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「体力テスト」に行ったら御用労組に加入

[ワーカーズ・イシュー2]地労委の主審は進歩派なのに…セブランス病院の不当労働行為を棄却

キム・ハンジュ記者 2018.01.02 10:40

「民主労総に行って何を変えられる? 韓国労総はセブランスで58年にもなるが、民主労総は根がない。 病院が嫌いだというのではないのに、なぜ(民主労総が)あるか。 時給は上がり続けていて、独裁政権時代ではない。 医者のような月給が欲しいのか? 私たち(清掃労働者)がする仕事は決まっている。 みんなそれなりの給料は受け取っている。 だから韓国労総にくれば楽に働けるでしょう。 今日(韓国労総の)加入書一枚書いてください。 本来このようにして集めてはいけません。 (民主労総と)フェアープレーをしなければならないのですが、理解してください」。

▲写真の場所は記事の内容とは関連がありません。[出処:キム・ハンジュ記者]

韓国労総鉄道社会産業労働組合(鉄産労)傘下の延世セブランス病院労組支部長が8月にソ・スクチャ(仮名)氏に伝えた言葉だ。 面接手続きだといっていた体力テストで支部長は韓国労総への加入を強要した。 就職しなければならない立場のソ氏は「はい」という返事しか出来なかった。 彼女はその場で韓国労総鉄産労加入書を作成した。 合格通知が出る前に労組加入をした形だった。

民主労総公共運輸労組ソウル京仁地域公共サービス支部(ソウル京畿支部)に、昨年1月に面接を受けたイ・ミスン(仮名)氏からの情報提供も続いた。 「面接の時、労組をどう思うかと聞き、手の指、足の指は正常なのかと冗談混じりに身体検査をするといいました。 自分たちの中だけで通じる隠語のようでした。 そんなある日、労組事務室に連れていかれました。 韓国労総の支部長が民主労総はデモばかりして、延世大側がみんなクビにする、 (韓国労総に)加入すれば私たちが有利になるようにしてやるといいました。 加入しなくてはいけない雰囲気でした」。

明らかに身体検査だといったのに、韓国労総鉄産労支部長は20分も労組の話だけをした。 イ氏の質問は受けなかった。 彼女は結局強要に勝てず、鉄産労に加入し、支部長は彼女をまた面接の場所に連れていった。 面接官の用役業者所長は黒いズボンの服装で出勤するよう通知した。 合格だった。 まるで韓国労総に加入したから採用されたような感じだった。

イ氏はそのようにして入社してから5日後に会社を辞めた。 働く雰囲気がまったく違っていた。 イ氏は「同僚が用役業者の班長にクビにするなとおべっかを使うが、私はそうしたことはできなかった」とし 「何かするとクビにする用役会社で、班長(管理者)たちはそれを利用して女たちに作業をかけた。 それで班長が見えるとわざわざ廊下を避けた。 私はこうした雰囲気に融和できずにクビになった。 5分で採用され、5日でクビになったようなもの」と話した。

「ワーカーズ」が確保した録音によれば、キム・ヒウン(仮名)氏の場合、 面接官が「指向がおかしかったり身体障害があるかもしれないので体力テストをするが、班長が手伝う」と話した。 キム氏が連れていかれたところも韓国労総鉄産労の事務室だった。 鉄産労支部長が労組の話をし続けるので、キム氏は 「労組に加入しないこともあるのか」と尋ねた。 支部長は「正確に知る必要はない」と言葉を切った。

ソウル京畿支部は録音、情報提供に基づき、こうした用役業者テガBM(株)の不当労働行為、支配・介入の背景を知った。 転末はこのようだった。 2016年6月、病院に民主労総ソウル京畿支部ができると、用役業者テガBM(株)は民主労総を警戒し始めた。 韓国労総鉄産労に組合員を集める戦略が必要だった。 それで2017年に「身体検査」、「体力テスト」を作った。 面接官のテガBM(株)の所長は身体検査を鉄産労支部長、 あるいは組合員の業者班長に任せ、面接者を鉄産労の事務室に連れていった。 ここで鉄産労への加入を事実上、強制した。 面接官のテガBM(株)所長は「身体検査」の場所にいなかったので、知らないと言えばそれまでだ。 不当労働行為を隠す完璧なシナリオであった。

もちろん、テガBM(株)は民主労総ソウル京畿支部には面接の事実さえ通知しなかった。 新入社員が入るとすべて韓国労総組合員だというが、ソウル京畿支部としては別に方法がなかった。 ソウル京畿支部セブランス病院分会は14か月間、新入組合員を受けられなかった。 鉄産労に至ってはホームページにソウル京畿支部脱退書を堂々と掲示さえした。 鉄産労は「フェアプレイではない」という事実を知りつつ「身体検査」を装った「精神鑑定」を続けた。 そうして現在の韓国労総鉄産労組合員は約160人、民主労総ソウル京畿支部組合員は30余人だ。

