本文の先頭へ
LNJ Logo 韓国:亀尾工業団地の変化と崩れつつある朴正煕神話
Home 検索
 


亀尾工業団地の変化と崩れつつある朴正煕神話

[ワーカーズ人権の場所]労働組合を諦められない労働者たち

ミョンスク(人権活動家) 2018.12.12 11:12

[出処:キム・ヨンウク]

思ったより遠くなかった。 KTXで金泉亀尾駅まで、ソウルから1時間半、駅から自動車で30分で亀尾工業団地に到着する。 技術と運送手段の発達で、私たちの距離感覚は時間感覚と入り乱れたる。 KTX金泉亀尾駅で民主労総慶北本部のペ・テソン教育局長と会い、亀尾工業団地へと向かった。

亀尾ICをすぎると小さな川の反対側にきれいな道路が見える。 どこの産業団地にも負けない広くきれいな道路と工場の建物が見える。 「朴正煕(パク・チョンヒ)体育館」という表示の反対側にあるKECの工場へと向かった。

亀尾工業団地は1969年から亀尾国家産業団地(以下亀尾産団)が作られ、5つも産団がある。 蔚山、昌原に続いて3番目に大きい工業団地だ。 2020年に第5産団(283万坪)が完工すると全国最大規模の産団になる。 1973年に造成が完了した第1産団はコオロン、金剛化繊、東国合繊などの大規模繊維会社が入った。 その後、金星(今のLG)、サムスン、大宇などの電子業種の大企業が続々と入った。 1982年に第2産団が完工すると主要輸出品がカラーTVに変わり、半導体と通信機器などの先端産業が場を占めた。

[出処:キム・ヨンウク]

1997年にはIMFと工場海外移転などがあったが、どういうことか産団の造成は続いた。 「ガラガラ工団」という修飾語が亀尾工業団地につけられるほどだが、 亀尾市は産団を造成し続けた。 来年完工予定の亀尾第5産団の造成に亀尾市は2008年から1兆5千億ウォン以上の予算を投入した。 それでも分譲率は15%だ。 景気低迷だと言いながら労働者を整理解雇で追い出しながら、産業団地建設とは。 経済論理でも分からない。 産団造成で利益を上げるのは建設資本だけだ。 それで無理な産団造成事業に対する批判は前の地方選挙の主要な話題であった。

産団を作り続けた政府は、工場がガラガラだとし、「構造高度化」という名で不動産投機をあおった。 構造高度化という名で労働者を追い出そうとした所がまさに亀尾産団入居1号企業であるKECだ。 工場の遊休地にデパートとホテルなどをたてる計画だった。

車がKEC前に到着した。 工場の中の風景はまるで散歩道のようだった。 工場の正門から、よく手入れされた木々が二列に並ぶ。 ここにデパートをたてるということだ。 ペ・テソン局長の話によれば、在日同胞出身の創業者が韓国東芝を作った時、 朴正煕から安く広い敷地を得たおかげだという。

[出処:キム・ヨンウク]

「当時は1坪150ウォンで20万坪を収用しましたが、 今は1坪300万ウォンなんです。 それで市民が構造高度化反対闘争をした時は、とても怒りました。 自分の土地が収用された人々は腹が立つでしょう。 150ウォンで収用されたのに今は会社がデパートをたてて大金を儲けるということですから。」

労働者と市民の努力で、ひとまずKECの売却と構造高度化は阻止した。 2010年から始まった会社の労組弾圧が、実は構造高度化で金を稼ぐための事前作業だったということも明らかになった。 ペ局長の話によれば、2010年の工場閉鎖前後に何度か大邱慶北地域関係機関対策会議が開かれ、 工場敷地を売るためには労働者たちを整理しなければならないので労組無力化をした。 KEC使用者側が22年間続けてきた協力的な労使関係を破壊した理由は、土地投機で金を稼ぐためであった。

[出処:キム・ヨンウク]

