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News Item 0427reikai
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会員のIです。

明日(もう今日です)にも共謀罪の衆院委員会通過/教育基本法法案国会上程というなかで、のんびりした報告ですいません。

27日に行われたフランス反CPE闘争に関するレイバーネットのオフ会(例会?)に参加して報告を書くように命令されましたので、以下報告を書きます。

参加者はフランス300万人デモにわずかに届かない35人。世界を震撼させた反CPE闘争に対する関心の高さをうかがわせました。会の後、会員になった方が数名。恐るべしフランス社会運動。

司会の佐々木有美さんと講師のエルワン・ケレンさんとの対話形式で進められました(とても分かりやすかったです)。通訳の菊池恵介さんも長時間流暢に通訳をしていただきました。

以下、メモ書きの報告です。質問、答え、というふうではないので、読みづらくてすいません。 会場からの質疑応答は一応Q&Aです。漏れなどあればすいません。

二次会の交流会でもいっぱい感想や質疑が出ましたね。みなさんも思いのたけをどうぞ。

ケランさんは、4月28日の郵政首切り撤回闘争(http://www.labornetjp.org/EventItem/00_2006_2Q/1144894149220staff01)に参加するので、あさも早いということでしたが、おそくまでお付き合いいただきました。

ケランさんにはここ数年、attacや郵政民営化反対のとりくみでいろいろとお世話になり、話をきいてきましたが、今回も改めて、いい話しだなぁとおもいました。先日も、サービス貿易の自由化をすすめるWTOやGATSの問題について話を聞きました。(http://kongyeesaimau.blog32.fc2.com/blog-entry-74.html)

質疑では、日本メディアのひどさなどがでていました。けど僕は、資本の側はちゃんとこの闘争の意義が分かっているからこそ、反CPE闘争への誹謗中傷が一斉に起こった、とおもっています。昨年のEU憲法否決に対する姿勢もそうです。残念ながら、ここでも運動よりも資本のほうがグローバル化しているな、とおもいます。「フランスはいいな」と思うのではなく、フランスの勝利に自信を持っていきたい、とおもいます。日本でもできることはあるはず、たとえそれが少しずつでも。CPE撤回は、新自由主義に抵抗する世界の人々の勝利だ、と今日ケランさんの話しを聞いて改めて思いました。日本でも同じような労働法制の改悪が進んでいます。幅広い取り組みが準備できればいいですね。

I@会費も払いました

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16歳と13歳の息子が反CPE闘争に参加したケレンさんは、下の息子が中学でバリケードストライキに参加しているときに、「君達の闘争は正しい」と支援の声をかけた教員に対して、「教組はデモもしていないのに何を偉そうに」と切り替えしたエピソードを紹介。

ケレンさんの所属するSUD(連帯・統一・民主)労組も積極的に反CPE闘争に参加しました。ケレンさんは郵便労働者でSUD-PTT(通信郵政)支部のメンバーです。

彼の職場のとなりにあるナンデール大学での取り組みを紹介する。同大学では当初200人程度の学生総会が開かれ、反CPE闘争に突入したが、どんどん参加者が増えて、闘争が盛り上がってしまい、ついには学長が大学を閉鎖してしまったとのことでした。SUD労組は、学生達のビラの印刷のために事務所を開放して、学生の運動を支えたそうです。

今回のケースでは雇用の不安定化を進める法案に対して学生が立ち上がり、警察のものすごい暴力に抵抗している状況に対して、SUDをはじめとする労働者、労働組合が感銘を受けて、全国的な支援と共闘につながったそうです。

社会党系のナショナルセンターCFDTもおずおずとながら闘争への支援をおこない、結局それまでは実現されなかった社会党系CFDTと、共産党系のナショナルセンターCGT、独立系のSUDなどが、共闘する枠組みができたということでした。これも学生からの熱心な呼びかけと世論の支援のなかで実現されたことだそうです。

CPEに先立ち、中小企業の青年労働者の雇用を一層不安定にするCNE法が制定されたのですが、今回のCPEに対して学生がまず立ち上がったので、SUDとしては今回はなんとしてもCPEを阻止して汚名挽回を、という気持ちもあったそうです。

レンヌ大学、ポワチエ大学の闘争を発端に、学生会が全国組織を結成し、労組に呼びかけて労組も闘争に参加し、政党も極左から中道左派までがたたかいに加わったそうです。また市民運動体としてはATTAC(新自由主義反対という立場)やPTA連盟(自分の子ども達の不安定雇用反対という立場)なども積極的に闘争に参加したそうです。

昨年の11月に都市郊外で多発した青年の反乱は雇用がないからで、雇用改善のためにCPEだした、という政府の主張はでたらめだとのことです。雇用の不安定化で郊外の問題は解決されない。

11月暴動と今回のデモを「暴力」で結び付けようとするのも間違いとのことです。むしろ新自由主義の攻撃による郊外における公共セクターの解体と青年雇用の不安定化ということで「新自由主義」というキーワードのほうが共通する。郊外の青年は雇用の流動化の犠牲者でもある。

フランスでは昨年のEU憲法(多国籍企業の一層の自由を保障する)NONの勝利や、市場原理拡大のEU規模での指令(ボルケシュタイン指令)を押し留めたたたかい、移民法改悪への闘争、電力自由化へ反対の闘争、そして今回の反CPE闘争など、新自由主義市場原理NONの運動が持続している。

