本文の先頭へ
LNJ Logo 木下昌明の映画の部屋・第149回
Home 検索
 


●舩橋淳監督『フタバから遠く離れて』
町長の“悔悟”と牧場主の“覚悟”―「原発の町」を逃れた人たちの今

「3・11」から1年半――。福島原発事故を逃れた人々はどうしているのだろうか。

 これまで福島県双葉町の避難民を題材にしたドキュメンタリーを2本みた。佐藤武光監督の『立入禁止区域 双葉〜されど我が故郷』では、白い防護服に身を固めた監督が、事故直後の人気のない町内をさまよったり、県内と県外に避難した者同士の確執をとらえていた。堀切さとみ監督の『原発の町を追われて〜避難民・双葉町の記録』では、埼玉県加須市の旧騎西高校(廃校)に役場ごと避難してきた人々に焦点を当て、彼らの切ない思いを伝えていた。

 これから公開される舩橋淳監督の『フタバから遠く離れて』も、同じ廃校に暮らす避難民の日常をとらえているが、そこからも去っていく人々を移り変わる四季の静謐(せいひつ)な画面のなかに浮かび上がらせている。事故直後は1415人もが避難し、“ノアの方舟”のようだった校舎も、半年余りが過ぎた秋には673人に減った。役場のホームページによると、避難先は全国に及び、現在186人(10月1日現在)が同校に残っている。

 井戸川克隆町長が、原発誘致の歴史を苦渋の表情で語るシーンは考えさせられる。かつて福島第1原発5、6号機の建設で巨額の「原発マネー」を得て町は潤い、「原発はいいなあと思った」と。だが、年々カネが入らなくなり、財政破綻に追い込まれて、やむなく新たな建設承認に踏み切った、その原発経済のしがらみから抜けだせないからくりを語る。「原発は罪(ざい)の方がものすごく大きい。誘致そのものが失敗だった」と悔やむ。

「希望の牧場」のシーンも印象深い。ここの牧場主は、カネにならない被曝(ひばく)した300頭の牛の面倒をみている。彼は牛と運命を共にする覚悟を吐露する。近隣の牛舎を案内してもらうと、餓死した大量の牛がミイラ化している。その惨状に息を呑む。これでも原発を推進しなければならないのか――人類の明日が予感されて暗然となる。なお、音楽は坂本龍一。(木下昌明/『サンデー毎日』 2012年10月21日号)

*映画『フタバから遠く離れて』は10月13日より東京・オーディトリウム渋谷ほか全国順次ロードショー。


Created bystaff01. Created on 2012-10-15 14:04:02 / Last modified on 2012-10-15 14:05:39 Copyright: Default

このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について