木下昌明の映画の部屋・90回 | |||||||
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時代が本物の価値を磨き抜く 「花田清輝と大西巨人」の世界花田清輝をご存じだろうか。『サンデー毎日』は草創期に「大衆文芸賞」を設けていた。それに彼は入選し、賞金で積もる借金を返したという逸話がある。戦時から戦後にかけてユニークな思想と創造力で評論らしからぬ評論や小説や戯曲を数多く発表し読者をひきつけたひとである。『復興期の精神』『アヴァンギャルド芸術』『泥棒論語』などどれもが代表作で、常に時代と切り結んできた。 今度、シアターX(カイ)が〈「花田清輝的、きよてる演劇詩の舞台」春祭り2010〉と銘打ち、花田の『ものみな歌でおわる』や『小説平家』の一部を自在に改変して上演する。 『ものみな歌でおわる』は、日本でどうして歌舞伎が誕生したのかを芝居によって解き明かす。その昔、日生劇場の柿落としのために書かれ、上演されたものだ。今回は「おくにと山三」と題しての上演だが、名古屋山三郎が愛する出雲の阿国に「赤ん坊をうむのは誰にもできることでござれば、われらは力をあわせて、カブキ芝居をうみだそうではござらんか」とその思いを断ち切るセリフが有名だ。 また『小説平家』の中の「大秘事」の章を基にした「勝ってたまるか 剣振丸」はサーカス芸も使っての上演だ。冬季オリンピックで勝つことばかりに熱狂していた日本人もしばし曲芸のダイゴ味を味わい、「負けること」の大切さ、「不退転の必敗の精神」がいかなるものかを学んでほしい。 さらに祭りのフィナーレには大西巨人の大作『神聖喜劇』の演劇版が登場する。花田と大西は、筆法はまるで違うが、日本の新しい文化をうみだしてきた僚友でもあった。 昨年秋、日大芸術学部の学生たちが取り組んだ『神聖喜劇』の初演をビデオでみたが、その奇想天外な展開には舌を巻いた。これまでシナリオ化やマンガ化はされたが、演劇など不可能視されていたのに若い人たちは大胆な発想の転換で換骨奪胎をはかったのだから驚く。(木下昌明/「サンデー毎日」2010年3月21日号) *花田清輝(右)と大西巨人。3月16〜28日、東京・両国シアターXで上演。問い合わせは 03-5624-1181 Created bystaff01. Created on 2010-03-17 11:02:35 / Last modified on 2010-03-17 11:29:48 Copyright: Default |