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●木下昌明の映画短評〜『サンデー毎日』より

日本で苦戦の「大ヒット作」
太陽政策と韓国映画の関係

 韓国では800万人を動員したという「トンマッコルへようこそ」は、映画評論家の 間でも評判になっていたが、いざ日本でフタを開けてみると「四面楚歌」の状況で苦戦 を強いられているという。実際、映画館に出かけてみると、観客は少ない。
 映画は朝鮮戦争時代の話。山奥の平和な村に北朝鮮の人民軍、南の韓国軍、米軍の兵 士たちが迷いこむ。初めは一触即発だった兵士たちだが、「腹いっぱい食べて」、いつ しか「戦争を知らない村人の生活」にとけこんでいく……。 「そんなヤ夢物語ユのような世界があるものか」と誰もが思うが、幻想的で牧歌的かつ 寓話風に描かれていて、それはそれで楽しめるのだが、折あしく北朝鮮が核実験を行っ たことで、映画は“絵空事”に見えて反発を買ってしまったわけだろう。南の「太陽政 策」が内外から批判にさらされているのと同じ理屈に違いない。
 ただ、映画に限ってみると「太陽政策」は北朝鮮よりも南のほうにその恩恵があった ように思える。例えば、南北会談の開かれた年には、板門店を舞台に南北兵士の友情を 描いた「JSA」(00年)がつくられ、それ以降は北の兵士をヤ恐怖ユの対象ではなく 、同じ人間・同胞として見る見方に変わっていったからである。
 その一方で、「ペパーミント・キャンディー」(99年)のように、南でも軍隊が光州 市民を殺したり、また「シルミド」(03年)のようにヤ金日成暗殺部隊ユをつくり、そ れが不要になると部隊員を殺したり……といった非情な歴史も掘り起こすようになった 。そこに文化の成熟がみられた。
 よく「対立物の相互浸透」という言葉が聞かれる。相手を「独裁だ」「武装しろ」と 叫んでいると、自らも相手に似ていくことを意味しているが、そういったカチカチ頭に なりかかっている人は一度、この映画で頭をモミほぐしてみるのもいい。 (木下昌明 ) *『サンデー毎日』11/26号

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ケン・ローチのカンヌ映画祭
“最高賞”ってどんな映画?

 いま、世界で注目を集めている映画人の一人に、ケン・ローチ監督がいる。今年度の カンヌ映画祭では「麦の穂をゆらす風」でパルムドールを受賞した英国人。このタイト ルは、恋人を殺され、独立のために戦う若者をうたった「アイルランドの伝統歌」にち なんでいるという。
 ローチは「高松宮殿下記念世界文化賞」の受賞者として3年前に来日したが、その際 、旧国鉄の争議団とイラク反戦のグループに賞金の一部をカンパしたことはよく知られ ている。また会見で「あなたは左翼ですか?」との質問に、「それは、ローマ法王にあ なたはカトリックですか?と聞くようなものだ」と答えて、会場をわかせた。
 同映画は、英国の植民地だった1920年のアイルランドが舞台。トップシーンでは 若者たちがヤハーリングユというスポーツに興じているが、その中に独立運動の指導者 となるテディ、そしてロンドンへ医学を学びにいこうとするデミアンの兄弟がいる。映 画はこの兄弟の関係を中心に、若者たちが武装闘争に身を投じ、勝利するストーリーで 展開するが、ヤ独立ユは英国王に拝跪する屈辱的なものだった。その結果、次第に仲間 同士が妥協派と非妥協派に分かれ、殺し、殺される関係になっていく……植民地から独 立し、ヤめでたしめでたしユの映画ではない。
 デミアンが、自分たちのアジトを密告した友人を殺すシーンは強烈だ。人を救う医者 が人を殺していいのか?
 映画は、兄弟でさえ相争う政治の非情を問うているが、それと同時に、暴力によって 闘いとったヤ独立ユで新しい社会を築けるのかということも問いかけており、それが、 今日のイラクなど武力闘争に明け暮れる国々への問いかけになっている。11月18日から 銀座・シネカノン有楽町ほかで公開。 (木下昌明)
*『サンデー毎日』11/19号


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