#1元請の民主労総殺し

民主労総ソウル京畿支部は組合員が130人を越えていた時があった。 2016年7月、セブランス病院労働者約130人が民主労総の扉を叩いた時だ。 労働者たちは毎年最低賃金に苦しみ、休日は1か月にたった2日だった。 会社は高級なマスクを支給してほしいという労働者の要求も無視した。 管理者に「様」を付けずに呼んだことを理由に「始末書」を書かせるパワハラにも耐えられなかった。

そうして民主労総ソウル京畿支部セブランス病院分会が発足してから、労働条件は実際に良くなった。 今年の5月から時給も7800ウォンに上がった。 休日も1か月4日に増えた。 会社のパワハラも少しずつなくなり、労働者たちは言うべき事を言い始めた。 ソウル京畿支部闘争の成果であった。

ソウル京畿支部の組合員数が増え、労働条件が改善されると、 セブランス病院と用役業者は労組破壊工作に着手した。 セブランス病院は用役業者テガBM(株)に「民主労総殺し」を直接指示した。 ソウル京畿支部発足から2か月後、 「民主労総ソウル京畿支部幹部騒乱などは鉄産労委員長にリアルタイム伝える『労労対応』の誘導を望む」という病院の業務日誌が暴露された。 また「民主労総の集会予告、徹底対応を望む」、 「民主労総の不法行為に対する(用役業者の)措置方案の報告を望む」という内容も入れられた。

病院は2016年10月、ソウル京畿支部が病院ロビーで宣伝戦をしたことを理由として 労組幹部と組合員8人を業務妨害で告訴した。 4月にも労組を対象として業務妨害、集示法などの告訴が続いた。 ソウル京畿支部が宣伝戦をするたびに効力停止仮処分申請を裁判所に出した。 裁判所は「スピーカーなどを利用して騒音を誘発する行為」を除き、 病院のすべての仮処分申請を棄却した。

元請がソウル京畿支部集団脱退を暗黙的に手伝った疑いもある。 去る7月、ソウル京畿支部は80人にのぼる組合員からの集団脱退書を受け取ったが、 脱退書の根源は元請事務チームのファックスだった。 ソウル京畿支部としては、元請と鉄産労の関係を疑わざるをえなかった。 鉄産労加入を誘導する「体力テスト」もほぼ同時期に始まった。 ソウル地方労働委員会のヤンヒョン勤労者委員もセブランス病院不当労働行為の件でこの問題について、 「下請の労働者が元請事務チームを通して労組脱退書を提出する事実が理解できない」と指摘した。

[出処:公共運輸労組ソウル京仁地域公共サービス支部]

# 2下請の民主労総殺し

下請企業も民主労総ソウル京畿支部組合員だけを「選んで」困らせ始めた。 現在、テガBM(株)は流動人員としてソウル京畿支部組合員を多く、長く配置している。 労働者たちが「流動」と呼ぶ人員は、一種の修習制度であり派遣制だ。

新入として入社すれば固定業務を与えず「流動」に分類される。 そして病棟、手術室、応急室など、必要な業務があればそこに投入される。 流動人員は自動でさまざまな業務を担当する。 その上、一日に4回ずつ集中治療室、手術室などを行き来したりもする。 また他の労働者が休暇で空席になると流動人員に変える。 ここの労働者たちは「流動」から抜け出して固定業務を担当することを望む。 流動人員の配分は主に用役業者所長と班長が主導する。

ソウル京畿支部の組合員たちは、会社が組合員だけを流動人員に配置して、 民主労総脱退を圧迫していると主張した。 ペク・スミン(仮名)氏は「通常、流動は1か月か2か月程で固定業務を担当するが、 ソウル京畿支部組合員だけは6か月間、流動人員としてさまざまな苦労をしている」とし 「しかし、新しく入社した鉄産労組合員はたった数日で流動から抜けて固定業務が与えられる。 鉄産労に業務上の特典を与え、ソウル京畿支部だけを苦労させるテガBMの戦略」だと主張した。

ソウル京畿支部によれば、現在流動人員約10人のうち4人がソウル京畿支部組合員、 残りは鉄産労組合員だ。 しかし鉄産労の組合員はソウル京畿支部より5倍多い。 割合にすればソウル京畿支部組合員の方が鉄産労より多く流動人員に配置された。

不当配転もあった。 ソウル京畿支部によれば、去る5月30日、テガBM(株)は職員に会社の人事、組織、財務管理とその他営業に関する事項を外部に漏洩しないという「情報保護書」に署名させた。 同月17日、朴槿恵(パク・クネ)前大統領の諮問医だった皮膚科のチョン・ギヤン教授が1審で懲役1年を宣告され法廷拘束された。 一週間後、西大門警察署のパク・センス署長の延世セブランス贈収賄容疑が知らされた。 この時期、鉄産労はチョン・ギヤン教授を処罰するなという嘆願署名を回した。 事実上、朴槿恵(パク・クネ)-崔順実(チェ・スンシル)ゲートをはじめとする犯罪にかかわった病院の人々の情報を漏洩するなという署名だった。