女性が労働組合の中心に入る

KEC支会のイ・ジョンヒ支会長が労組活動をすることになったのも、 2010年6月30日の委託警備400人を動員した労組弾圧以後だという。

「その時、私は寄宿舎で6年暮らし、会社の前で自炊していました。 夜明けに用役ならず者が攻め込んだという電話を受けて、 スリッパを履いて工場の前に駆けつけたのですが、 姉さんたちが着替えもできないまま追い出されていました。 私たちが抗議すると用役ならず者が消火器を噴射しました。 姉さんたちから聞いたのですが、私たちより二三倍も図体が大きい黒服の男たちが、 寝ている所に静かに入ってきたそうです。 扉をあけて「お前たちみんな出て行け」と叫んだそうです。 寄宿舎で下着で寝ているのに、夜明けに突然侵奪されたのですから、本当に恐ろしかったでしょう。 ある人はぶるぶる震えながら閉じ込められていて、 ある人は出て行かないというと胸ぐらをつかまれて引き出され、修羅場だったそうです。 本当に惨めでした。絶望的で涙も出て。 まだその場面を忘れません。」

なぜ男子寄宿舎ではなく女子寄宿舎だったのだろうか。 当時、寄宿舎には女性が多く、男子寄宿舎より女子寄宿舎の方が正門から近かった。 しかしそれだけだろうか。 79年のYH貿易女性労働者による新民党舎占拠座り込みの時に強行された警察暴力を思い出した。 国家権力と同じように資本の暴力も性別化されて作動する。 女性労働者は物理的に制圧することも簡単で、 恐怖を利用すれば二度と労組活動が出来なくさせられるだろうという計算だったのだろう。 それで人員削減の時も労組弾圧のために男性の管理者数は減らさなかった。 しかしその計算を女性労働者が騒然とさせた。 女性労働者の方が熱心にストライキ闘争をした。

[出処:キム・ヨンウク]

その結果、昨年KEC労組で初めて女性代表者が誕生した。 金属労組亀尾支部KECイ・ジョンヒ支会長は、労組員の気持ちが集められた結果だという。 2010年までは労組の事務室に女性が来ることも殆どなかったという。 労組の女性幹部も総務部や女性部に限定されていた。 もちろんKECだけの問題ではない。 民主労組であっても労働組合の男性中心性は相変らず現在進行形だ。

「労組に変化が必要だという思いは以前、労組の役員すべて同じでした。 新しい流れを作らなければなりませんから。 御用労組に若い人もいましたし。 労組では私が若い軸に属するので女性支会長になったのです。 女性支会長としてできることを幅広くしながら組織拡大も実現したい。」

以前は女性代議員が1人もいないほどだったが、今は代議員のほとんどが女性で、主席副支会長も女性だ。 特に今年、KECは会社の性差別問題を公論化させた。 KECは入社時から女性よりも男性の方が一段上の職級から始まる。 女性の昇進はJ等級で止まる。 18年間働くイ・ミオク首席は同じ時に入社した男性の同期より昇進が遅く、 賃金格差が50万ウォンにもなる。 2017年、KEC男性平均賃金は5318万ウォン、女性は3367万ウォンで、賃金格差は2000万ウォン近い。 大々的な言論報道にもかかわらず、会社は相変らず性差別政策を固守している。 性差別を是正するために戦うべきことは多い。 だからだろうか、イ支会長は労働者にとって人権の場所は「労働組合」ではないかと言う。

空っぽの工場、それでも相変らず輸出3位の工場団地

われわれはKECを出て、金剛化繊がある工場へと向かった。 金剛化繊は2005年から空の工場だ。 ペ局長は亀尾工業団地の労働運動はIMF以後に蘇っているという。 多くの企業が敷地を売って工場を移転したり廃業をしたので、 それだけ戦いが激しくならざるをえなかった。 原糸を作る3大業者である韓国合繊、金剛化繊、コオロンの闘争がすべてそうだった。

彼は1999年10月に金剛化繊労組を作ってすさまじく戦った時のことを話した。 「以前は新平ロータリーの前の冶隠路に労働者が集まると基本は1800人」だったという。 彼の話によれば87年以後、亀尾に労組が大挙結成され、90年代には民主労総組合員が1万 2000人だったが、工場移転と廃業などで今は3千人だ。 ほとんどが韓国労総の事業場だが、労働者の利害を代弁できていないという。 今は旭硝子のような非正規職が労組運動の活気を続けている。 旭非正規職支会のチャ・ホノ支会長は金剛化繊出身だ。

