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最低賃金委員会が守るべき『公益』は果たして何か

[サパ論評]最低賃金1.5%引上げに対して

クォン・ヨンスク(社会的ストライキ連帯基金代表、社会学者) 2020.07.15 09:08

最低賃金委員会公益委員、彼らは'公益'をどう定義するのか

7月14日の未明、最低賃金審議委員会は2021年の最低賃金引き上げ率を1.51%、 時給130ウォン上げた8720ウォンと確定した。 月給(週40時間基準)では182万2480ウォンになる。 韓国労総と民主労総、二大労総の委員が全員退場した中で、 公益委員と使用者委員が集まって決定した。 このようにして決めた理由について公益委員会の幹事は 「今年経済成長率展望値0.1%、消費者物価上昇率展望値0.4%、 勤労者生計費改善分1.0%を合算して1.5%引き上げを決定した」と明らかにした(京郷新聞当日付)。

最低賃金引き上げ率を「経済成長率」と連動させて全員一致で決定したという最低賃金審議委員会の公益委員に聞きたい。 果たして公益委員は最低賃金制度の「公益」をどう定義するのか? 最低賃金の審議で「公益」とはどうであるべきなのか? 経済が良くなかったり床打ちすれば、 最低賃金も共に後退して底をはうようにするのなら、 それがどうして最低賃金なのか! そんな制度をなぜあえて作ったのか。 ただ市場の原理によって最低賃金も決めれば良い。 経済が墜落すれば人も墜落するようにすれば良い。 本当に非情だが、それがまさに資本主義だ。

だが制度として作った最低賃金制度は、 経済成長と市場の原理によって賃金を連動させるのではなく、 労働力の再生産ができる最低生計費を保障するという社会的原則に基づいている。 最低賃金は経済が沈滞期に入ったり経済成長率が下落しても維持すべき 『賃金の最低線』であり、 むしろ経済危機の状況には生存の危機の前に置かれた労働者のために、 さらにしっかり保障するべき『最低』の賃金だ。 だから最低賃金制度は資本主義的な市場法則に対する制御手段のひとつであり、 社会保障制度なのだ。

韓国の最低賃金審議委員会に参加した「公益委員」も、 守るべき「公益は経済成長ではなく、 そして経済成長率によって賃金をゴムのように調整するのではなく、 平均賃金でもない最低賃金地帯に属する「労働貧困層」の人間らしい暮らしを 維持できるように、いかに最低賃金制度を活用するかだ。 それがあえて最低賃金委員会に労働と資本の代理人ではない第3者、 労働と資本の間で独立性を持つと見なされる公益委員をおく理由だ。 そして労働と資本が妥協できないとき、 彼らに最終決定権という強大な権限を付与した理由だ。 ただし公益委員が「公益」に立脚して決めるという前提のもとで。 公益委員は専門家だから公益委員になったのではなく、 労働と資本の間で独立して最低賃金に関する公益を判断する位置に立つ人でなければならないのだ。 もし公益委員が経済成長率の展望値を優先的に考慮して最低賃金を決めるとすれば、 これは国家や資本の代理人にさらに近い視点でしかなく、公益的な視点とは言えない。

今こそ国家が最低賃金制度を陳情活用する時間ではないか

2021年の最低賃金引き上げ率の1.51%、時給130ウォン引き上げた8720ウォンは、 外国為替危機の時(1999年)の2.69%、金融危機の時(2010年)の2.75%より低い 歴代最低の引上げ率だ。 上の論理のとおりなら、今がIMFよりさらに悪い経済状況だが、 では今こそ最低賃金制が制度として重要な役割を果たすべき時だ。

しかもOECDは7月9日に発表した「2020労働市場展望(OECD Employment Outlook 2020)」で コロナ19が金融危機よりさらに労働市場に悪影響を及ぼすと展望した。 これは国家が全力をつくして労働を保護しなければならないというメッセージだと解釈しなければならない点だ。 そしてそれは国家と政府与党がすることだ。 コロナ19は「災害の不平等性」を示す社会的災害で、特に「労働災害」だからだ。

そして実際にいくつかの国はそうしている。 去る6月、ドイツはこれから2年にわたり最低賃金を11.7%引上げることを決定した。 国際通貨基金(IMF)によれば、今年のドイツの経済成長展望値は-7.8%で、 韓国の-1.2%よりはるかに暗鬱だ。 それでもドイツは所得と支出拡大のために最低賃金引き上げを決定し、 これは韓国の8倍に達する。 全国民災害支援金よりも最低賃金の引き上げのほうが重要だと筆者は考える。 IMFはこの展望報告書でコロナ19による経済的な悪影響の程度を比較して、 韓国は他の国家よりもコロナ19影響の程度が特に小さく、早く回復すると評価した。 しかし「国自慢」をする時はこの数値を使いながら、 一方では「国難」という恐怖を注入し、見えすいた脅しをかけている。

