがどのような影響を受けることになるのか、この人たちの頭にはないのではないか、とふっと思った。

 私たちの処分もベルトコンベアーに流されるように、質問さえ出ずに決まってきたんだろう。


4月28日(金)立川二中

 「離任式に来るでしょ?」。登校時何人もの生徒が訊いてきた。今日は離任式。校長は停職中の私も呼んでくれた。これを都・市教委が黙っているはずはないと思う。呼んでくれたことに感謝。

招待されて入る校舎は、まぶしく感じた。11人もの転任者だったので、生徒に話す時間は1分。私は、「私が生きる上で大事にしていることで、皆さんにもしてほしいと思うことを話します。皆がするから、言われたからするのではなく、正しいことか、間違ってはいないか、皆の幸せ、平等に繋がることか、自分の頭でよく考えて行動していってください。大勢がやるから正しいとは限りません。そうすることで、時には辛いこともあるかもしれませんが、ほんの少しの勇気を持って、たとえ一人になっても正しいと思うことをしていってくださいね」と話した。

離任式とは別に、用意してきた手紙を手渡してくれた生徒が3人。「とっても優しくて、自分の意思は曲げない。私はそんな先生に憧れみたいな気持ちを抱いていました。私はそんなふうにはなれなくて、周りに左右されながら生きているんで〜」「たぶん先生は教育委員会からいろいろ言われてると思うけど、Aは先生の考え方いいと思うよ!〜応援しているんだから」「家庭科、大好きになりました」と。

 「先生、サインしてーえ!」と駆け寄ってくる男子たちに応えたり、卒業生ともおしゃべりしたり、楽しいひとときを過ごした。

 今日は晴天、日差しが強かった。離任式が始まる2時過ぎまで校門前にいたときに、卒業生が冷たいお茶を差し入れてくれた。優しい気持ちがプラスされて、本当においしかった。しみじみと味わった。

Created by staff01. Last modified on 2006-04-30 21:29:46 Copyright: Default

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