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ウォール街占拠運動、より良い社会に向かう機会

[寄稿]金融資本主義の危機と不安定労働者(Precariat)

クム・ミン(基本所得ネットワーク) 2011.10.14 14:39

金融資本主義に反対する大衆行動『ウォールストリートを占拠しろ』(Occupy Wall Street)が9月17日に始まり、10月13日の今日まで27日間続いている。大衆 行動は9月30日、『バンク・オブ・アメリカ』(BoA)ビルの前に2000人が集まっ た後、米国全域に拡散し、10月15日の世界行動の日(Occupy Together、 United for Globalchange)を基点として全世界に拡散するだろう。

▲占拠都市現況[出処:http://occupytogether.com]

このような拡散は、逆説的にも金融資本主義グローバリゼーションの基盤になっ たインターネットとSNSの力だった。ウォールストリート占拠の公式サイトの occupywallstreet.orgと、他の都市、そして全世界にこのような運動を拡散す るサイトであるoccupytogether.orgには、生き生きした現場を見せるツイッター と動画がリアルタイムでアップグレードされる。9月30日、2000人が『バンク・ オブ・アメリカ』(BoA)のビルを取り囲む姿をヘリコプターから写したフォックス ニュースの動画はユーチューブ (www.youtube.com/watch?v=GBBCE95v8E&feature=youtu.be&a)を通じ、 全世界に広がった。

この動画を見た人なら、今回の事件が少なくとも2001年の9.11テロがその後、 10年間に与えた影響力ほどに、今後10年間を決める事件になると予感させるだ ろう。21世紀最初の十年の始まりが9.11テロとアルカイダだとすれば、その終 わりにはアラブ民主革命とアルジャジーラがあった。次の十年は、『ウォール ストリートを占拠しろ』と共に始まる。二つ目の十年の終わりにはどんな事件 があるのだろうか?

ウォールストリートのデモ隊は「1%ではなく99%を」、「金持ちに税金を!」、 「ドルではなく人間を」と叫んだ。10月15日の世界行動のための宣言文の最初 の一言は次のとおりだ。

「米国からアジアまで、アフリカからヨーロッパまで、全世界の市民は自分たちの 権利を主張して、真の民主主義を要求するために立ち上がる」。

『ウォールストリートを占拠しろ』は、正確に世界金融資本主義の心臓部であ るウォールストリート、ドルレジームを照準し、彼らの要求を『真の民主主義』 (true democracy)という言葉で要約した。左派マガジン(www.adbusters.org)を 中心とする行動的な少数のピケッティングから始まったが、短い時間で特有の 開放性と自発的な参加により拡散したこの運動は、今、問題がどこにあり、 その解決法は何なのかについて、はっきりと方向性を付与した。さらに重要な 点は、こうした方向性が孤立した理論集団や政治集団の企画でなく、SNSを基盤 とするコミュニケーションにより、集団知性の水準に到達したという点だ。

新金融資本主義

『ウォールストリートを占拠しろ』と共に金融資本主義への攻勢は集団知性の 形態を取るようになった。では、こうした反転はどのような状態への反応か? この質問は、世界資本主義危機の本質と様相に対する理解につながる。英米を 中心として見れば、1974年頃から始まり、90年代からはヨーロッパでも貫徹さ れた現在の資本主義体制を、新自由主義と呼ぶ。韓国でも1997年の外国為替危機 の後、金融自由化、FTA、投機資本、整理解雇、非正規職などでお馴染みの概念だ。

新自由主義は、一方では金融資本主義であり、他方では不安定労働に立脚する 労働社会の再組織化だ。ここで最初の特徴、つまり『新自由主義は金融資本 主義だ』と言う時、金融資本主義の意味をはっきりさせる必要がある。それは 明らかに70年代以前の銀行資本主義ではない。銀行資本主義は生産企業の長期的 な事業の展望を中心として、貸し出しの形で企業を支配したが、新自由主義の 時代の金融資本主義は、短期的な株式価値を中心として動く株主資本主義であり、 銀行は企業を商品として売買する投資銀行に変貌する。M&A市場はこの10年間 で7倍成長し、2007年の取り引き規模もすでに3兆ドルだ。新しい形態の金融資本主義 は、もはや銀行資本主義ではなく、金になることなら何ごともためらわない 金融企業が主な行為者である金融市場資本主義といえる。