だが今が政府が話すように本当に「国難」なのか、これも疑わしい。 例えば7月7日にサムスン電子が発表した2分期暫定実績は、 前分期に対して売り上げは6.02%減少したが、営業利益は25.58%増加した。 前年同期比と比較しても売り上げは7.36%減少したが、営業利益は22.73%増加した。 つまりコロナ19にもかかわらず、 サムスン電子の営業利益は注目に値するほど増加したのだ。

これは米国など海外の諸国でも同じように起きている状況だ。 コロナ19の中で工場稼動を鈍化して生産を中止した中で、 在庫過剰問題が解決され、賃金費用を削減して構造調整で労働力削減を断行する中で、 資本の営業利益など収支改善と利益増加が証券市場活況につながっている。 コロナ19以前の水準の株価を回復している米国ウォールストリート、 韓国の汝矣島証券街は、全く「全地球パンデミック」が襲っている姿ではない。

コロナ19災害は、最も苦しい災害難民と社会的弱者、労働弱者を襲っているが、 資本はむしろ災害の中で国家の景気浮揚策の恩恵を独占し、 戦時経済のような惨事便乗型資本主義の中でさらに富を蓄積している。 韓国の上流層所得が減らずにむしろ増えたという報道も最近あった。

解雇と雇用創出はニューディールで、一つのパッケージだ

ところで最低賃金委員会の委員長は、雇用のために最低賃金凍結 ないし実質的削減を容認したかのように話す。 発表記者懇談会で「雇用」という単語が何と10回も出てきた。疑問だ。 なぜ最低賃金の審議で雇用を第一線で考慮するのか。 最低賃金委員会は物価と社会的生計費、労働力再生産費用を考慮して、 賃金の最低線を決めるのが機構の目標だ。 なぜ優先的に賃金ではなく雇用を考慮するのか。 そんなに考慮するつもりなら、 いっそ最低賃金審議委員会の看板を下ろして国民雇用増進委員会、 あるいは国民雇用維持委員会という名前でまた構成しろ。

最低賃金委員会は「雇用のほうが生計には重要だ」と考え、 賃上げ率をほとんど従来の線で凍結する案を確定したという。 だが果たして賃金を凍結して雇用を維持する交換に対し、 資本が同意でもしたのだろうか? 今回、民主労総委員長が非正規職労働者たちの激しい反発で署名式に出席できず、 不発になった労使政合意案も「すべての解雇禁止」条項をどこにも含んでいない。 賃金凍結を先に受け入れればその後に資本が雇用を維持するという保障はどこにもない。 最低賃金を凍結して雇用を貴重に思っても、 資本が雇用には触らないという保障はどこにもない。

文在寅(ムン・ジェイン)大統領は同日7月14日 「韓国版ニューディール総合計画」を発表して 2022年までに32.5兆(国費19.6兆)、2025年までに73.4兆(国費42.7兆)ウォンを投資して 65万9千個の雇用を創出する計画だと話したが、 既存の雇用を保護措置については話さなかった。 今ある雇用を保護せず、すべての解雇を禁止しないまま、 「ニューディール」という名で新しい雇用65万個を創出するという主張は、 その間に条件がある。「解雇」だ。 解雇されてこそ新しい雇用が創出される。 産業構造調整と国家財政支援を特定産業に集めるし、新しい雇用を創り出すというが、 それが65万個か6万個か分からず、 問題はこれが既存の雇用の構造調整を不可避にするということだ。 解雇と雇用創出は韓国版ニューディールでは一つのパッケージなのだ。

すでにコロナ19危機を理由に基幹産業支援措置によって 数兆ウォンの公的資金を支援を受け取ったアシアナ航空で、 委託会社ケイオーの労働者が解雇された。 解雇はこれから続々と続くだろう。 失業給付が史上最高記録を更新中だ。 そしてその解雇は解約という名前で一番簡単に切れる非正規職労働者、 最低賃金線の労働者に真っ先に通告されるだろう。 つまり最低賃金線にある労働者最低93万人から最高408万人こそが、 一番早く解雇される人たちでもある。 コロナ19の中で雇用の方が生計に重要だということは、事実かもしれない。 だが最低賃金委員会が最低賃金凍結の代わりに雇用を保証することもできないのなら、 最低賃金を生計費基準に合わせて引き上げるのが最低賃金委員会公益委員が今実現するべき公益だ。