ソウル京畿支部はこの事実を知って、 組合員たちに署名するなと宣伝した。 すぐにテガBM(株)の関係者は業務妨害だと言って彼らを撮影したり、 その日すぐにソウル京畿支部一部組合員の担当業務を換えた。

「手当」を使って民主労総からの脱退を直接懐柔したこともある。 手術室で働くキム・ヨンニェ(仮名)氏は 「用役業者の班長が手術室の危険手当てを2万4千ウォンから4万ウォンに上げてやると言ってソウル京畿支部からの脱退を圧迫した」とし 「集中治療室も危険手当てを上げて、一気に集中治療室労働者9人をソウル京畿支部から脱退させた」と明らかにした。

その上、ある労働者は韓国労総から脱退したという理由で「イジメ」を受けた。 「同僚の1人が鉄産労に不満を抱いて脱退したが、 同じ空間で働く鉄産労組合員2人が言葉もかけず、変な目でにらんで締め出した」とし 「彼は労組のことをよく知っていて、いつもソウル京畿支部に入ってきて手伝ってくれる人だ。 しかし同じ空間で働き、食事をする同僚から除け者にされ、『流動』に分類されることを恐れてソウル京畿支部に加入できなかった」と主張した。

#3 労働委員会の民主労総殺し

「私が見てもおかしいが、決定的な一発がないね?」 セブランス病院の不当労働行為事件について、 ソウル地方労働委員会使用者委員が言った言葉だ。

不当労働行為の録音だけで10本を越える。 元請の支配・介入がわかる業務日誌まで暴露された。 組合員はもちろん、退職者の情報提供まで続いた。 労働委員会は満ち溢れるすべての証拠「決定的一発」とは見なかった。 地労委は12月29日、この事件について棄却を決定した。

当時、勤労者委員として地労委に参加した鉄道労組のヤンヒョン法規局長は 「使用者委員、公益委員は証拠を過度に保守的に判断していないのではないかと思う」と指摘した。 ヤンヒョン法規局長は「録音でソウル京畿支部を弾圧しているという情況証拠はあったが、 労働委員会は使用者の支配介入の意志を証明することだけに集中した」とし 「事実上、使用者が『民主労総を嫌っている』という自白に準じる証拠資料を要求しているのではないかと思う。 また『体力テスト』で韓国労総加入書を書かせたのは事実なのに、 会社と用役業者の間で民主労総への加入を防ぐ共謀とその計画が立証されない点が判決に影響を及ぼしたと思う。 委員の間では『心証はあるが、物証がない』という見解が支配的だった」と伝えた。

実際に、テガBM使用者側は体力テストはたまたま鉄産労支部長、組合員がいてさせたことで、 ソウル京畿支部組合員の流動人員配置は業務上、必要になされたという趣旨で抗弁した。 使用者側は労組どうしのあつれきで争っていたのであって、会社が介入したのではないと一貫した。 そしてこの主張はほとんど受け入れられた。

特に、事件をめぐり、委員の十分な討論がなかったという点も問題だ。 通常、労働委員会でそれぞれの委員は尋問をした後、決定前の休み時間などの私的な場で事件についての評価、見解をやりとりする。 ところで主審をはじめとする委員は誰も口を開かなかった。 ヤン局長は「セブランスはマスコミで大きな注目を集めた事件で、 委員が言葉を慎む雰囲気であった」と伝えた。

棄却の決定で主審になった公益委員は、建国大のチョ・ヨンマン教授だ。 チョ・ヨンマン委員は建国大法学専門大学院の教授で、 進歩学界の人物に分類される。 参与政府の時に民主労総労使関係ロードマップ政策代案事業に参加し、 朴槿恵政権の全教組弾圧反対教授研究者支持宣言にも参加した。

チョ・ヨンマン教授は12月18日、事件をどう評価するかという記者の質問に 「当事者が判決に従わず、事件は中央労働委員会で続くものと理解している」とし 「中労委は別の判断するかもしれない問題なので、 現在事件は終わったと考えないので立場を明らかにするのは難しい」と回答を避けた。

労働委員会の不当労働行為救済申請の認定率は、 2013年11%、2014年10%、2015年18%程度だ。 11月の中央労働委員会と各地方労働委員会の不当解雇・不当労働行為救済申請審判事件認定率は9%に過ぎなかった。 ソウル京畿支部もこの9%には含まれなかった。 主審が「進歩的な労働法研究者」でも不可能だった。 労働委員会だけは不当労働行為を保守的に見た。

失望は怒りになった。 ソウル京畿支部は中央労働委員会の手続きで戦いを続ける予定だ。 まだ雇用労働部ソウル西部支庁の捜査も待っている。 鉄産労-元請-下請の工作により、 ソウル京畿支部セブランス病院分会の規模は小さくなったが、 雰囲気は変わった。 用役業者退出運動も計画している。

原文(ワーカーズ/チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2018-01-07 01:58:38 / Last modified on 2018-01-07 01:58:39 Copyright: Default

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