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韓国:密陽人権侵害監視活動 中間報告会
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「密陽の住民は基本権を奪われた政治的難民」

人権団体連席会議などが密陽人権侵害監視活動の中間報告会を開く

チョン・ヒョンジン記者 2013.10.29 15:26

10月1日から密陽送電塔建設現場で人権侵害監視活動を行ってきた人権団体が密陽の住民に対する人権侵害状況報告で中間発表会を開いた。

人権団体連席会議、国際アムネスティ韓国支部、人道主義実践医師協議会など は、10月28日午後、ソウル市通仁洞の参与連帯ヌティナム・ホールで人権侵害 監視団活動発表会を開き、活動の経過と現況を発表した。彼らは人権と健康権 を中心とする密陽住民の基本権侵害状況を事例別にあげ、現在密陽に投入され た公権力がどのような違法行為をしたか法律的根拠をあげて説明した。

▲28日、人権団体連席会議国際アムネスティ韓国支部、人道主義実践医師協議会、民主弁護士会などは密陽の人権侵害状況に対する中間報告会を開いた。[出処:いまここチョン・ヒョンジン記者]

密陽の公権力、「違法であり過度だ」

人権団体連席会議などは密陽に派遣された警官の住民に対する人権侵害が「住 民たちの基本権を剥奪すると同時に警察官職務執行法などを破った違法なこと」 と指摘した。

彼らは現場で目撃した人権侵害の様相は広範囲で、深刻な通行禁止、不法採証、 身体的かつ心理的な暴力の行使、公務執行時の不告知、意思表現と集会の自由 の侵害など、多様で幅広い形態で行われていると明らかにした。

「10月3日、私服警官が個人のスマートフォンで住民と市民を採証した。別途に 採証担当の警察がいて、すでに一方的な採証が行われている状況だった。監視団 の問題提起でしばらく中断したが繰り返され、警察に『不法な公務執行』と抗議 すると、彼は『私は法律を知らない』と話した。」 (人権侵害監視団証言)

「10月15日、パドゥ里村現場の前の道路に住民が座っていた。車両通行に全く 支障がなかったのに、警察は道の両側から住民たちを押し出し、住民に物理力 を使った。移動を強要する根拠についても答えず、一人ずつ手足を持って、3〜 5メートルほど移動、強制拘留、および路上監禁した。そしてこの過程で女性の 住民一人の上着がほとんど脱げる状況が発生した。」 (人権侵害監視団証言)

「その上、その125番工事が始まった日はトイレに行くのに付いてきます。山で 用をするということなんです。それまでは私たちが用を足しに行くのを止めま せんでした。その日はそれさえ妨害したのです。私たちが用を足すために山に 行くと付いてきて、『用を足す』と言ってもだめだといいます。それで、他の 現場に行くのかと思って、『今とても急ぐ』と言ったら『ではここで用を足せ』 というので、ここでしたのです。あいつら(警察)が盾を持っているところで…」 (住民ソン○○氏インタビュー)

一番深刻な人権侵害は「住民に対する非人道的かつ侮辱的な処遇」
人権団体が警察の即刻撤収と人権侵害責任者の処罰を要求

人権団体連席会議のランヒ活動家は「警察の投入は明らかに韓国電力の送電塔 建設工事を保障するためで、したがって住民の保護は優先順位ではない」とし、 住民たちは警察に「私たちを人として扱ってくれ、公権力らしく公務を遂行し てくれと訴えている実情」と話した。

ランヒ活動家は現在、身体的、心理的に最も打撃を受けるのは、「住民たちに 対する非人道的で侮辱的な処遇」とし、住民のすべての行動について不法通知、 司法処理の警告などを乱発している点、訪問を禁じることにより孤立感を高め、 侮辱的な言葉と高圧的な態度を取り続けている点だと指摘した。続いて「食糧 と医薬品、テントなどの生活必需品に対する統制などで、一番基本的な欲求も 制限される非人道的な状況」と明らかにした。

