- 判決の経過と『司法壟断』
今回の判決は、1997年12月24日に今回の事件の原告のうち
故シン・チョンス氏と故ヨ・ウンテク氏が日本の大阪地方裁判所に提訴した後、
日本の大法院にあたる最高裁判所で2003年10月9日に敗訴した後、
2005年2月28日にソウル地方法に提起した訴訟の最終判決だ。
日本での訴訟から21年、韓国の訴訟から13年経って最終判決が出された。
また、解放により強制労働から解放されてから74年目に法的判断を受けることになった。
これまで原告の中で多くの人々が今日を待てずに亡くなった。
この判決は2012年5月24日に大法院が原審判決を破棄、差し戻して、
これにより2013年7月10日、ソウル高等法院が原告に一部勝訴判決したことに対し、
被告会社の新日鉄住金株式会社(新日鉄住金株式会社、以下『新日鉄住金』と略称する)が上告したことに対し、
約5年経って宣告をした。
この判決は、このように数年も再上告事件が大法院に係留されている間、
最近になって前朴槿恵(パク・クネ)大統領、青瓦台秘書室、外交部を一方とし、
大法院長と大法院行政処を他方として裁判に不法に介入した、
いわゆる『司法壟断』、『不法裁判取り引き』事件の実体があらわれている中で
出された。
- 今回の判決の意味と未解決の強制動員問題
今回の判決で、大法院全員合議体裁判所は2012年の大法院判決をそのまま受け入れて認めた。
これにより2013年のソウル高等法院の判決が確定し、
最終的に原告勝訴判決が出された。
ただし請求権協定によって消滅した請求権のうち、
不法行為による損害賠償請求権が含まれるかどうかに関しては11:2の多数意見により含まれないと判断した。
この判決で被害者が持っている反人道的不法行為に対する賠償の権利が認められたことが最大の意味だといえる。
したがって、こうした損害賠償請求権は請求権協定によっては扱われないが、
これに対する日本政府との交渉との追加協定の余地を残したといえる。
さらに2012年の判決と同じように、被告である日本企業の責任を認めることにより、
初めて日本企業の日帝下の侵略戦争中の責任が裁判所の判決により認められたという意味も持っている。
今回の判決は1998年以来、国際労働機構(ILO)の専門家委員会が取っている見解、
つまり戦争時期の強制労働者の問題は日本による強制労働禁止協約(第29号協約)違反であるとしていることと脈を同じくするものとして評価できる。
しかし判決はこうした関連国際法や国際人権法上、
被害者が持っている権利について具体的な検討をしていないという点では不十分だ。
〈参考事項〉
[戦争時期の強制労働者問題は日本軍『慰安婦』問題とともに
1990年代中盤から国際労働機構(ILO)に提起された。
ILOの専門家委員会(正式名称は協約と勧告の適用に関する専門家委員会、CEACR)は
1998年のILOの強制労働禁止協約(第29号協約)に対し
「日本による協約違反があったことは明白」だと結論を出した。
専門家委員会は事件について具体的な救済措置を命令する権限がないが、
2000年に「被害者の年齢と時間の経過を考慮すれば...[日本]政府が
被害者と政府双方が満足できる方式で彼らの請求に対応することを望む」と表明し、
2012年には日本政府が「事件の深刻性と長期にわたっているという性格を考慮して、
被害者と和解のための追加的な努力を続けること、
遅滞なく産業強制労働と軍隊による性的奴隷制による高齢の生存被害者が提起した請求に応える措置を取ることを要望する確固たる希望」を表明した。
今後も専門家委員会は日本政府に対し、持続的に関連情報を提出することを要請している。]
われわれは今回の判決があまりにも長引き、
一足遅くなったとはいえ、
少なくとも原告に賠償を行い、
これまでの苦痛と被害を治癒する道を開いたという点で歓迎する。
しかし今回の判決で過去に被告の会社に強制動員された被害者の問題がすべて解決されたわけではない。
100万人を越えると推測される国外動員被害者と延べ500万人を越える国内動員被害者の問題が依然として残っている。
2004年に韓国の特別法によって進められた強制動員被害に対する調査で、
被害者認定とそれに対する支援金の支払いなどの補償が韓国政府により実施されたが、
相変らず強制動員被害問題は韓日間で解決すべき課題の一つとして位置している。
現在、三菱重工業と不二越などの日本の企業に対する多数の訴訟が韓国の裁判所に提起されている状態だ。
- 判決の履行問題
今回の判決で原告が勝訴したとはいえ、
彼らがすぐに賠償金を受け取れるようになるのではない。