勤労者生計費改善分に反映されない最低賃金算入分

しかも2019年の最低賃金法律上最低賃金算入範囲の改正により、 食費などの福祉厚生費と月賞与金が最低賃金に含まれた。 これを最低賃金に合算することになると、 最低賃金引き上げはそれだけ無力化される。 7月14日に決まった来年最低賃金引き上げ額は月2万7千ウォン(総額182万2480ウォン)だが、 食費などの福祉厚生費と月賞与金が最低賃金に含まれると最低賃金の自動減少分はさらに大きくなるだろう。 具体的に、月々の定期賞与金のうち最低賃金月換算額15%を引いた金額は、 来年に最低賃金に算入される。 また、これまで福祉厚生次元で食費を月10万ウォン受け取っていた最低賃金労働者は、 5万4674ウォン(182万2480ウォンの3%)を引いた4万5千326ウォンが最低賃金に算入される。 来年は最低賃金が月2万7170ウォン上がるが、算入範囲の拡大によって 削減される金額がこれより大きい。 つまり、実質的な最低賃金削減だ。 したがって、来年の最低賃金引き上げ率を審議するのなら 算入範囲の変更で実質的に削減される最低賃金の部分を考慮しなければならない。

しかし今回、経済成長率展望値を考慮した後で、 「勤労者生計費改善分1.0%を合算」して引上率を決めたという。 これがどこから出てきた計算法なのか疑問だが、 最低賃金算入範囲の変更による勤労者生計費の減少を考慮した結果がこれか。 最低賃金算入範囲の調整で、これまで最低賃金ではなかったものが最低賃金に含まれたとすれば、 その削減分を最低賃金引き上げ率に反映するのが 「勤労者生計費改善分」という呼称にふさわしいのではないだろうか。 しかも最低賃金は引き下げられる性質のものではない。

これまでに受け取っていた最低賃金が 福祉厚生費、休憩手当て、月別に分けて支払われる賞与金の支払い方式などにより、 月10万ウォン以上の最低賃金が実質削減されるが、 最低賃金月2万ウォン上げることが果たして 「生計費改善分」反映による引上率策定といえるのか。全く妥当ではない。 最低賃金労働者の実質的な生計費改善を最低賃金制度の趣旨のとおりに反映しなかった結果だ。 そしてその後の嵐は民主労総内の最低賃金事業場、非正規労働者、 そして労組加入からも除外され、勤労基準法の適用対象からも除外された 零細事業場の労働者を真っ先に襲うだろう。 また彼らは雇用と雇用保障でも最も脆弱な労働者で、真っ先に解雇される人々だ。 日雇い労働者、特殊雇用労働者に、あなた方の雇用を保障するために 最低賃金引き上げ率を1%台でほとんど凍結(そして算入分を考慮すれば実質削減)することにしたと言えば、果たして信じるだろうか。

民主労総は労働階級のブローカーなのか、民衆の護民官なのか選択しろ

今回の最低賃金引き上げ率がこうして決定されることに最も功績があった一番の貢献者は、 まさに民主労総指導部だ。 民主労総執行部が休業給与減額なども受け入れると言い、 資本の経済危機経営に協力するという労使協力主義的な内容を含む労使政妥協に没頭する中で、 今回の最低賃金交渉の結果は予定されていた。 すでに6月22日「サパ週間ニュースブリーフィング」で話したように、 「民主労総が賃金凍結そのものの提案をしておきながら、 他方では最低賃金1万770ウォン要求案を提出したが、 果たして正規職の賃金凍結を提案して最低賃金闘争ができるだろうか?」と指摘した。 民主労総のキム・ミョンファン委員長は、 最低賃金が審議される世宗市労働部の前に座込場を作ったが、 労使政合意案を代議員大会に付するためにさらに集中した。 どんな真情性があったのか、疑問に感じるほかはない。

だが、最低賃金は民主労総の組合員を超える全労働者、 特に組織労働の外の零細事業所労働者たちに最大の影響を与える事案だ。 同じように、労使政合意案の内容も組織労働を越えた労働階級全体の生存権を決定する内容で、 労働弱者が真っ先に打撃になる内容だ。 ところで果たして民主労総はどんな資格で今、 すべての労働者たちの委任代理人役割をしているのか? 経済危機とコロナ19労働災害の前で、 民主労総は政府と資本と未組織労働の間の「ブローカー(broker)」なのか、 さもなくば全労働階級の代表者(representative)、 さらに民衆の護民官なのかが判明する瞬間が近付いている。

コロナ19労働災害の前で、民主労総は果たして誰の利害のために動くのかを明確にしなければならない。 先に民主労総執行部は、自分が代表してもいない全労働階級に影響する事案について、 軽挙妄動することがないことを切に望む。 そして民主労総の一般組合員が一番最初にすることは、 民主労総の委員長が中央執行委の議決を引き出せないまま、 代議員大会に上程した労使政合意案をきちんと否決したり撤回させた後、 指導部の責任をはっきりと問責することだ。 今は民主労総内の一般組合員の運動が最も渇望されている瞬間だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可( 仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2020-07-23 05:54:07 / Last modified on 2020-07-23 05:54:09 Copyright: Default

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