[出処:キム・ヨンウク]

工場に到着すると工場の門が開いている。 工場の敷地を買いに来る人が見えるようにしたようだ。 機械がなくなった工場は、労働の記憶を召喚しようとするかのように、 小さな騒音でも大きな反射音をあげた。 韓国化繊の隣が408日の煙突座り込みをしたチャ・ガンホがいたスターケミカルの工場だ。 今はスターケミカルの子会社、ファインテックのパク・チュノ、ホン・ギタク労働者がソウル木洞エネルギー公社の煙突で1年間座り込みをしている。 スターケミカルを買収したスターフレックスは、ファインテックという幽霊会社を作って労働者を欺瞞し、工場の機械まで売ってしまった。 チャ・ガンホが座り込みをした煙突は爆破され、 工場を部分売却したのか敷地の中間に道路を通す工事の真っ最中だった。 闘争の痕跡は壁に煙突座り込みを支持する文だけだ。

空っぽの工場は土地投機と企業売却で金を稼ごうとする投機資本の断面だった。 2017年の亀尾工業団地輸出額は283億1800万ドルで製造業分野輸出に莫大な寄与をしているが、 労働者の暮らしは容易ではない。 2000年代以後、輸出1位から3位に落ちたことだけを強調する。 どこかの工団のように亀尾市も労働者たちの都市だが、 政治家たちは企業主のための政策に力を使う。 ペ局長は亀尾は労働者の都市だとし、 今年の最低賃金算入範囲改悪に対するチラシを配った時も労働者が列をつくって受け取ったという。

[出処:キム・ヨンウク]

空っぽの朴正煕生家、崩れるイメージ政治

われわれは亀尾参与連帯のキム・ビョンチョル事務局長と会って、 朴正煕(パク・チョンヒ)の生家がある上毛洞に行った。 また名前も朴正煕路に変わっているそこには人が殆どいなかった。 平日だからそんなこともあるのだろうが、特別な日は違うのではないだろうか。 昨日ここにきたというキム局長がため息をつきながら話した。

「昨日は朴正煕生誕日なので朴槿恵(パク・クネ)支持者が集まったのですが、それほど多くありませんでした。 230台が入るセマウルテーマ公園記念館の地下駐車場には私の車も入れて19台が全てでした。 このように900億で展示したのに内容物もなく、観光客もいません。 朴正煕を偶像化しようとしていますが、 亀尾市でも受け入れられないんです。 税金でこの程度しかできなかったので、公開するのも恥ずかしいのでしょう。」

生誕日とは、まるで偶像化がいかに激しいのか、名前でもわかる。 朴正煕の生家には朴正煕の業績だという セマウル運動と京釜高速道路などが写真と文で展示されていた。 朴正煕大統領夫婦の姿を実物大で立てられている。 近代産業化構築がすべて朴正煕の成果だと称賛した。

生家をすぎて、セマウルテーマ公園へ通じる道に、偶像化の象徴である朴正煕の銅像が見えた。 銅像は頭が折れるほど大きかった。 テーマ公園にある建物は雄壮だが、展示物は朴正煕の生家で見たものを二番煎じ三番煎じする水準だった。 税金900億がもったいない。 亀尾市は外から来た人が多く、平均年齢37歳の若い都市だ。 ここでは朴正煕の商売は通じない。 そのためか、前の選挙では慶北地域最初に民主党市長が当選した。

崩れていく朴正煕神話を工団の労働者が何で埋めるのか想像してみる。 KEC女性労働者、旭非正規職労働者、彼らだけではまだ足りない工団の未来。 これ以上何が必要だろうか。 それは労働者の感覚が企業主の経済論理で鈍らないこと。 そしてこれ以上、路上に追い出されないように力をあわせて戦うこと、 その上にあるのではないだろうか。[ワーカーズ49号]

[出処:キム・ヨンウク]

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-11-26 21:19:04 / Last modified on 2018-12-18 11:08:55 Copyright: Default

関連記事キーワード



世界のニュース | 韓国のニュース | 上の階層へ
このページの先頭に戻る

レイバーネット日本 / このサイトに関する連絡は <staff@labornetjp.org> 宛にお願いします。 サイトの記事利用について