このような新金融資本主義とともに、世界は株式市場と派生商品市場が経済の 全般を思うままにする金融化の時代に突入し、金融資本主導のグローバル化が なされた。2006年現在、グローバル金融市場の総規模は140兆ドルで、派生商品 の規模は600兆ドルに達する。韓国1兆ドル、ドイツ3.8兆ドル、日本5.5兆ドル、 中国5.9兆ドル、米国15兆ドルと、各国の経済規模(GDP)に較べ、金融資本の 総量がいかに肥大化したのかを実感することができる。

生産資本から金融資本が脱け出し『尻尾(金融)が胴(実物経済)を揺さぶる』と いう愚痴は、もう事態にそぐわない話になった。尻尾と胴が変わったのだ。 さらに総量だけが肥大化したのではなく、インターネットの発展と共に移動の 速度も高まり、秒刻みの売買が盛んに行われる。そして米国全体の通貨量の たった3%だけが実物貨幣であり、残りの97%はコンピュータの画面上だけに存在 する時代、全世界の金融取引の98%は実物経済とは無関係な金融取引で、たった 2%だけが実物取引という時代、まさに新金融資本主義の時代だ。

[出処:http://www.marxist.com/]

不安定労働者(Precariat)

生産資本の利益は雇用を媒介とする。だが金融資本の蓄積は雇用を媒介とする 必要なく、金融的な方式による。ところが金融的方式の蓄積という生産資本が 作った利益の金融的方式の再分配は、つまり生産された利益の収奪に過ぎない。 ところが生産資本もこうした蓄積方式に反応しなくてはいけない。金融収奪の 拡大を継続的に可能にするためには利益が増えなければならず、結局、搾取も 強化されなければならない。生産資本は雇用労働の形態を不安定労働に再編し、 搾取を強化する。技術革新で社会的必要労働時間の総量が減る時代に、大量失業 と不安定労働は社会的労働の一般的な形態になる。

不安定労働の拡散とともに、50年代と60年代の資本主義黄金期秩序の一軸を担っ た産別労組の影響力は小さくなり、利害当事者資本主義モデルを崩壊させた。 社会全体が新自由主義的に再編される。新自由主義、その本質は一方で金融的 収奪の拡大であり、他方では不安定労働の拡散を通じた搾取の強化だった。 不安定労働者(Precariat)、それは新自由主義が生産した新しい社会階級であり、 過去の組織労働者層の闘争方式とは違い、工場ではなく街頭と広場を主な舞台 とする。

今回起きた『ウォールストリートを占拠しろ』の場合も、金融資本主義という 明らかな打撃点を設定することで、単一の争点に限られていた以前の闘争の様相 と較べ、一層進化した集団知性を表現するという点を除けば、小規模なグループ による争点の提示、大衆の自発的な参加と開放的な運動構造、インターネットを 通じた流布、街頭と広場、象徴的な建物の占拠など、この20年間に不安定労働者 階層が主導してきた抵抗の基本的な様式を再現している。

新自由主義の危機、そして破局への道

不安定労働による搾取強化に依存し、金融的方式の蓄積を持続させることは、 当初から不可能なことだった。金融資本は利益の収奪を、これ以外にさまざま な種類の収奪方式を発展させる。社会国家の解体が進められ、福祉体系と鉄道、 郵便、電気、ガス、水などの公共財の広範囲な私営化が進められた。このよう に、国家機構を媒介とする収奪方式が普遍化し、いわゆる『民営化』は新自由 主義時代の基本的な価値になった。他方で、情報革命と共に賃金労働に抱き込 めない広い活動が情報通信資本の収奪の対象になった。