サービス貿易をいっそう多国籍企業の有利なように進めようとするGATS協定やWTO体制が、新自由主義の背景にある(GATSの説明はhttp://kongyeesaimau.blog32.fc2.com/blog-entry-73.html)。

南ヨーロッパは全体として労働運動が政治に介入するスタイルがある。北ヨーロッパは労組は経済で、政治の問題は政党に任せる、という慣例がつよい。

フランスでは、社会党よりも左の政党(極左)への支持が43%(極右は12%)あり、すでに人々は既成政党に対する幻想を捨て始めている。

メディアは当初、デモを暴力的に描こうとしたが、実際にはデモ解散地点の直前で、警察がデモ隊に襲いかかることがあった。

SUD-PTTの組合員もデモ解散のときに警官隊に踏み倒されて3週間も意識不明になった(現在は意識回復)。警察は「自分で転んだ」などという。当初メディアは警察発表をそのまま流したが、いまでは中道リベラルになった「リベラシオン」がこの警察の主張に反対し、他のメディアも影響される。これも世論の70%が学生のたたかいを支持しており、メディアも世論を気にした。

破壊行動やデモ隊におそいかかる「壊し屋」もいた。不安定な青年の一部もこれに参加していたが、かつては警察が「壊し屋」だった。「壊し屋」を捕まえたら拳銃や警察身分証明書がでてきた、ということも昔はたくさんあった。

68年との比較では、共通点は社会を自分達でかえる、という思い。違いは、68年は学生の運動だった。軍人ドゴールの権威的な体制から解放されたい、という意識。しかし反CPE闘争は、これから労働市場に入ろうとする青年を先頭としたたたかい。二極化とワーキングプア社会に反対するたたかい。68年に失業の恐怖はない。スローガンも政治的、詩的。いまの要求は極めて具体的。

2002年から2003年にかけて、年金改悪などに抗して100万人のデモが行われたが、政府は改悪を強行した。労働運動の中での敗北感は大きかった。しかし今回は政府の策動をとめることができたという大きな達成感がある。自信の回復。この間のEU憲法否決、ボルケシュタイン指令の拒否などの運動も影響する。

ノーモア尼崎キャンペーンで参加したイギリスRMT労組のピーターさんとの交流では、本当に力を持っているのは労働者である、しかしそのためには団結しなければならない、ということで意見が一致した。

2002−03年の闘争の敗北感は大きかった。しかしゼネストを打った。今回はゼネストまで発展しなかった。新自由主義の攻撃をとめるには、経済をストップさせるようなゼネストが必要だろう。CPEは撤回させた。しかし中小企業労働者の雇用を不安定にさせるCNEなどの悪法を撤回させる闘争は継続しなければならないが、闘争の継続はきびしいかもしれない。ナンデール大学の学生会は闘争継続を決議したが、全国組織はいったん闘争を終了する方針のようだ。

CPE撤回闘争では、ビラまき、デモは当然のこと、学校封鎖、郵便局区分センターの包囲、ポワチエでは交通封鎖、経済団体への押しかけ、保守派議員への要請など可能な限りのことをおこなった。メディアは「政府は情勢をコントロールする能力をなくしている」とコメント。

ルモンド・ディプロマティークの編集長、イグナシオ・ラモネは、「病にあるフランス」という文章でこういった。「フランスは混乱している国だ、といわれるが、そうではない。フランスは「抵抗する国」なのだ。多くの労働者達が金融独裁に抵抗している。社会的連帯はフランスの根本的性格である。CPEはこの社会的連帯を掘り崩すものだ。だから反対しよう」と。

質疑応答

非正規雇用は?
くわしい数字は分からないが、ワーキングプアーは、イギリスなどに比べて少ない。

失業李はなぜ高い?
企業の合理化のせいだろう

組合組織率10%程度で300万人の動員?
組合に入っていなくても、職場代表制選挙などで組合支持がある。うちの職場では、組合員300そこそこだが、選挙では2700票あつまる。

地域で運動が始まったのか。ナショナルセンターの地域支部は? CFDTなどは、中央が決定しないと地域闘争に入らないが、SUDは地域支部独自で決議をあげたり活動に参加したりしている。

インターネットを活用した?
青年はそうだろうが、労組ではそうでもない。

青年は個人主義だといわれていたが?
青年の運動はずっとある。86年教育法改悪反対の取り組み、94年にも青年の雇用改悪の策動に抵抗する運動、2004年には高校生の巨大なたたかい、そして反CPE。青年には不満を政治的な回路につなぐ何かがある。SUD労組は青年が35%。かれらはみな低賃金で、月13万円程度で雇用されている。デモやストで賃金の少なくない部分を失うが、それでも闘争がはじまると非常に積極的に参加する。

学生がたちあがる火種はあった。ナンテール大学では教員や研究員のリストラがすすんでいた。学生も豊かではない。65%が苦学生。ある統計では学生の30%が貧困ラインいかの生活。またインターシップ制度で学生のうちから企業で見習いとして働かされ、正社員よりも働かされる。そういう不満があった。50万人のデモがあったときには、35万人が学生だった。

フランスは例外か?
そうではない。イギリスでもドイツでも大きな労働者のデモ。イタリアではベルルスコーニ政権が倒れた。南米でも革新的な政権が誕生しつつある。フランスは決して例外ではない。

メディア以外で情報をどのように取捨選択するのか?
今回の場合は、学生はやはり学生集会でのディスカッションだろう。


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