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LNJ Logo 木下昌明の映画の部屋・第133回
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●ヨアヒム・チルナー監督『イエロー・ケーキ』
原発事故だけにとどまらない夢のエネルギーの実像を暴く

 原発事故が起きてから次々と放射能の恐るべき実態が明るみにでてきた。なかでも使用済み核燃料の捨て場所がなく、放置されたままであることが『100,000年後の安全』などの映画で明らかになった。さらに今度、燃料のウランが採掘段階からすでに自然環境を破壊し続ける有り様をドキュメントした映画が緊急公開される。

 ヨアヒム・チルナー監督の『イエロー・ケーキ クリーンなエネルギーという嘘』がそれだ。イエロー・ケーキとは精製したウランの黄色い粉末のことで、これが原子力発電のもとである燃料棒となる。

 旧東ドイツ出身の監督は、南部のチューリンゲンとザクセンの2つの州にわたるウラン採掘現場をはじめ、5年の歳月をかけて世界の主な鉱山を調査し、そこでの知られざる歴史など暴き出している。

 社会主義時代、秘密にされていた独ソ採鉱会社ヴィスムートのウラン事業は、ドイツ統一後に明るみにでた。ここで40年間もウランを採掘・精製し、すべてソ連に送っていた。労働者は12万人働いていたが、危険性は知らされず、多くが肺がんで亡くなったという。この地に1000以上の大小のボタ山がある。冷戦時代の核実験競争の背景もここからのぞきみえた。

 映画は、上空のヘリから草も木もない汚泥むきだしの大地の全景をとらえたあと、露天掘り跡を埋め戻すという気の遠くなるような作業を撮るところからはじまる。ここで採れたウランは広島型原爆の3.2万個分に相当し、残りの99%は放射能まみれの“無用の鉱物”という。政府は一帯を危険地域に指定している。

 これはドイツだけの問題ではない。ドイツと重ねて世界最大級のウラン採掘国・ナミビアやオーストラリア、カナダ(ここはヴィスムート社の米国版だ!)などでの無残な自然破壊もとらえている。――私たちは、「事故」にばかり目を奪われるが、映画は原子力がその出発点から人類を破滅に導くエネルギーだということを教えてくれる。(木下昌明/『サンデー毎日』2012年1月29日号)

*映画『イエロー・ケーキ』は1月28日より渋谷・アップリンクほか、全国順次公開。


Created bystaff01. Created on 2012-01-24 10:46:30 / Last modified on 2012-01-24 10:48:05 Copyright: Default

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