それでも利潤率低下の問題が解決せず、家計ローンとクレジットカード営業な どの労働者大衆に対する直接的な収奪が登場する。銀行資本主義における主な 債務者は企業だったが、今日の金融市場資本主義での主な債務者は、企業では なく家計だ。企業は証券市場を通じて資本を調達し、金融会社は債権ではなく 株式を通じて企業を支配する。2008年のサブプライム・ローンの崩壊事態は、 こうした方式の家計収奪が限界に達した点で発生した破局だ。

住宅バブルの崩壊と金利引き上げにより発生した不健全化は住宅担保付債権の 証券化を通じて金融市場全体に広がり、世界的な金融危機につながった。2008 年の破局以後、米国は1次および2次の量的緩和措置により、2兆3千億ドルを注 ぎ込んだが、危機は鎮まらなかった。7月にできた4400億ユーロの財政安定基金 でも、ユーロゾーン危機は解消しなかった。ギリシャは10月に満期が到来する 80億ユーロの国家負債にも耐える能力がない。全世界の主要銀行の利潤率は 1930年代の大恐慌水準に下落した。

2008年以後、新自由主義は金融的収奪の限界に達し、財政的な収奪を通じて、 つまり租税や債権による救済金融や量的緩和などでこの危機を切り抜けようと したが、これも限界に到達した。金融危機への対応策は財政的収奪だったが、 これは財政危機を生んだにすぎない。

出口はどこなのか

財政による金融救済政策は限界に直面し、財政危機だけが深まった。財政危機 をなくすために緊縮財政を実施しなければならないという主張は、2008年以前 に戻ろうという主張でしかない。これは病人に対して、発病前の状態に戻れば 良いと処方するようなものだ。ヨーロッパ国家では、社会福祉支出を減らせと いう主張は巨大な抵抗に直面する。何よりも、安定した雇用が普遍的な労働の 形態だった新自由主義の初期ではないからだ。

新自由主義の貫徹にも、今まで存続している残余的な福祉は不安定労働者大衆 にとって、生存の問題と直結するためだ。その上、金融資本の危機をなくすた めに絶えず公的資金が投入されるとすれば、このような財政的収奪機構に変貌 した国家はさらに拡大した大衆抵抗に直面する。基軸通貨国の米国は量的緩和 に依存できるかもしれないが、為替レート戦争は避けられず、ヨーロッパと 中国などの主要国家が協力する保障もない。

破局からの出口は正反対の方向にある。『利益は私的に取り、責任は社会的に 担う』という財政的な収奪構造を終息させなければならない。つまり救済金融 は、金融社会化措置と連動させるべきであり、域外の派生商品市場は全面的に 禁止されるべきで、金融市場に対する規制と統制を強化しなければならない。 また、金融課税を強化し、財政を健全化し、拡大した財政は、不良金融資本の 救済ではなく社会福祉に投入しなければならない。

ここで重要な点は、こうした福祉財政拡大政策が過去のケインズ主義的方式で は実現しないという点だ。財政政策による成長と雇用拡大では、現在の不安定 労働社会から抜け出せないためだ。雇用労働者の労働時間を画期的に減らし、 それで安定した雇用がまんべんなく分配されるようにし、それでも労働者の 実質所得を減少させないようにする全般的な社会的な履行が必要だ。

社会構成員すべてに医療、住居、教育、保育、老後を完全に保障して、すべて に普遍的基本所得を支給する時だけに、社会的な平均労働時間を画期的に減ら す前提条件がみたされるだろう。『さらに短い時間働き、誰にもまんべんなく 安定した雇用が回り、誰もが豊かに暮らせる社会』への移行のためには危機を 深めてきた資本が今度は費用を支払わなければならない。

現在の危機は破局への入口かもしれないが、より良い社会に向かう機会でもあ る。そのために必要なことは、資本に対してより良い社会への移行の費用負担 を強制する社会的な力であり、『ウォールストリートを占拠しろ』というような 力が世界的に組織される出発点を意味する。

原文(チャムセサン)

翻訳/文責:安田(ゆ)
著作物の利用は、原著作物の規定により情報共有ライセンスバージョン2:営利利用不可仮訳 )に従います。


Created byStaff. Created on 2011-10-14 22:40:02 / Last modified on 2011-10-15 02:19:32 Copyright: Default

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