また「身体的自由、居住・移転の自由、集会の権利などの自由の保障が基本の 憲法的な価値と秩序が転倒した密陽の現在状況を『事実上の警察戒厳』」とし、 「警察は、社会的に問題になり、反対の世論が高まっている送電塔工事を強行 するために、住民に対する非人道的な措置を敢行し、基本的人権を深刻に侵害 している」と批判した。

人権団体連席会議などは、こうした状況について「警察の即刻撤収、住民への 暴力と侮辱的な言動の中断、市民の集会・デモの自由の保障、一方的司法処理 の中断と拘束者釈放、人権侵害の責任者処罰、被害住民への回復的措置」等を 要求した。

▲10月7日、天主教正義具現全国司祭団が、密陽市金谷ヘリポートを訪問してミサを奉献した時も採証された。私服警察の採証に司祭が抗議したが、結局、当事者の所属と姓名は明らかにしなかった。当時、私服警察は「写真を撮るのは私の勝手」と対応した。[出処:いまここチョン・ヒョンジン記者]

▲密陽工事現場を訪問した司祭、修道士と信者を遮った。彼らは単に住民と会って共に祈ると要求したが、受け入れられなかった。[出処:いまここチョン・ヒョンジン記者]

高齢の住民に持病悪化、肺炎などの病気の危険
公権力はどんな状況でも国民の健康権を積極的に保障すべき

また、人道主義実践医師協議会のイ・サンユン編集局長は、密陽住民の健康権 侵害の状況について深刻な憂慮を表明した。

イ・サンユン局長は、現在の密陽住民の深刻な精神的ストレス、睡眠と栄養不足 による体力低下などは、住民が高齢の老人であることを考慮すると、肺炎や インフルエンザ、持病の悪化などの深刻な状況を招くと話した。また、身体的 な健康の悪化ばかりでなく、精神健康悪化の危険と負傷の可能性についても 憂慮した。

イ・サンユン局長は住民がこんな状態なのに、住民の初期治療する医療スタッフ の訪問と薬品搬入を禁じたのは深刻な健康権侵害だとし、「公権力、政府は どんな状況でも国民の健康権を保障、増進する義務があり、国民の健康悪化を 積極的に防がなければならない。公権力の行使もその方向で行使すべきだ」と 強調した。また現在、住民の状態は「彼らの選択」だという立場についても、 「住民が抵抗に立ち上がる脈絡を理解すべきだが、もし彼らの選択だとしても、 政府は彼らの健康権を守らなければならない」と指摘した。

密陽での警察は憲法と警察職務執行法をすべて破る
住居権、健康権、環境権、平等権など基本権の総体的剥奪状況

続いてオ・ドンソク教授(亜洲大法学専門大学院)とイ・ジョンイル弁護士(民主 弁護士会環境委員会)は、密陽の人権侵害状況を法的な根拠から見回した。

「憲法はすべての国民が人間としての尊厳と価値を持っていることを明言し、 『国家は個人が持つ不可侵の基本的人権を確認して、これを保障する義務』を 負うよう命じている。ひとりの主張にも国家は耳を傾けなければならない。そ れなのに、命がけで抗弁する多くの反対を無視する国家はもはや国家ではない」 (オ・ドンソク教授)

先にオ・ドンソク教授は、憲法的な観点からの密陽住民の基本権剥奪の意味を 説明した。彼は密陽送電塔工事の強行で、密陽の住民は人間らしい生活空間で 暮らす権利である住居権、知る権利、健康権、環境権、平等権、住民自治民主 主義、憲法に明記されている「適法手続きの原則」等が剥奪または壊されたと 話した。また、事業進行の過程の問題と、不法性、暴力的な制限は2次暴力を 誘発しているとし、集会およびデモの自由と人格権、身体の自由侵害そして 公権力を行使する過程の不法性などの結果を生んだと説明した。

