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ニューヨーク大学非常勤ストライキ:雇い止めの脅威に抗して
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[写真はニューヨーク大学図書館前のピケ:photo from Local 2110 home]


学長による雇い止めの脅しに抗してスト続行:ニューヨーク大学学院生非常勤講師たちの闘い

2005年11月8日、リベラルなニューヨークを代表する大学である私立ニューヨーク大学(NYU)で、大学院生非常勤講師たち約1000人が労働組合の認知と団体交渉の再開を求めてストライキを始めてから、まもなく一ヶ月が経とうとしてます。私もこの前、NYUメイン図書館前で交代でピケをはる非常勤たちの支援に行きました。明日学長によるスト参加者パージが始まるようですが、この間の経緯を簡単に書いておきます。

非常勤たちはクリントン政権時の全国労使関係委員会(NLRB)による私立大学は非常勤講師の団体交渉を認めるべきとの決定に基づき、全米自動車労組(UAW)ローカル2110(GSOC)に組織され、大学側と交渉してきました。しかしブッシュ政権下で変質したNLRBが昨年出した、大学は彼らと交渉しなくてもいいという決定を盾に、2005年8月NYUは非常勤組合を認知しないと決定しました。11月27日、セクストンNYU学長はストライキを続けている非常勤たちがもし12月5日までに仕事に戻らなければ、支払い取りやめと雇い止めをするとの声明を発表、12月1日AFL・CIOスウィーニー会長やUAW会長らを含め数百人がNYUスト支援のためNYU前ワシントンスクエアに集結。同時に、学長のやり方に反対するNYU教官有志グループ約200名が、大学がスト参加者懲罰をするなら入学試験業務や成績判定業務といった大学の根幹業務の一時停止など、ストライキへの連帯行動も辞さないと発表、実際に社会調査の授業の一環としてピケに「参加」する教官も現れ、怒った当局側は大学を破壊する行為だと非難しているといった状態です。地元紙やインディ系メディアでも大きくとりあげられており、大学側を弁護する教官とユニオン代表の大学院生が激しく論争を展開、NYUがここまであれたのはベトナム反戦以来だとも言われています。非常勤側は罰則期限である明日以降も組合認知を求めてスト続行を決定しているので、もし本当に雇い止めなどが決定がされれば、2001年に私大として初めて大学院生非常勤組合と労働協約を結んだNYUは、今度はスト潰し・ユニオン潰しの大学としての歴史に汚名を残すことになるでしょう。

大学側の主張は、大学院生非常勤は雇用労働者ではなく奨学金の支払いのようなもの、あるいは訓練生としての業務は教育プログラムの一環であり従業員ではなく、したがって交渉組織としてのユニオンを認めないというもの。実際には現在の大学は非常勤講師に依存しきっていて、非常勤は訓練生というよりもフルタイム教官と同じ仕事を担っています。たとえ学生や訓練生としての属性を同時にもっていたとしても雇用している以上は労働者性を否定する根拠にはならないと思うのですが、こういう論理破綻が大学関係者から支持される背景には、教育のビジネス化と教育産業全体の競争激化が背景にあると言われています。アメリカの大学は今や一握りの有名教官と大多数の非常勤で成り立っているようなものです(同様に職員の中にもパートや非常勤、清掃のように外注化された人々がたくさんいます)。大学がますます非正規雇用に依存するようになっている中、せっかく有名教授以外を安上がりにしてきたのに従来のフルタイム職の組合のように交渉されてはたまらない、というのが大学経営者の本音でしょう。大学ビジネスの成功の秘訣はこの格差構造にあり、非常勤への労働者性の否定はその立場からするラディカルな解決策なのです。

大学側ももちろんムチばかりでなくアメも出してきています。先の学長声明では、今後は非常勤講師個々人との契約(個人事業?)を明示すること、賃上げ、医療保険適用や学費免除等の継続の約束を示唆しています。しかし非常勤側はユニオン認知なしのベネフィットは将来すぐに切り崩されるとしてスト続行を決定しました。

ちなみに私のいる公立大学では大学院生非常勤はフルタイムとともに教職員組合のメンバーとして認められてはいますが、正直いって大学の公私間財政力格差が給与格差に影響しています。財政力のない公立がユニオンを認め、財政力のあるNYUのような私大が都合のいいときだけ金にものを言わせて非常勤ユニオンを閉め出そうとしているのは腹立たしいです。ブッシュ政権の間はNLRBのバックがなく厳しいですが、私大の非常勤たちには何とか交渉権を勝ち取っていってもらいたいです。



UAWローカル2110(GSOC)のホーム

ピケの様子(写真集)

TV番組での特集(学長派教官とユニオン側院生の論争)

11・28学長声明 by NYU President John Sexton



New York, Dec. 4, 2005

JNK


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