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セウォル号惨事2年、われわれは今安全なのか?

[連続寄稿](2)セウォル号惨事2周期を迎えて

チェ・ミョンソン(民主労総労働安全保健局長) 2016.04.12 11:32

朴槿恵政権は〈安全な大韓民国〉を主要公約の一つとして執権した政府だ。 しかしセウォル号惨事以後、それは完全な詐欺だったことがあらわれ、 2015年のMERS事態で再度確認された。 真相究明も行われない惨事2周年に安全社会なのかどうかの診断が真に空しい。

国民の74% 「韓国社会は安全ではない」…労災は調査項目もなし

国民安全処が調査発表した〈国民安全体感度調査〉で、 国民の26.4%だけが安全だと考えていた(2015年下半期6回調査平均)。 また、政府の安全政策が安全確保に役に立ったという応答は27.5%にすぎず、 大事故の原因は政府と企業の責任が大きいと答えた国民は63%に達した。 また、最優先課題としては交通事故、感染性疾患、労災をあげた。

しかし国民安全処は、感染性疾患と労災が調査項目にもなかったため、あわてて2016年から反映するといっている。 〈国民安全体感度調査〉の名で行なわれた調査結果は単純な体感度ではない。 セウォル号惨事2年、何も変わらない韓国社会の生命安全の現実から始まったのだ。

惨事2年、第2第3のセウォル号は相変らず進行形

セウォル号と似た格好MERS事態
2015年、全国民を不安と恐怖に震わせたMERS事態で38人が死亡し、186人が感染、16752人が隔離された。 それこそMERS事態はセウォル号惨事の反復だった。 リスト公開を拒否し、じっとしてろが繰り返され、無対策、無能力をまた証明した政府、 金儲けに汲々として間接雇用と不十分な感染管理で事態を大きくしつつも、 政府の疫学調査も拒否したサムスン病院など、政府と企業は全く変わっていなかった。

また感染対策だとしてラクダ肉に言及し、そしてセウォル号惨事と同じように 非正規職雇用と公共医療体系、病気休暇制度など、2009年の新種インフルエンザの当時に提起された根本対策が放置されていたことがMERS事態の原因だった。 しかし相変らず根本対策の樹立はなく、責任者処罰は行われず、国民は不安だ。

▲確診類型および死亡者現況。2015保健医療労組MERS対応白書

セウォル号惨事今後も連続的な重大事故発生
セウォル号惨事の後も、労働者・市民の重大事故は発生し続けており、化学事故は増加した。 大部分の事故が規制緩和と外注化が原因で、企業の安全規定違反と政府監督不実が原因だった。

繰り返される労災死亡、水銀中毒、メタノール中毒など後進国中毒事故まで

韓国はこの14年間で平均毎年2422人の労働者が労災で死亡する国家で、 OECDの中で労災死亡1位の国家だ。 このような現実は、セウォル号惨事の後にも変わらず、 むしろ水銀中毒、メタノール中毒事故のような後進国型事故が起きた。

2015年には蛍光灯を生産する光州ナミョン電球の設備解体撤去作業で20人の労働者と市民をはじめ約80人の被害者が水銀中毒になった。 水銀中毒は教科書にも「水俣病」として載っているほど有名なもので、 1956年、日本では14人が死亡し、公式な集計だけでも2265人の患者が確認されており、動物と魚は全滅しった。

国際社会は「2020年から水銀製品の製造と輸出入を禁止して水銀を管理する」という水俣協約を作り、 韓国も2014年に協約に署名した。 しかし2015年、ナミョン電球は一度も水銀の取り扱いを報告もせず、 水銀を埋めたてて、水銀が付着した設備は製鉄所に流れた。

4段階にわたる下請けで、労働者たちは何の情報もなく働いて、病院を転々としてから後になって水銀中毒と判明した。 その時まで事業主を規制する法はなく、数カ月経った今も事業主は処罰も受けず、 約束した被害補償は行われておらず、法制度の改善のたよりもまったくない。

2016年2月と3月には20代の青年労働者5人がメタノール中毒事故で失明の危機と精神障害が発生した。 サムスンとLGなど大企業の3次下請企業で携帯電話部品作業をした派遣労働者だった。

仁川と富川で、事業主の不法派遣雇用で働いていた労働者たちは、 自分が使ったていたものがメタノールであることを全く知らず、 現場には保護装備も排気や喚起装置もなかった。 メタノールはあまりにもよく知られている致命的な危険物質だったが、 大企業の多段階下請の事業主は、単価が3分の1程度だという理由でエタノールではなく代替物質のメタノールを使った。

さらにあきれることは、1次中毒事故が起きた後に労働部が監督をした事業場で、また中毒事故が発生したことだ。 事業主はエタノールに変えたと言って監督を避け、またメタノールを使ったのだ。 前途洋々たる20代の労働者たちは、派遣業者に手数料を取られ、四大保険に加入もできない状態で不法派遣として働いて倒れた。

この事故も病院を転々としている中で偶然に発見され、世の中に知らされた。 それまでどれだけ多くの労働者が被害を受けたのかは知ることもできない。 しかし朴槿恵(パク・クネ)大統領は、雇用を拡大すると言いながら派遣労働を拡大する立法を強行している。 いわゆる「労働市場構造改革5大立法」だ。