オ・ドンソク教授は「密陽事件は、これまで韓国社会で国家暴力の作動方式を 総体的に示す事件」とし「国家は密陽の住民の国民としての基本的人権を侵害 して、国民の資格を奪うことで『政治的難民』にした。また、違憲的事件が積 もりに積もって、政府は市民不服従を越え、抵抗権の行使に直面している」と 声を高めた。

オ教授は、政府が国民に対する暴力を中断し、送電塔事業そのものの再検討と 代案、真相調査等を通じ、人権と民主主義の観点から革新的な方案を用意しな ければならないと述べ、「すべての国策事業に対する地域住民の拒否権をはじ め、住民自治民主主義を保障する方案を用意し、これ以上、地方がソウルの 『植民地』にならないようにするための憲法的義務を積極的に履行しろ」と 要求した。

▲人権侵害監視団が活動している現場でも採証し、住民を現場から分離する警察[出処:いまここチョン・ヒョンジン記者]

[出処:いまここチョン・ヒョンジン記者]

イ・ジョンイル弁護士、「すべての基本権侵害のうち一番深刻なのは村共同体の破壊」
歪んだマスコミ報道の問題、対立と暴力状況の報道が70%を獲得

最後にイ・ジョンイル弁護士は、警察が住民に対して任意同行の拒否権とミラ ンダ原則を告知しなかった点、採証時に従うべき令状主義の原則に従わなかっ た点、一般交通妨害罪などを乱用して住民の表現、集会の自由を抑圧した点、 また「問題を起こすだろう」という予測による通行制限などを指摘し、「密陽 の住民に対して、警察力は中立性と公正性、消極的防御の原則をすべて破って いる」と批判した。

イ・ジョンイル弁護士は、こうした警察の公務執行は、刑事訴訟法200条5項、 警察職務執行法3条と4条、戦闘警察巡査など管理規則149条に反すると説明し、 「一方の報道担当者になってはならない警察が、密陽では『韓電』側に立って いる」と指摘した。

たとえば通行制限に関する警察官職務執行法5条と6条では、通行制限が適切な 場合は「人命または身体に危害を及ぼしたり財産に重大な損害をおよぼす恐れ がある事態がある時、対スパイ作戦遂行または騒乱の鎮圧のために必要と認め られる相当な理由がある時、犯罪行為が目前で行われようとしていると認めら れる時」だ。

またイ・ジョンイル弁護士は「多様な基本権侵害状況のうち、一番の核心は 『村共同体の破壊』」とし、「こうした問題を法律的に解決する方法が微弱な のは事実だ。これは、法的対応の前に社会的公論化で表面化し、根本的な問題 に接近しなければならない」と話した。彼は「そのためには、今では政府が答 えなければならない。この事業の開始段階から間違っていたことを認める時、 社会的合意と解答が得られる」と話した。

リュ・シナン弁護士(民主弁護士会言論委員会)は密陽送電塔建設地域の広範囲 な人権侵害に対する言論の報道態度を指摘した。彼は言論報道の一般的対象は 「事件の現況、事件の背景と原因、関係者の意見、正しい解決方法」などでな ければならないと説明し、「しかし現在のマスコミの報道は、対立・対峙状況、 暴力状況を報道する内容が全体の70%、原因と解決方案の内容は15%に過ぎない」 と扇情的な報道姿勢を批判した。

リュ・シナン弁護士は「現在のマスコミの報道は、事件の原因と背景に関する 深層報道が絶対的に不足しているが、地域の利益主義と『外部勢力』、『従北』 議論を重ねあわせて事件を歪めている」とし「密陽送電塔建設の重要な事実の 住民の健康権侵害、送電塔建設の不必要性と代案、電力生産システムの転換な どについて、事実関係による報道をすべきだ」と頼んだ。(記事提携=カトリック ニュースいまここ)

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2013-10-30 04:13:13 / Last modified on 2013-12-17 09:56:38 Copyright: Default

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