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名古屋コラム

郵政首切り20年・名古屋哲一の月刊エッセイ

 儲け主義に走ってはいけないのだ!

 メガネ屋さんの70歳くらいの店主、物腰柔らかで上品さが内部から滲み出てくるような印象を受ける。「人は見かけで判断してはいけない」とは言うものの、勤め始めたばかりの若者よりはベテランのプロの趣があり信頼してしまうのはやむを得ない。

 フレームを幼児にグニャッとされたので調整してもらいに立ち寄った。5分ほどで「ハイ直りました。メガネをおかけになってみてください。ずいぶん違うでしょう」と、さすが自信たっぷりに言う。この時ボクは「あれっ」と思った。たしかこのメガネを買ったときには3回ほどかけなおしをさせて「個人差がありますからね。こういった微調整のできない店が最近は多くなりましてねえ」とのたまっていたはずだ。今回は微調整無しで済ませてしまうつもりらしい。

 微調整の手間ヒマの代りに店主は「先ほど、裸眼のほうが文字を読みやすいとおっしゃっていましたが、遠近両用メガネに新調なさったらよろしいですよ」と親切に勧めてくれる。「このメガネ、遠近両用なんですけど」とボク。「ああ、それじゃあ度が合っていないんですねえ」と店主。

 ボクも人が悪い。「えっ、度が合っていないんですか?」とわざわざ聞きなおす。「そうです。度が合っていないんですよ」と、ボクに同情するように言う店主。この「答弁」を確認してからボクは言ったのだった。「このメガネ、この店で作ってもらったんですけれども・・・」。

 さすがはベテランの店主、たじろいだのはわずかに0.3秒、落ち着いた声で「何年ほど前にお作りになられたのですか?」と尋ねる。「2年くらい前ですけれども」とボク。「ああ、2年も経ちますとねえ」と言っただけではない。続けて店主は「2年おきくらいに作りかえるのが一番よろしいんですよ」と親切に且つ断固として新規購入を勧めてくれるのだった。

 「2年前作ったときに既に裸眼のほうが文字は読みやすかったんですよ」。普段、郵政官僚と全逓本部以外には相手を窮地に追いやる発言を差し控えるボクなのだが、このときは言ってしまったのだった。だがベテランでプロフェッショナルの店主は、今度は1.3秒たじろいだ後に、「ああ、あなたはお若いですからねえ」とのたまう。久しぶりに「若い」と言ってくれる人と巡り会えたのだが、ちっとも嬉しくはなかった。そして「歳をおとりになってから急に遠近両用にすると危ないこともありますから、多少不都合でも今のお若いうちから遠近両用にお慣れになっていたほうがよろしいかと思います」と、親切に且つ断固として新規購入を勧めてくれるのだった。

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教訓その一。人は見かけで判断してはいけない。

教訓その二。店主の話は表面上は何とかつじつまを合わせているが、最初の言葉「遠近両用にすれば文字が見やすくなる」と、最後の言葉「お若いから見えなくても仕方ない」とは矛盾し、嘘はいつかは暴かれ、店主はボクという「上客」を失った。

教訓その三。公共事業に限らずほとんどの職業は民間であれ何であれ皆、「公共性」や「社会的有用性」や「自身の労働の中身を問う」を携えているのであり、儲け主義に走ってはいけないのだ!

(このメガネ屋さんはそれなりの店構えであった。競合店の儲け主義につぶされないためには相手をつぶさなければ生き残れない修羅場をくぐってここまで来たのかと思うと、同情に値する。ただし同情すべきは、つぶされた競合店や高額メガネを売りつけられた客のほうだが)。

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 4月発足の郵政公社では、便箋・筆記用具などを郵便局で売り出すという。売る以上は利潤追求へと進み、ただでさえ多忙・多様過ぎる窓口での労働強化・間違い増加へと至るだろう。民営化後のJR大資本による駅構内の「商売上手」は、鉄道の安全性・確実性のナイガシロ、駅前商店の閉鎖や衰退へと至っている。「儲け主義はいけない」というメガネ屋さんでの教訓に逆行している。 

                             名古屋哲一(4・28免職者)

郵政九州労組・郵政近畿労組大阪北「機関紙1月末号」掲載

*タイトルはレイバーネット編集部


Created byStaff. Created on 2005-09-04 20:41:00 / Last modified on 2005-09-29 06:44:51 Copyright: Default

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