被告の新日鉄住金がこの判決に承服し、判決が命じる通りに原告に自発的に賠償金を支払わなければ、
原告はまた被告会社の財産を探して判決を強制執行させるという難かしい道を歩かなければならない。
すでに日本からこの事件について国際司法裁判所に提訴するとか
裁判の過程に影響を与えかねない脅迫性の発言も聞こえてくる。
また今回の判決に従うとしても、
金銭の支払いだけで被害者らが持っている賠償の権利がみたされるとも言えない。
国際人権法によれば、強制動員のような重大な人権侵害の被害者は
真相究明、責任者の公式謝罪、被害補償、被害者の追慕と記念、歴史教育、再発防止などを要求する権利を持つ。
原告はこれまで被告の会社側の善意を期待して、
判決の債権を確保するための仮差押え手続きを取らなかった。
被告会社は今回の大法院の判決を誠実に履行しなければならないだけでなく、
国際人権の次元で被害者の権利を回復するために、
謝罪などの必要な措置を取り、
強制動員問題の解決のため立派な手本にならなければならない。
こうしたことは単に今回の事件の被告である新日鉄住金だけでなく、
原告の強制動員に関与した日本政府の責任を問うことが必要であり、
韓国政府はさらに積極的な努力を展開しなければならない。
- 強制動員問題の解決のための課題
強制動員問題の解決のための端緒を開いた今回の判決を忠実に執行すること劣らず重要なことは、
残された強制動員の問題を解決するために必要な
国内的、国際的な措置が続かなければならないという点だ。
単に今回の訴訟の原告に限らず、日帝下強制動員被害者は日帝下の募集、
官による斡旋、徴用などの名目で詐欺とその他の強制的な方法により、
自らの意思とは無関係に故郷を離れて海外の日本に連れて行かれ、
一方的に労働を強要され、苛酷な待遇に何年も耐えなければならなかった。
強制労働、または奴隷的労働の被害者は、
1945年8月15日に解放の知らせが聞こえるとすぐ、
彼らは切なく思い描いていた祖国に、故郷に急いで戻ろうとする一方、
被害補償を要求し始めたという事実にわれわれはまた注目しようと思う。
米軍をはじめとする連合軍が日本に進駐する前と後はもちろん、
今でも日本政府と戦争企業はこれらの被害者の血と汗に対する謝罪や賠償どころか
名目的な賃金と強制貯蓄など払うべき金も払わず、
資料を消却して隠蔽することに汲々とした。
彼らは被害者の血と汗で侵略戦争を続け、
戦争が終わった後には彼らに払うべき金を戦後復興の元肥にした。
さらに最近、日本政府は軍艦島などの被害者が働いていた強制労働の現場を
ユネスコの世界文化遺産に登載することに成功し、
被害者が日本の戦争努力に「志願」したという妄言をはばからない状況だ。
われわれはまた1945年から70年以上、今まで続く彼らの正当な要求が、
どのようにして挫折したのかについても問題を提起しようと思う。
このような事態は今回、実体があらわれ始めた強制動員裁判に対する
青瓦台と外交部および司法府の不法な介入が象徴的に物語っている。
2012年と今日、大法院は個人の請求権だけでなく、
大韓民国の外交的保護権も消滅したわけではないと確認した。
これで今でも韓国政府は数百万の強制動員被害者のために外交的保護に動かなければならないということが明らかになった。
2011年8月30日、日本軍「慰安婦」被害者と原爆被害者が提起した憲法訴願事件で
憲法裁判所は政府が被害者を保護するために、
一定の外交行為を取る憲法上の義務を負うとした。
韓国政府が今も被害者のための外交的保護に動かなければ、
彼らの憲法上の権利を侵害する結果になるのだ。
われわれはこれまで国益と経済発展を名分として
被害者の権利を無視し、踏みにじりながら請求権協定を締結して、
被害者のすべての権利が消滅したという日本政府の論理を受け入れた過去の過ちが
司法壟断と裁判取り引き事件によって繰り返されているという事実に驚き、
今回の判決を始め、日帝の不法な支配と強制動員の被害者も
この国の本当の主権者だという事実を確認し、
彼らに対する正義が全て実現される道が開かれるように以下の要求をしようと思う。
勤労挺身隊ハルモニと共にする市民の会・
南北歴史文化交流協会・
大韓仏教曹渓宗民族共同体推進本部・
民族問題研究所・
民主社会のための弁護士の会過去事清算委員会・
靖国反対共同行動韓国委員会・
我が民族ひとつになる運動本部・
全国民主労働組合総連盟・
朝鮮学校と共にする人々モンダンヨンピル・
平沢原爆被害者2世会・
平和踏み石・
フォーラム真実と正義・
太平洋戦争被害者補償推進協議会・
陜川平和の家・
興士団・
1923韓日在日市民連帯・
KIN地球村同胞連帯