事故が発生した後も、朴槿恵大統領は安山始華工団で「血を吐く気持ちで派遣拡大立法を進めろ」と力説し、 労働部長官は涙を拭いながら国会での立法を訴えている。 さらに、事故の後に政府が出した対策は、元下請の共生協力と不法派遣業者に対する点検と即時処罰を是正措置へと緩和することだった。

責任者を処罰しない韓国社会

セウォル号惨事の処罰はどうか? 清海鎮海運は、企業だから犯罪能力を認められずに処罰されず、代表理事だけが懲役7年を受け、船長だけが殺人罪で起訴されて無期懲役を宣告された。 また検察は救助失敗の責任を当日の現場責任者の123艇長だけに負わせた。 状況を知っていたのに退船命令をしなかった木浦海上警察、西海庁長、警庁長は起訴もされなかった。

セウォル号惨事の直後、くりかえされる労災死亡と災害事故に対する企業と政府の責任者に対する処罰強化の声が高まった。 朴槿恵大統領の責任者処罰は、 兪炳彦(ユ・ビョンオン)を捕まえるときに別の疑惑を残しただけで、 セヌリ党と朝鮮・中央・東亜の保守言論までが英国、オーストラリア、カナダで制定された企業殺人法を韓国に導入しろと騒いだ。 しかし惨事2年が雇用としているが何も変わっていない。

この2年間に発生した韓貨ケミカル爆発事故などの労災死亡と、 高揚ターミナル火災惨事、将軍療養病院惨事、慶州マウナ・リゾート崩壊事故、 どの事故も元請や責任者は処罰されず、政府の責任者も処罰されず、下級管理者や労働者だけが処罰された。

2015年、江南駅のスクリーンドア整備下請労働者の死亡事故は、外注化が主な原因だったが、 個人の過失として処理された。 2016年には清涼里駅の鉄道事故について、鉄道公社の調査で無嫌疑と明らかになった機関士が、鉄道警察の強圧的な再捜査で自殺する状況まで発生した。 2015年に38人の死亡をはじめ、国民すべてを不安と恐怖に震わせたMERS事態では、 病院も、疾病管理本部も何の処罰がされなかったばかりか、 責任者である文亨杓(ムン・ヒョンピョ)前福祉部長官は国民年金管理公団理事長になった。

廃棄の運命に処した生命安全立法、
屋上屋の国民安全処と、強まった規制緩和の逆転

セウォル号遺族をはじめ、労災死亡と災難惨事の遺族の終始一貫した希望の一つが、再発防止対策だ。 しかしセウォル号惨事の後に先を争って発議された各種の生命安全立法は、今や廃棄の運命に瀕している。

労災死亡と市民災害の処罰を強化するための法案は審議もされなかった。 生命安全の無分別な外注化を防ぎ、元請の責任を強化する立法、 鉄道地下鉄事故の主要原因である老朽車両と1人乗務制を禁じる法、 セウォル号沈没の原因の一つである過剰積載を道路上で禁じる法、 化学事故についての住民の知る権利と参加を保障する法。 規制緩和から安全分野を除く法など、根本的な対策のための法は、審議もされなかった。

またセウォル号惨事以後、災害事故のコントロールタワーを作るとして設立した国民安全処は、屋上屋でしかなく、 国家安全代診団といった展示行政を乱発するばかりだ。 MERS事態の時も何の役割も果たせなかった国民安全処が唯一した仕事は、 事態勃発からしばらく後に送った「携帯メッセージ」だけだった。

むしろ安全社会を押し倒した規制緩和の逆転が加速している。 セウォル号惨事以後、安全分野は規制緩和において慎重に検討するという嘘もしばらく。 セヌリ党は議員全員の発議で規制緩和を法でしっかり釘をさし、 規制改革委員会を絶対的な機関として君臨される法案を発議した。 規制はガンだと力説した朴槿恵(パク・クネ)大統領は今 「すべての規制を水につけて、取り出せるものだけを取り出す」とし、 規制緩和強攻ドライブをかけている。

安全を含むすべての行政は、規制費用総量制で必要な規制をなくしており、 規制日没制を適用している規制をなくす作業を本格化している。 化学物質に対する安全管理ができない企業に対する課徴金強化は、 国会で通過した法を環境部が施行令で無力化させた。 財閥大企業の利益保障のために「安全」をすべて規制だと言ってなくし、 無力化することに没頭しているのだ。

死なずに働く仕事をする権利、安全な社会のための根本対策の樹立が必要

労災死亡と災難惨事は繰り返されてきた。 しかしセウォル号惨事で、われわれは始めて韓国社会の生命安全に対する深みある反省をした。 生命の安全は誰にとっても切実で重要な価値だが、危険を作る者と殺される者は厳然に分れている。

資本は絶えず労働者市民の生命を威嚇して、政府は資本の利益を極大化する制度を裏付けてやり、安全文化を口にして責任を希薄化している。 安全社会は規制緩和の中断、責任者処罰、危険の外注化と非正規職雇用根絶、労働者市民の参加保障がなければ絶望的だ。 セウォル号惨事2周期をむかえ、真相究明とともに安全社会のための労働者市民の闘争が切実な理由だ。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2016-04-16 02:56:50 / Last modified on 2016-04-16 02:56:51 Copyright: Default

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